第162話 王都への出発

当然、モージャンに潜伏しているであろうムスターデ帝国のスパイに見つからないように、こっそりと領主館から連れ出した王女達と一緒に、王都に向けて出発をする。

通常の王族の旅であれば、かならず街の旅館に泊まるような行程を組むものであるが、単なる商隊に偽装するのにそれでは怪しまれるため、通常通りの行程、場合によっては野宿をする前提での2週間の予定である。

「ラーフェン王国からニースコンに逃亡していた時のことを考えると、飲食も不安が無くこれだけの護衛がいらっしゃるのであれば文句などございません。どうぞよろしくお願いいたします」

と、以前は無理に尊大にふるまっていたことも止めたモーネ王女が元の性格で発言する。

「兄上様が御無事でしたので無理をする必要が無いとわかりましたので」

食事の際に漏らした言葉である。

領主館に滞在中に交流があったからか、ユゲットとジャクロエが王女、王子と上手くやり取りしていることも含めて、余計な気遣いが減ったことでホッとしているジェロたちである。


『この中で一番上の銀級のジェロがリーダーなのよね?』

『メオンさんが来られなくなったから仕方ない』

『イド、レナルマンだけでなくオーレッドにまで任せてしまって、リーダーの仕事している?』

『良いんだよ、ベテランにお願いすれば。俺はお飾りでも、それで問題が出なければ』

『フロラリーに頑張れと言われたのに』

『ノブレスオブリージュか。まぁ追々、なるようにしていくよ』

『(ま、だんだん人とも話せるようになってきたしね……)』



『ほら、来たわよ!』

「皆、警戒を!」

ジェロに言われすぐに馬車や馬を止めて街道の片方による商隊。

「何?帝国が来たの?」

馬車から御者台に顔を出してくるジャクロエ。

『後ろから騎馬隊よ』

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