第85話 魔法同時発動

遠征から帰った翌日は休みにされていたので、神殿にお土産を持って行く。

「ジェロ、お土産ありがとう。無事で本当に良かったわ。それにね、その鎧と刀、見違えたわよ」

「ありがとう。見た目だけだよ」

「色々を経験して知らないうちに少し自信がついて内面も成長している自覚がないのかな」

「そうなのかな」


しばらく留守にしていたので神殿近くのドブ川の魔鼠が復活しているのを見かけたジェロは自身の成長の確認をしにいく。

『やっぱり≪火球≫1発で倒せるけれど、1発ずつうつのが面倒だな』

『同時発動やってみる?こんな感じ』

ヴァルが≪火球≫を3つ宙に浮かべて、それぞれを別の魔鼠にぶつける。

『おぉ、漫画のイメージだ。これっていくつもできるの?』

『慣れればいくつも増やしていけるわよ。ただ別の相手に投げるのはさらに難しいわよ。左右の腕でそれぞれ丸を大きく描くのは何となくできるわよね。でも片方を三角、片方を四角にすると難しいでしょ。発動の目標が違うのはそれぞれを目で追いかけることになるし』

『本当だ。うーん』

『まずは投げつける前に複数の火球を浮かべて、同じ目標に投げつけるところからね』


魔鼠は動くので狙いをつける練習には良いし、攻撃に失敗しても反撃が恐ろしくは無いので、良い訓練になる。かなりな範囲の魔鼠を退治したので、またヴァルが吸い取った後の無色透明の小さな魔石を孤児院の子供たちにあげて喜ばれる。

「ジェロ兄、ありがとう!」

「その格好、カッコいいね!」

「それ刀でしょ?珍しい!振ってみてよー」


最近は神殿や孤児院に来る回数も少しずつ増えて来たので、ますます子供たちに懐かれるジェロであった。流石にこの子供たち相手に人見知りは無くそれなりに心の洗濯になってリフレッシュできていることも実感しているので、また時々来ようと無意識に考えている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る