第16話 簡易鑑定魔法2

ジェロが詠唱するのをやめて固まっているのでヴァルが聞いてくる。

『うまくいったの?』

『あぁ、成功したようだ。頭に鑑定結果が自然と浮かんできた』

『習得が早いね』

『前世知識もあってイメージできるからかな。もちろん魔術語をヴァルが教えてくれるからと感謝しているぞ』

『ならば、それだけ魔力を多く捧げてよ。どうせ契約まではしてくれないのでしょ』

『分かったよ。いつものように寝る前の魔法練習で残った魔力は奉納するよ』

『それってありがたいけど、ジェロの魔力増強訓練も兼ねるから素直には……』

『まぁそう言うなよ。前世知識でも魔力は使うほど鍛えられる、特に使い切るとさらに効果が上がるという話があったから』

『本当、ジェロの前世知識は不思議だね。別世界なのになぜか正しいことが多い』

『この世界から俺の前世世界に転移か転生した者が居て知識を広めたのかもな』


ジェロは次の段階として詠唱破棄に早速取り掛かる。初めて覚えた魔法、≪治癒≫で試して経験したことであるが、前世知識でもあったように詠唱は必須では無かった。短縮詠唱や無詠唱(詠唱破棄)にすると効果が低下するか魔力消費が増えるが、同じ魔法を繰り返して習熟すると悪影響は無くなっていく。

歩く、自転車に乗るなど、最初は一つ一つ意識しないと失敗するが、そのうち無意識にできるようになる。魔法も同じようなものと認識している。


ジェロは部屋の中にあるベッド、棚、服などの私物を鑑定し尽くした後は、宿舎の共通部、さらには外に出て次々と鑑定をしていく。すれ違った同僚にも≪簡易鑑定≫をかけてみたが変化はない。そう言えばと自身にも鑑定をしてみるが同じく変化はない。

人の鑑定はそもそも出来ないのか、初級魔法だからかは不明だが、残念である。レベル制やスキル制で無くても何か成長度合いが確認出来たり他人の情報が分かったりすれば良かったのだが。


重要ポイントは研究ノートに記録したので、翌朝ヴィクシムにお礼と合わせて魔導書を返す。すると、その昼にギルドマスターと上司メオンから呼ばれる。

「聞いたぞ、ジェロ。≪簡易鑑定≫を習得したらしいな。ヴィクシムが休みの際には頼むぞ、というかヴィクシムが休みやすくなったな」

あれ?ヴィクシムさん、そういうことですか?まぁ新しい魔法を習得できたから文句も無いのですけど……

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