第3話 悪魔ヴァル
『で、コレットとちゃんと会話する気は無いの?』
ジェロはギルド職員のための宿舎の自室に戻った途端に、ヴァルに責められる。
『だからコレットさんはそういうんじゃ無いから』
『そうは言っても、あんたの夢、知っているんだからね。今世では結婚したい!でしょ』
『あぁー、そうなんだけど、あんな美人は俺なんて相手にしてくれないよ』
『はぁ……』
『そんなことより、仕事中に話しかけてくるなって言っているだろ』
『そうは言っても暇なんだもん。私を見えるのはジェロぐらいだし。もしかするとアンブリスってギルドマスターは分かっているかも、と思うけど』
『ギルドマスターが俺を拾ってくれたのはそれが理由なのかな』
『またそんな自分を卑下してばかり。あんたはなかなか面白いよ。前世ってのも、その知識も。だから早く私と契約しちゃいなよ』
『いや、悪魔との契約なんて絶対良いことが無いって俺の前世知識が言っている』
『ふん、契約するまでつきまとってやるんだから』
『あぁ、はいはい、もう寝るぞ』
ベッドに入って眠りにつくまでジェロはヴァルと出会ったときのことを思い出す。
ジェロはジェロマンというのが本名だが、これは孤児院でつけられた名前である。孤児院の子供達は貧民街で拾われる、処刑された犯罪者の子供が引き取られる、孤児院の前に捨てられる等、いろいろな経緯があるので、わざわざ教えて貰うことは無い。ジェロの孤児院は神殿に併設された施設であり、神官たちに育てられた。
ジェロは10歳になる頃、神殿の掃除を手伝っている際、地下室で悪魔ヴァルと出会ったのである。
そしてそのときに、前世の記憶も蘇って自分が不摂生のため30代で死亡した引っ込み思案のプログラマーであったことを認識したのである。
しかし今世での10歳までの記憶に引っ張られたのか、前世の名前や家族までの記憶は思い出せないなど曖昧なところもある。前世でいくつか読んだ異世界転生物語なども記憶にあるが、自分自身としては転生時に神と会話した記憶もないし、“俺TUEEE”系のチート能力を与えられた訳でもないようである。前世で食事にこだわっていなかったので、よくある異世界食事革命もできそうにないし、意外とこの世界には転生者が多いのか既に革命済とも思える。
なので、下手な成り上がりを目指すより人並みの幸せ、具体的には結婚を目指すとその時に誓ったのであった。
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