少年ビタミン

黄一郎

第1話

 久しぶりにさくら台公園沿いを走る。


学校に行くには、ここを通るか、紺屋通り沿いに混んだ道を突き進むことになる。


 ここを走ると、ふと昔の小さなしあわせを思い出す。幼稚園の頃家族と行った名もなき小さな公園とか、小学校の時に行った遠足とか。


 そんなことを考えながら、池沿いをひたすら走る。水は汚く、薄汚れている。都会にはない、こじんまりしているのに雄大な感じが凄く良い。


 目的もよく分からない建物がゆっくりと並ぶその隙間から、西洋調の何かが見える一瞬の景色が好きだった。


急に見えなくなって、木と木の間からまた見えて、そしてすぐにまた見えなくなる。


曇天の夕焼けから見えるそれは何やら神々しささえ感じる。そんな時、僕は感傷的になって、つい目の端が細くなる。



 道を抜ける。だだっ広いというほどでもない、ただ殺風景な公園、というよりも広場に近い空間を抜けて、まだ走り続ける。

 路地を一本横に入ると、寂れた住宅街がある中にポツンと佇む小さな美容院。おしゃれなそこはカットだけで5,000円もふんだくるらしい。



 そして、いつもの道に出るーーー

 



 僕の中のあの日から2週間が過ぎた。


 相変わらず、空の天井が見えるみたいだ。


 僕は何かにフタをしているのか、閉じ込められたのか。


 その何かを解放すると、僕は壊れてしまう。そんな確信的なものがうずめく。



 だから、シーソーのように、僕はいのちにバランスを取る。



 息を整える。


あの日から、僕は時間を止めた。


1人になるのが怖かった。


自分を見つけてしまうから。


心がすっきりしてしまうと、空っぽになって、新しいものが入ってくる。


それは総じていいものである可能性が高いが、今はそれに触れるのが怖い。


そうして、不毛な時間を過ごした。そんな姿は、いたくセンチメンタルだったと思う。



 周りは暖かかった。


バイト先ではパートのおばさん達が中心になって慰労の飲み会を開いてくれたし、友人は敢えて違う話題を振ってくれた。


多分、この傷は癒えない。

6年の歳月を経たのだから、全てを終わらせるのには同じだけの時間がかかるのかもしれない。


 だけど、そんなことはどうでもよかった。全てを抱えて生けるほど、僕は強くない。




だからそのまま、今を受け入る。

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