97話 交尾

 夜。

 自室の扉を凄い勢いでノックする音がした。


「開いてるよ」

 と俺が言う。


 ガチャ、と扉が開いて、ナナナが勢い良く入って来た。

 そしてベッドの縁に座っている俺に飛びついて来る。

 そのまま俺の首や耳を舐めてきた。


「ちょっと」

 と俺はナナナを突き放す。


 彼女が寂しそうな顔をする。


「待て」と俺は言った。


 シルクのオレンジのパジャマ。

 ワンピースで、お尻には尻尾が出ていた。


 俺が立ち上がり、ナナナから離れると勢いよく揺られていた尻尾が、動かなくなった。


 俺は部屋の扉の鍵を閉めた。

 そしてナナナの隣に戻った。

 彼女の尻尾が、また動き出す。

 ナナナが俺に飛びつこうとして来る。


「まだ待て」と俺が言う。


「なんで?」とナナナが悲しそうに言う。


 面白いからに決まってるじゃん、と俺は思った。


「なにをするつもりなの?」

 と俺は尋ねた。


「王様の体を美味しい美味しいする」

 とナナナが答える。


「それから?」


「いっぱい交尾する」

 ニヘラ、と彼女が笑った。


 可愛い。


「美味しい、美味しい、していい?」

 とナナナがヨダレを垂らしながら尋ねた。


「まだダメ」と俺が言う。


「どうして?」

 とナナナが悲しそうに尋ねた。


 彼女の質問に答える気はなかった。


 俺は彼女の尻尾を掴んだ。

 ヒャ、と彼女が嬉しそうな声を上げた。


「根本の方が好きなんだっけ?」

 と俺が尋ねる。


「好き」


 ゆっくりと尻尾の根元に向かっていく。


 ナナナの顔が恍惚こうこつな表情になっていく。


 親指と人差し指で輪を作り、彼女の尻尾の根元部分で上下に擦る。


 ナナナは口を開けて、ヨダレを垂らしていた。

 どんどん尻尾の中の筋肉が硬直していく。


「尻尾って硬くなるんだね」と俺が言う。


 ポクリ、とナナナが頷く。


 手が余っている。

 俺はヨダレでベシャベシャになった唇を触った。


 そして口の中に指を入れた。


「吸っちゃダメ」と俺が言う。


「だって」

 と彼女が言った。


 俺は彼女の口の中に指を入れて、口の上を触る。くじらの皮膚のように硬くてヌメッとしている箇所。そこは誰にも触られたことがない箇所で触ると死ぬほどクスぐったいのだ。


 ナナナがシーツを握り閉めて口の中のクスぐったさと、尻尾の気持ち良さに涙を流した。

 ひとしきり悶えている彼女を見る。


「尻尾の根元を舐めてあげようか?」

 と俺はナナナの耳元で尋ねた。


 彼女が潤んだ瞳で俺を見た。


「美味しいしてくれるの?」


「その代わり、後でいっぱい美味しいしてね」


 うん、うん、と大きくナナナが大きく頷く。


「四つん這いになって」

 と俺が言った。


 ナナナが俺にお尻を向けて、四つん這いになった。

 スカートを捲りあげるぐらいに尻尾が硬くなっている。


「パンツ履いてないんだね」

 と俺が言う。


「だって」と彼女が言った。「尻尾が痛いんだもん」


 彼女のお尻が見えた。

 お尻には尻尾が生えている。

 付け根部分を指でなぞってみた。


 気持ちいいのか? お尻がゆらゆらと揺れた。


 俺は尻尾の付け根の部分を舐めた。

 付け根部分。

 尻尾は毛が生えているけどお尻には毛が生えていない。

 付け根部分は、毛が生えていると、生えていないの境目だった。


 付け根部分を舐めながら、尻尾を触った。

 さっきよりも、さらに尻尾が硬くなっていく。


 くぅーん、くぅーん、とナナナの鳴き声が聞こえた。


 いっぱいいっぱいしてあげた。

 でも絶頂を感じる前にやめた。俺は意地悪なのだ。


「もっと、してほしい」

 とナナナが顔を真っ赤にさせて言った。


「ダメ」と俺が言う。


「どうして?」


「絶頂は交尾の時にとっておきたい」


「次はボクが美味しい美味しいしていい?」


「いいよ」


 彼女がヨダレを垂らしながら、俺の方を向いた。


「王様のあんなところやこんなところも美味しいするよ」


「いいよ」と俺が言う。


「誰にも美味しいされたとこがないとこも、ボクが美味しいするよ」


 ポクリ、と俺が頷いた。


「いただきます」

 と彼女が言って飛びついて来た。


 それから俺は彼女に色んなところを美味しいされて、初めて交尾をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る