第74話 超訳、戦争について

 仕事部屋。

 俺は猫と念話を繋げていた。

「やべぇーよ。早くワープホールを作ってくれ」


 チェルシーがいる場所に小さなワープホールを作り、猫と俺の仕事部屋を繋げた。


 顔を真っ青にさせたチェルシーが帰って来た。顔を真っ青といってもコイツの顔は毛で覆われているから顔色なんて一ミリもわからない。だけど自分が吸ったタバコで家が火事になったぐらいに焦っていることは伝わった。


「無理無理。俺、殺されるわ」


 チェルシーには火力マックスで認識阻害の魔法をかけていた。

 だから誰にも見つかるわけがない。


「バビリニアはやべぇーよ。もう俺、あの国の城に行きたくねぇーよ」

 と猫が言う。


「どうだった?」

 と俺は尋ねた。


 チェルシーには情報を取りに行ってもらっていたのだ。


「強い勇者が王様の近くにいた。もう少しでバレるところだった。王様に近づくこともできねぇー」


「それじゃあ側近の情報も奪ってこれなかったのか?」と俺は尋ねた。


「俺を何様だと思ってんだ? 天下無敵の大泥棒チェルシー様だぞ」


 この猫は何を言ってるんだろう? コイツは天下無敵でもないし、大泥棒でもない。


「それで俺めちゃくちゃ頑張ったけど、俺の要望通り、この国の名前はネコネコニャンニャンニャン王国にしてくれるんだろうな?」


「そんな触れ合いパークみたいな名前にしねぇーよ。いつ誰がそんな約束したんだよ?」

 と俺が言う。


「チェ」とチェルシーが舌打ち。「頑張り損じゃねぇーかよ」


「チェルシーのおかげで国を守ることができるんだ」と俺は言った。


「国の名前は宮本小次郎王国にするのか?」


「しねぇーよ。なんで国の名前に自分の名前を入れるんだよ」


「まさか、お前、まだ名前を決めてねぇーのかよ」とチェルシー。


「もうすでに決まってるよ」と俺。


「なんだよ。まさかチェルシー国か?」


 っんなわけねぇーだろう。


「アクセプト国」


「つまらねぇー名前だな」


「受け入れる、っていう意味だよ。色んな種族を受け入れる国にしたい。そういう思いで付けたんだよ」


「つまんねぇー。つまんねぇー。せめてチェルシー可愛いは入れてほしかったわ」と猫が言う。


「いいから奪って来た情報を映し出してくれ」


 チェルシーが奪って来た情報を壁に投影させた。


 これで隣接する3ヶ国の情報を手に入れた。チェルシーのおかげで戦争の全貌ぜんぼうが見えてきた。

 星のカケラは周辺国家に集まっていることもわかった。



 ココから少し戦争のことを語るけど、つまらなくならない程度にポップに語らさせていただきます。

 これを俺は色んな人に説明したりして作戦を練らなくてはいけない。だからバランでもわかるように解説させていただきます。

 超訳、今現在行われている戦争について。←超訳、って言えば、なんかわかりやすい感じがしますよね。


 まず、どこの国が戦争をしているのか?

 それは俺の国←この俺の国という説明が、まだ少し微妙な表現である。独立宣言してから国になる。領地を持っている貴族を集めて加盟するかどうかを決めてもらうのだ。今の状態では俺の国がどこまであるのかも判断がつかない状態である。だから旧ユーゴス国というべきなんだろう。

 

 旧ユーゴス国の西側に隣接しているソビラト。

 王族が死んでから西側からソビラトが攻めて来た。

 攻めて来た、と言い方をしたら武力で制圧して来た、みたいになるけど、そういうことじゃない。

 国を無くした領地を奪いに来たのだ。


 俺の国に入らないか? 中小国家であるソビラトが街を勧誘した。


 国家を失った街は、どこかの国に統治されたい。

 領主に街を運営するだけの才覚が無かったり、攻められた時に街を守るだけの武力が無かったりするので、どこかの国に所属したいのである。


 国は税金が手に入れたいので街を勧誘したい。

 勧誘は国と街の話し合いだった。


 一方その頃、南側に面しているエジーという中小国家も同じようなことをしていた。


 西側から攻めるソビラト。

 南側から攻めるエジー。


 そして南西でソビラトとエジーがぶつかった。


 自分の街だとソビラトは主張した。だけどエジーもこの街の所有権は自分のところにある、と言い張った。

 旧ユーゴスの南西で戦争が起きた。それが今の戦争である。


 バランもわかるかな? どうせアイツは覚えてねぇーから、今起きている戦争の説明しても意味ねぇーか。


 まだ続きがある。

 この戦争を裏で操る大国がいた。

 それがバビリニアである。


 バビリニアはソビラトを潰したい。

 ソビラトは中小規模の国家である。だけど星のカケラを保有していた。

 世界征服をするために必要なアイテムである。


 だけどバビリニアはソビラトに手出しはできない。

 なぜなら同盟を結んでいるのだ。


 前回の星のカケラが出現した時に世界大戦が起こった。

 この戦争で大量の死者が出してしまった。だから星のカケラのことを知る国同士は戦争をするのはやめておきましょう、という同盟を結んだ。

 つまり、この同盟に加入していない国は星のカケラのことを知らない。

 ちなみに旧ユーゴスも同盟に加入していたみたいである。


 バビリニアはソビラトと同盟を結んでいた。だから攻撃ができない。

 それじゃあバビリニアはどうすればいいのか?

 他の国に潰して貰えばいいのだ。


 戦争になるための火種はあった。

 だから、その火種が燃え上がるようにバビリニアが仕掛けたのだ。


 エジーに勝ってもらわなくてはいけなかった。だからバビリニアは武器をエジーに送った。


 借金まみれの中小国家は弱い。しかも、その借金は大国バビリニアに対しての借金だった。エジーは通貨の利息を払うことができず、バビリニアの傀儡かいらいになるしかなかった。


 通貨の利息。これがバビリニアを大国にさせて、世界の経済を牛耳る要因になっている。


 バビリニアの通貨は、どんな国でも発行できる。その代わり発行した数%を利息としてバビリニアに支払わないといけなかった。

 利息の割合は国によって違う。割合を調整することで経済のバランスを取り、世界を支配していた。

 しかも通貨で返すことができないのだ。通貨を発行した数%を物で返さないといけなかった。


 エジーは金銀銅が発掘できる国だった。

 だけど取り尽くしてしまったらしい。

 エジーは色んな物を輸入でまかなっていた。

 だから金銀銅が取れなくなってしまったら外交での通貨獲得の手段も無くなり、自分の国で通貨を発行しなければいけなくなった。

 自国で通貨を発行してしまったらバビリニアへの借金が膨らむ。

 だけど借金を返すための産業を持っていない。

 だからバビリニア様の無茶な要求を飲むしかなかった。

 俺の国に勇者を送り込んできたのもエジーだった。それもバビリニアの指示である。

 

 カヨはエジーにいる。

 ミナミを蘇らすためにはソビラトの星のカケラと、バビリニアの星のカケラを手に入れなければいけなかった。

 独立宣言と共に戦争開始である。

 どんなハードモードのゲームなんだよ。

 無理ゲーどころの騒ぎじゃない。

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