第72話 キスしたり、体を触ったり

 夜。

 自分の部屋で色んな事を考えていた。

 本当に色んなことである。

 これから起こりうることとか。

 戦略のこととか。

 本当に色々。

 重要なことを思いついたらメモを取った。

 でも、このメモですら、机に置いておくと誰かに見つかって情報が漏れるのではないか?

 考えれば考えるほど底なし沼にハマっていくような感覚がした。


 コンコン、と扉のノックする音がした。


「はい」

 と俺は言って扉を開けた。


 アニーとナナナが扉の前に立っていた。

 2人はシルクのパジャマを着ている。

 アニーはピンク色のパジャマで、ナナナがオレンジ色のパジャマである。


「どうしたの?」

 と俺は尋ねた。


「交尾しに来た」

 とナナナが言う。


 俺は吹き出しそうになる。


 なんだって? 交尾しに来た?


「ダメですよ。ナナナちゃん」

 とアニーが言って、ナナナのパジャマの袖を引っ張った。


「だってボクは16歳を越してるもん」


「……私の方が先に妻なんですよ。私より先にしないでください」


「いいじゃん。何で交尾しちゃダメなの?」


 廊下で交尾交尾を連発されると誰かに聞かれる可能性があった。


「いいから中に入って」

 と俺は言って2人を部屋の中に入れた。


「領主様、交尾しよう?」

 とナナナが言う。


「ダメです」

 とアニーが言う。


「アニーは16歳になってからすればいいじゃん。ボクは16歳を越した妻なんだから別にいいでしょ」


「そんなの……イヤです」


「ボクはしたいの。領主様と子作りしたいの。いっぱいいっぱい気持ちいいことしたいの」

 とナナナが駄々をこね始めた。


 アニーが顔を真っ赤にさせている。

 恥ずかしいのもあるし、照れているのもあるし、ムカついているのもあるんだろう。


 俺がアニーより先にナナナと交尾してしまったら、2人の関係が崩れてしまうような気がした。ココは気を使わないといけないだろう。


「アニーは現在、第一夫人だ」

 と俺は言った。


 第一夫人ってなんだよ。←適当。

 本来なら日本にいた頃の妻を第一夫人としてミナミを第二夫人とするならアニーは第三夫人である。

 でも現在はアニーが第一夫人である。←つーか夫人に第一も第二もあるのかな? こんな呼び方をしたら逆に失礼じゃないか? 絶対に日本にいた頃のカヨは怒るだろう。


「第一夫人のアニーが、自分より先にナナナと交尾してほしくないというなら、俺はそれに従うよ」


「私より先に交尾してほしくありません」

 きっぱりとアニーが言った。


 ナナナが頬を膨らませて、怒った。


「それじゃあ2人が早く交尾すればいいじゃん」


「16歳になってから、って約束なんだよ」

 と俺が言う。


「なんだよ。その約束」とナナナが怒る。


「女の子の体を傷つけないためだよ」


「ボクはしたくてしたくてたまらないの」

 とナナナが地団駄を踏んだ。


「わかった。わかった」

 と俺が言う。


「アニーより先に交尾はできないけど、イチャイチャはしよう」

 と俺が言った。


「イチャイチャって?」

 とナナナが言う。


 イチャイチャの解説を求められるとは思わなかった。


「キスしたり、体を触ったり」

 と俺が言う。


「尻尾も触ってくれる?」

 とナナナが言う。


「もちろん」


「尻尾の根元まで触ってくれる?」


「もちろん」

 と俺が言う。


「それじゃあ領主様の色んなところ舐めていい?」


「もちろん」

 と俺が言う。


 色んなところってどこ?

 やばい。もちろん、と俺は言っちゃてる。


 アニーが頬を膨らませていた。


「ズルイです」

 とアニーが怒っている。


 ちょっと待って。このゲーム難しくない。

 1人をなだめたら、1人が怒ってしまう。


「私もイチャイチャしたいです」

 とアニーが言う。


「もちろん」と俺が言う。


「ナナナちゃんより先にイチャイチャしてほしいです」とアニーが言う。


「ボクが先に領主様にイチャイチャしてあげる、って言われたんだよ」とナナナが言う。


「わかった。わかった。今日は3人でイチャイチャしよう」

 と俺が言った。

 自分で言っていておかしなことはわかっている。

 でも、これしか必勝法が無いように思えた。


「……3人ですか」


「ボクはそれでもいい」

 とナナナが言う。


「それじゃあ提案ですが、明日は交代でイチャイチャしてくれますか?」

 とアニーが言った。


 ココでも交渉上手が発動されるのか。


「もちろん」と俺が言う。

「今日は3人でイチャイチャして、明日から交代でイチャイチャしよう」


「それじゃあ私が明日イチャイチャしますので、ナナナちゃんは明後日イチャイチャしてください」

 とアニーが言う。


 エルフの女の子は先に順番を決めていた。


「わかった」

 とナナナが言う。


「それからはずっと交代でいきましょう」

 とアニーが言った。


 ずっと交代。

 っということは、これから先、どちらかと寝ることになるってことだろうか。


「小次郎様もそれで文句はありませんよね?」

 とアニーが言う。


 ここで否定すれば振り出しに戻るか?


「はい」と俺が言う。

「でも一緒にイチャイチャできない日があるかもしれない」


「かまいません。そういう日は調整しますので」

 とアニーが言う。


「ナナナちゃんもそれでいいですよね?」

 とアニーが尋ねた。


「いいよ」

 とナナナが言う。


 さようですか、と俺は言った。

 交渉がうますぎて、相手の思うつぼになってしまった。


 ナナナは尻尾を振って、すでに俺のベッドに入っている。


 よいしょ、と小さい声で呟きながらアニーも俺のベッドの上に乗った。


 もしかしたら2人ともグルになって、この交渉をしに来たのか?


 それより今すぐに解決しなければいけない問題がある。

 2人と同時にイチャイチャってどうすればいいんだよ?

 なんかだかわかんねぇーけど、緊張してきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る