第25話 駆け巡れ男たち!


 「探すのはいいとして、どこを探せばいいんだ?」


 安易に探せと言われても、俺たちのいる明星市は郊外とはいえそれなりの広さがある。


 仮にこの学園都市地区だけと言われても1日かけても周ることは無理に近い。


 

 そんなことを考えていると俺のスマホがポケットの中で震えだしていた。

 取り出して画面を見ると雫からのLIMEが届いていた。


 「今度は何だよ……」

 

 軽くイライラしながらLIMEの画面を開くと中には1枚の写真が送られていた。

 写真の下には『ヒント①』と書かれている。


 「どこだこれ?」


 写真にはケーキなどが入っているキャビネットやレジなどが見える。

 奥には木製のテーブルや椅子などが見える。

 おそらくカフェなんだろうとは思うけど、どこのカフェなのか検討がつかなかった。


 「あれ、ここって……」


 恭一が顎に手を置きながら画面を見ていた。


 「知ってる場所か?」

 

 俺が聞くと恭一は「うーん」と声を上げる。

 

 「あ、そうだ! ここ西口にあるカフェだ、前にゲームのコラボやってたところだ」

 

 ちなみに俺たちがいるのは南口だから西口となると少し距離がある。


 「マジか、場所わかるか?」

 「わかるよ」

 「前は急げだ! 待ってろよレヴィア、今助けに行くからな!」

 「……人の相方を悪い人みたいに言わないでほしいけどなあ」


 


 恭一に案内をされながら目的地であるカフェに着き、店内に入ると写真に写っている、ケーキが入っているキャビネットやレジ、木製のテーブルやイスを確認することができたが、肝心の雫とレヴィアの姿はそこにはなかった。


 「何でいないんだよ……」

 

 スタッフに案内されて仕方なく席につく俺と恭一。

 

 「せっかく来たんだし、イライラしないで何か頼もうよ、ちょうどよくお腹も空いてきたところだし」


 恭一は立てかけてあったメニューを開いていた。


 『お昼』という言葉に反応するように俺の腹がキューっと鳴り出した。

 店内の時計を見ると正午を過ぎたあたりだった。


 「腹が減っては戰はできぬっていうし、ここで体力つけとくか」

 「そうだね、僕はこれにするけど、奏真はどうする?」


 メニューの『4段パンケーキハニーミックス』を指差す恭一

 ……見てるだけでお腹いっぱいになりそうなほどだった。


 「そんじゃ俺はこれの大盛りで!」


 勢いよく『特性アラビアータ』を指差していた。

 ちなみにプラス150円で大盛りができると小さな文字で書かれていた。




 「ってか何か楽しんでないか?」

 「そうかな?」 


 パンケーキを切る恭一は何か嬉しそうに見えていた。

 本人は気づいているのかわからないが、鼻歌まで歌っているし。


 「奏真と2人だけでで遊ぶのが久しぶりだからかもね」


 恭一は小さく切ったパンケーキを3段に積み上げてから口に頬張る。


 「そう言われればそうだな……」


 高校に入学して一番最初に話をしたの恭一だった。

 

 「そういや何がきっかけで話したんだっけか?」

 「たしか、奏真がスマホにつけていたキャラのストラップだったかな」

 「あー……これか」


 スマホを取り出して、恭一に見せる。

 当時、プレイしていたゲームのキャラクターのストラップだ。

 杏子からプレゼントされたことから大事にしようとスマホのストラップにつけていた。  

 

 「夏休みまではよく2人で遊びに行ってたりしてたね」

 「まあな、バイクの免許も取ったのが同時期だったしな」


 夏休みになってからは恭一と雫が付き合うことになり、2人でいることが多くなり、あまり遊ばなくなっていた。

 恭一と雫が俺の家に押しかける形で結果3人で遊ぶことは多々あったが


 「それにしても毎日一緒にいて、よく飽きないよな。 どうせ家でもべったりなんだろ?」


 俺が茶化すように話すと、恭一は「うーん」と呟く。


 「そうでもないよ、家でも別の部屋にいることもあるし」

 「マジ……?」

 「こんな時に嘘ついても仕方ないでしょ?」

 

 自分が思っていたイメージと全然違うことに驚く


 「僕も1人でやりたいこともあるし、それは雫も同じみたい。 その代わり寝る時は僕にべったりだけど」

 「さすがにそこまでは聞いていない」 


 聞きたくなかったことを聞いてしまい軽くゲンナリする俺を見て

 恭一は笑っていた。


 「だからね、たまにはこう言うのもいいなって思ってたんだよ。 久々に奏真とバカみたいに遊ぶのも」

 

 そう告げると恭一は最後のパンケーキを口の中に運んで行く。

 俺も最後に残ったペンネをフォークで刺してから頬張る。

 

 「ごちそうさまでした」


 2人で手を合わせて食後のあいさつをする。


 「で、これからどうするか……」

 「そうだな、雫が行きそうなところをあたるしかないかな」

 「それしかないよな、頼むから学園都市地区に限定してほしいけどな」


 そう考えているとテーブルに置いていたスマホが震え出していた。

 画面にはLIMEの通知画面が表示されており、メッセージの部分にはヒント②と送られていた。


 「今度はどこなんだ……?」

 

 お冷やを飲みながらスマホをスライドさせて、送られた写真を表示させる。

 

 「っておいいいいいいい!?」


 画像を開いた瞬間俺は叫び出してしまう。


 「あーあ……雫のやつに好かれたみたいだね」

 

 スマホの画面にはレヴィアに抱きつき、頬に口づけをしている雫の姿が写っていた。


 「俺もされたことないのに……! お の れ 雫 め!」

 「大事なものを奪われた主人公のセリフみたいに言わないでよ」

 

 苦笑いをしながら恭一はスマホの画面をじっくりみていた。


 「あの2人『新明星水族館』にいるみたいだね」

 「何でわかるんだよ?」

 「ほら、ここみてごらん」

 

 恭一は画面を指で操作して、画像を大きくさせた。

 レヴィアと雫が写っている後ろに水族館のロゴが見えていた。

 

 「ホントだ! よくわかったな」

 「この前みたミステリー番組に似たようなのがあったからね」

 

 恭一はニコッとした表情で俺の顔を見る。

 

 「それじゃ、次は水族館か……ってどうやって行けばいいんだ?」

 「たしか駅からバスが出てたはずだよ」

 「何でそんなに詳しいんだよ……」

 

 コップの水を一気に飲み干してからレジで会計を済ませて駅のバスロータリーに向かった。


 「レヴィア、無事でいてくれよ……」

 「……だから、人の相方を悪者にするのやめてくれないかな」





 「これでヨシ!」

 

 あたり一面、多種多様な魚たちが泳いでいるのが見える、カフェにて

 スマホの操作が終わると雫さんはまたもや片足を上げ、指は誰もいない方向を向けていた。

 

 「もしかして恭一さんから連絡がきたんですか?」

 「ちがうよー、奏真にさっきの写メを送ったんだよー」

 「えぇぇぇぇぇぇ!!」


 雫さんは含みのある笑いをしながら私に画面を見せてきた。

 画面には私に抱きついて頬に唇を重ねている雫さんの写真が表示されていた。今座っている椅子に座った直後にされたので、ものすごく驚いた顔をしている。


 「恥ずかしいから閉じてくださいー!」

 「ふっふっふー、レヴィアのファースト頬はいただいたぜー、残念だったな奏真」

 

 雫さんは変な笑い方をしながらスマホの写真アプリを閉じていった。


 「さすがに唇はキョウくんだけのものだけだしー」

 「さらっと変なこと言わないでください……」


 いずれは言ってみたいと思ったのはここだけの話……


 「それでこの後はどうするんですか?」

 

 私の問いかけに雫さんは腕を組み、「うーん」と唸り声を上げる


 「そうだなー、ぶさいくな魚とチンアナゴはみたから、他に行こうかなー、もっとレヴィアとデートしたいしー」

 

 デートということばに私は顔が赤くなっていた。


 「ゴールは決まっているから、その近くまでいこうかなー」

 

 そう言って雫さんは立ち上がったので、私も一緒に席を立った。


 「ふふふ……わたしとレヴィアの逢瀬はまだまだはじまったばかりなんだよ、奏真」

 

 雫さんは悪役がいいそうなセリフをつぶやいていた。


 「……奏真さん、心配してなければいいけど」


 そしてまた私は雫さんに手を掴まれ引っ張られるように歩き出して行った。

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【あとがき】


お読みいただき誠にありがとうございます。


次回は10/8(土)追加予定です。


■作者の独り言

野郎同士で遊ぶのって最高に楽しいですよね〜

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

読者の皆様に作者から大切なお願いです。


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