第23話 たまにはいいですよね?
「本日はお日柄もよく、こういう日に私は必ずやることがあるんですよ」
誰も待ちに待っていない登校日。
夏休みの生活に慣れきってしまった体を無理やり起こして学校に来たの俺たちを待っていたのは全校集会での校長の長話……もとい『ありがたい』お話だった。
元々、校長はおしゃべりが好きで、放っておくと永遠にしゃべっているのではないかと言われている。
その度に周りにいる副校長や学年主任が必死に止めるまでが全校集会の流れとなっている。
しかもこの暑い中、クーラーがない、人が密集して風通しが悪くなっている体育館で長話を聴かなければならないのは地獄でしかない。
校長は天気がいい日はジョギングをしているという話から始まり、いつの間にか最近誕生した孫の話になっていた。
いつもなら寝ている時間のせいか、校長の話のつまらなさもあってかずっと欠伸がとまらなかった。
「欠伸するのはいいけど、手で口抑えないと
俺の横で恭一がスマホの画面を見ながら話しかけてきた。
ちなみに大和というのは俺や恭一のクラスの担任のことだ。
「ゲームの攻略サイトを見てるやつに言われたくないな」
恭一のスマホ画面を覗き込むように見ながら返す。
「時間は有限だからね、有意義に使わないと」
視線はスマホの画面を向いたまま、淡々と答える恭一。
遠回しに校長の話は聞く価値がないと言いたいのだろう。
「ホントだよな、何でこんなに面白味のない話を聞かなきゃいけないんだよ……」
周りを見ると、ほとんどの生徒が正面の校長の方ではなく真下のスマホを見ていた。
「そういえば、スマホはどうしたの?」
「……充電きれてたからモバイルバッテリー接続してカバンの中で充電中だ」
充電器にはセットしたのに延長コードの電源を入れ忘れていたことに気づいた。慌ててモバイルバッテリーを引っ張り出してカバンの中に放り込んだ。
「よりによって何で登校日にやらかすんだよ俺は……」
肩をがっくりと落としてため息をつくことしかできなかった。
全校集会が始まって1時間が経とうとしていた。
校長の話が終わる気配など微塵もなく、ずっと話していた。
ちなみに今は、校長の祖父の武勇伝を話している。
さすがに副校長以下の教師連中もさすがに大半の生徒たちが校長の話を聞いていないことに気づいたのか、終わらせるために立ち上がると。
「校長先生のつもる話もあるかと思いますが、このあと教員会議が控えておりますので、ここまでとさせていただきます」
強引に校長の無駄話を終わらせた。
生徒たちは腕や脚を伸ばしたりしながら体育館を後にする。
担任が教室にはいると、先ほどのアナウンス通り教員会議があるせいか一言だけ言ってすぐに教室からでていってしまう。
「ようやく終わったか……」
一気に疲労感が押し寄せてきて机に突っ伏す。
「始業式もこれがあると思うとゾッとするね……」
俺の目の前の席に座る恭一が苦笑いをしながらこっちを向く。
「マジかよ、始業式サボろうかな……」
「それもありかもね、ちょうどよくゲームでのイベントもあるし考えとこうかな……っと」
話している途中で恭一はスマホを取り出す。
「お、雫の方も終わったみたいだな」
「雫のほうも登校日だったのか」
「あれ、レヴィアさんは……?」
「いや、今日は家にいるよ、編入は来月みたいだし」
「あ、なるほどね」
恭一は俺を揶揄う様な表情をしていた。
「奏真のことだから、起きなくてレヴィアさんに怒られたんじゃない?」
「そ、そんなことはないぞ! 俺は真面目だからな!日が昇ると共に起きてだな——」
必死に誤魔化そうとするが、恭一はわかっていた様で呆れた顔をする。
「こっちも雫が起きてくれなくてね、大変だったよ。 たぶんレヴィアさんも同じ気持ちだったんだろうなぁ」
恭一は疲れた様な表情で窓の外を見ていた。
これ以上聞くと俺の方に飛び火しかねないので話題を変えることに……
「どうせ、家に帰ったらずっとゲームしているんだろ?」
「それがね……」
恭一は肩をすくめながらため息をついていた。
「今朝から不具合が見つかって、その修正のためにメンテナンス中だよ、終了時間も未定ってなってるし」
つまり家に帰ってもやることがないんだよね、と話す恭一。
「だからたまには外に出ようと話してさ、これから駅で合流するんだよ、よかったら奏真も来るかい?」
「何でわざわざ俺を誘うんだよ?」
「奏真なら雫も文句言わないしね、他の人なら終始不貞腐れるんだけど」
雫の不貞腐れる姿が容易に想像できた。
「せっかくのお誘いだけど、俺は急いで家に帰らせてもらうぜ!」
朝の大事な時間を無駄にされたんだ、午後からはレヴィアと夏よりも暑い日を過ごすんだ!
「まあ、そうだよね。 ホント奏真はレヴィアさん一筋だね」
「おまえも同じだろ?」
「まあね」
俺は机の横のフックにかけたカバンと持って立ち上がる。
恭一も一緒に立ち上がるが
「あ、ちょっとトイレ行ってくる!」
とだけ言って教室から出て行ったしまう。
仕方なく俺はもう一度椅子に座る。
「あ、そうだスマホの充電」
鞄をあけてスマホを取り出す。
バッテリーは半分近くまで回復していた。
「あれ、LIMEが来てる」
画面をタップするとレヴィアからLIMEが届いていた。
Revia.T
『天気がいいですし終わったらお出かけしませんか?』
天気もいいし、外で一緒にいるのもいいかもしれない
そう思い、『それじゃすぐに家に帰る!』と送ると
Revia.T
『駅前で待ち合わせしませんか?』
とすぐに返ってきた。
もしかして本でも買いに駅まで来ているのかもしれないな。
それにすぐに会えるならいいかと思い
Souma.O
『わかった、駅の切符売り場付近にいてくれ』
そう返すと、レヴィアは『わかりました!』という最近俺が進めたかわいい女の子のスタンプを送ってきた。
「どうしたの? 顔がすごいニヤけてるけど?」
戻ってきた恭一はカバンを持つと俺の顔を見ていた。
「これから俺もレヴィアとデートに行くんだぜ!」
俺は恭一の目の前で親指を立てる。
見ていた恭一はよかったねとクラスの女子が喜びそうなスマイルを見せていた。
「早すぎたかな……」
お昼の時間になろうとしているからか、駅にはスーツをきたサラリーマンや買い物にきた年配の女性などたくさんの人が行き交って行った。
奏真さんにスタンプを送るとスマホをカバンの中に仕舞うと待ち合わせ場所である駅の切符売り場に向かう。
切符売り場周辺は広いため、待っていても行き交う人たちの邪魔になることはなかった。それを見越して奏真さんはここと言ってくれたのだろう。
彼の気遣いに胸の内で感謝をする。
いくら何でも早すぎたかもしれない……
待ち合わせ場所に着いてから周りを眺めたり、目についた電車の料金を
見たりして時間を潰すが一向に来る気配がない。
「連絡してから家を出てもよかったかな……」
自分の行動に呆れてため息がでる。
カバンを取り出して適当にニュースサイトでも見ようと思ってカバンを開けようとしていると——
「あれ、レヴィア?」
「ひゃっ……!!」
急に後ろから声をかけられて変な声がでてしまう。
やっと来たと思って後ろを振り向くと……
「あれ……雫さん?」
立っていたのは待ち人ではなく制服の上にグレーのカーディガンを羽織った雫さんだった。
「どうして、ここに?」
「今日、登校日だったんだよー、行きたくもなかったけど」
雫さんは両手をあげるがサイズに合わないカーディガンを着ているせいか、手首の部分がヒラヒラと左右に舞っていた。
「そんで、これからキョウくんと待ち合わせしてお出かけするんだー」
「そうなんですね……」
「レヴィアは何でここにいるんだ? っていうか……」
雫さんは不思議そうな顔をして私の頭から爪先までじっくりと眺めていた。
「……何で、私の学校の制服着ているんだ?」
雫さんの言葉に私は慌てふためくことしかできなかった。
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【あとがき】
お読みいただき誠にありがとうございます。
明日もお楽しみに!
■作者の独り言
制服デート・・・・・・夢のまた夢のm(ry
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
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