第22話 猛暑よりも暑い二人
「奏真さん、起きてください!」
心地いい声と共にユッサユッサと体を揺さぶられる。
「あと……2〜3時間」
「だーめでーすー!」
大声と共に布団を何度も叩くレヴィア。
「わかったよレヴィア、起きるから目覚めのち——」
『チュウ』と言おうと思ったが、目の前に立つレヴィアは握り拳を作りながら鬼の様な形相をしていた。
「起きないと、朝ごはん奏真さんの大好きなピーマンの肉詰めにしますよ?」
「いやだああああああ!!!」
「それなら起きてください! 遅刻しますよ!」
レヴィアは勢いよく俺が被っていた布団を取り上げていた。
「畜生……誰だよ登校日なんて作ったやつ」
俺は一人で文句を言いながらゆっくりと体を起こす。
窓には青空が広がっており、遮るものがないせいか太陽光線が俺の顔にクリーンヒットしていた。
「ご飯用意していますから、顔洗ってきてくださいね」
「へーい」
ため息をつきながらベッドから降りた。
枕元に置いたスマホを見ると画面には『7:00」と表示されていた。
「……速すぎるだろ」
ちなみにいつもならまだまだ寝ている時間だった。
「いただきまーす!」
洗面所で顔を洗ったからリビングに行き、レヴィアが作ってくれたパンとスクランブルエッグを食べる。
パンは焼くだけだから問題ないが、スクランブルエッグは塩気が多い感じがした。
俺の目の前に座るレヴィアは俺の顔をじっと見ていた。
「……もしかして、塩多すぎましたか?」
「い、いや!昨日に比べたらだいぶマシだな」
モモの料理の腕前に触発されたのか、レヴィアはあれから毎日スクランブルエッグを作っていた。本人曰く——
「まずは簡単なものから作れるようになりたいですから!」
と意気込んでいた。
何故かレヴィアは塩の量の調整がうまくできず、最初に作った時は大量の水を飲んでも喉の渇きが潤わないほど塩っぱかったのである。
それから毎日続けるにあたり、少しずつ塩気は取れてきてはいるが……
「もう少し減らしたほうがいいんですね……」
と、紺色のワンピースにの上につけたエプロンの裾をぎゅっと握りしめていた。
できれば俺の内臓がおかしくなる前に量がわかるようになってほしいと願うばかりだ。
朝食を食べ終わってから1ヶ月ぶりに制服に着替えて玄関に向かう。
「今日はすぐ終わるんですか?」
靴べらを使って学校指定のローファーを履こうとしていると後ろからレヴィアがやってくる。
「遅くても昼には帰ってくると思う……いや、何が何でも帰る!」
ローファーを履き終えると勢いよく立ち上がり、レヴィアの方を向く。
「わかりました、それじゃお昼用意して待っていますね」
レヴィアはにっこりと笑っていた。
思わず俺はガッツボーズをしていまう。
「それじゃ行ってくるなー!」
「あ、ちょっと待ってください!」
レヴィアは俺に近寄ると、つま先立ちをして顔を上げてくる
も、もしかしてこれは行ってきますの——
「ネクタイ曲がってますよ」
「え……」
レヴィアは俺がつけているネクタイを掴んで位置を調整していた。
「うん、これで大丈夫ですよ!」
レヴィアは満足できたのか満面な笑みを浮かべていた。
「あのさ、レヴィア……」
「どうしました?」
「ネクタイもいいんだけどさ、やっぱり……」
そう言って俺は自分の頬を指差す。
レヴィアは頭の上にはてなマークを浮かべそうな表情をしていたが、理解できると毎度のごとく顔を真っ赤にしていた。
「は、早くいかないと遅刻しますよ!!」
元気な声で怒鳴られてしまい俺は逃げる様に外にでていった。
「まったく、奏真さんは朝からもう……!」
彼を見送ると、すぐにリビングに戻り布団をベランダで干したり朝食の後片付けなど毎日の日課をこなしていた。
「もう、奏真さん読んだ漫画は片付けてって言ってるのに!」
掃除機をかけるため奏真さんの寝室に入ると机の上に漫画や雑誌が無造作に何冊も置かれていた。
雑誌に至ってはひらきぱなしになっており、窓を開けたからか風でパラパラと捲れていた。
雑誌からしまおうと思い、手に取ろうとするが……
「ひゃっ……!」
たまたま開いたページを見て思わず声をあげてしまう。
「な、何でこんなに……!」
ページにはテレビで見かける若手女優が水着姿が写っていた。
白のビキニ姿で可愛らしい表情をしながらこちらを見ている。
だが、私はその顔つきとは正反対のものが目についてしまっていた。
しかも条件反射的に自分のと比較しながら……
「奏真さんのスケベ!!」
いるはずのない彼に向けて声を張り上げると、外から風が吹き込んできて勝手にページが捲り上がり、次のページが開く。
次のページにはさっきの肌を露出した姿とは違い、セーラー服を着た姿が載っていた。登校の風景をイメージしているのか、こちらに話しかけている様な感じに見える。
見出しには『2学期が始まっちゃったね』と書かれている。
「そういえば制服いつ届くのかな?」
電話の際にお祖父様がこちらに送る様に手配をしたと言っていたことを思い出す。
そんなに遠い距離でもないので来てもおかしくないのだけれども……
「うん、お掃除終わり」
掃除機の電源を切って、充電器にもなっている壁かけのホルダーに立てかける。
空気の入れ替えのために開けていた窓を全て閉めてから自分の部屋に戻ると、リビングでハーブティーの茶葉を取り出してお湯をゆっくりとかけていく。
部屋の時計を見ると、短針が9を指している。
いつもなら奏真さんはまだ寝ている時間だった。
「今頃奏真さんは学校で何をしているのかな……」
大きな欠伸をして先生に怒られていなければいいけど……
ハーブティの香りと味を楽しみながらのんびりしているとインターホンの音が鳴り出した。
「誰だろう……こんな時間に?」
まさか、奏真さんが帰ってきたとか……?
ドアホンの電源をオンにすると画面には見覚えのある帽子を被った男性が大きなダンボールを持っている姿が映し出されていた。
「お世話になります、ヤマネコ宅急便です!」
「月城様ですね、お間違えなければこちらにサインをお願いいたします」
配達員の方に言われる通りに伝票のサイン欄にハンコを押す。
「ありがとうございます、こちらですね」
ハンコがあるのを確認した配達員の方は持っていた紙袋を私に渡した。
「それでは失礼いたします、またどうぞよろしくおねがいします」
被っていた帽子を取って一礼をすると、その場を後にしていた。
段ボールをリビングに運び、カッターナイフを使って開ける。
「あっ……!」
ダンボールの中には綺麗にたたまれた大きなリボンが特徴の制服と学校指定のカバンが入っていた。
サイズ合わせをしたのが6月頃なので2ヶ月ぶりの再会となる。
制服を取り出して寝室に行き、鏡面台の前に立ち、制服を体に合わせる
サイズ合わせの時にも思ったけど、制服のデザインがすごくいいと思える。
……私にあうかどうかは別として。
制服を合わた姿を鏡越しにみていると、ふと先ほど奏真さんの部屋の寝室でみた雑誌の一枚が頭の中に浮かびあがってくる。
「……そうだ!」
ふと、頭の中に思いついたことがあり、スマホを取り出してLIMEを起動させて奏真さんにメッセージを送るのだった。
『天気がいいですし終わったらお出かけしませんか?』
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【あとがき】
お読みいただき誠にありがとうございます。
明日もお楽しみに!
■作者の独り言
夏休みのこと書いてますが世間は涼しくなりつつ・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
読者の皆様に作者から大切なお願いです。
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