サンダーランド王国は大丈夫なの?


「あり得ないだろう!今が好機なんだぞ!カゾーリア王国軍は疲弊していた。実際にグリーンヒルで我らはカゾーリア王国軍を退けたんだ!レッドヒルはベルフォール帝国軍に戦果を取られてしまったが、我らだけでも勝てた!このまま攻め続ければ国から追い出せたるんだぞ!」


 マーヴィン叔父さんは激高している。でも激高の理由は納得がいく。僕も同意だ。ベルフォール帝国軍の大勝利でカゾーリア王国軍は壊滅状態になった。このまま追撃すればフレーザー領も取り戻せたはずだもの。

 なのに、グリーンヒルの戦いではサンダーランド王国軍は不在だった。と、いうか誰一人いなかった。後方待機もしていなかったんだ。

 見物していたボクが言うのだから間違いない。

 なぜならフォレット家の軍は自領に引き上げたからだ。マーヴィン叔父さんが急に呼ばれたからなんだって。

 ボクはグリーンヒルの戦いでのカゾーリア王国軍壊滅を報告しようとアリスバリーに向かった。ここはフォレット家の領地であり、王都へ続く唯一の道がある領地でもある。フォレット家が王家の盾と呼ばれている所以だ。

 そこでマーヴィン叔父さんの屋敷を訪ねたら・・・マーヴィン叔父さんの兄弟や縁者が大集結していた。凄いんですけど・・・。

 そして激高するマーヴィン叔父さん、無言で天井を睨んでいるアーサー叔父さんを見る事になる。

 二人の叔父さんを宥めているのはピーター叔父さん。この二人の弟で王都からの命令を貰ってきて説明していたらしい。

 

 二人の叔父さんが不本意になるのはとってもよく分かる。


 なんで・・カゾーリア王国との停戦が成立するのさ!

 

 二人の叔父さんは最初は信じていなかった。そりゃそうだ。戦況を見たらサンダーランド王国が優位なのは明らかだもの。報告もしていたそうだし。

 ピーター叔父さんが所持していた書簡は王家の封印がされていた。これは王家からの正式な書類だ。その内容はピーター叔父さんが説明した内容と一致していたんだ。

 

 ほんと信じられないよ。


 その書簡には他の事項についても書いてあったそうだ。

 フレーザー家は断絶が決定。一族の者は国外追放。王都に人質となっていたフレーザー侯爵の奥さんも同様に国外追放だって。

 フレーザー一族は国内で見つけ次第、国外追放するようにという命令が記載されたいたようだ。

 即捕縛よりは緩くなったかもしれないけど・・国内では生きていけないのだから厳しい事に変わりはない。サンダーランド王国を裏切った罰というのが王家の決定なんだって。嘘情報が確定してしまった。

 本当はトラジェット家がその罰を受けないといけないのに。証拠が提示できない。罪を問えない。・・・悔しい。

 

 それと停戦が成立したからフォレット家は速やかに領地に引き上げる事が命令されていた。

 カゾーリア王国軍の王都への侵入をフォレット家は防いだという功績はある。なんだけど・・恩賞は全くないそうだ。そんな事あるのか?たった今あるのか。過去にそんな事例はないそうだよ。

 

 フォレット家に関する事は以上のようだけど。ピーター叔父さんが独自に王都から仕入れて来た情報にボクは驚く。

 

 それはベルフォール帝国への報酬だ。

 ローレンツ地方を割譲が決まったそうだ。援軍のそもそもの条件だったそうだ。この土地は帝国に隣接している。且つ、フォレット家がいなくなれば王都への一本道的な土地だ。・・危なくないか?

 さらに、サンダーランド王国の王家から第一王子を帝国に留学させる事になったそうだ。・・これって人質という事だよね。

 細かい所だと他にもあったようだけど大きい話はこの二つなんだって。

 

 サンダーランド王国の王家は何考えているんだ?


 サンダーランド王国の現国王の人となりをボクは知らない。会った事もないもの。噂も聞いたことが無い。王都から出た事がないらしい。本当かどうかもわからない。そんなレベルだ。

 その国王があっさりとこんな決定を受け入れたんだ。唆されたとしても決定したのは国王になるもの。

 


 ボクは納得がいかないのでピーター叔父さんを見る。ピーター叔父さんは納得していないのはまるわかりだ。あちこち確認したから間違いじゃない情報らしい。いずれ正式に公表されるそうだ。


 もっと納得していないのは二人の叔父さん。

 マーヴィン叔父さんは頭頂にヤカン乗せたらお湯が沸くんじゃないか?と、思う位真っ赤になって怒っている。

 アーサー叔父さんはずっと天井を見つめている。後にピーター叔父さんに聞いたのだけど、これがアーサー叔父さんが怒っている時に見せるクセなんだってさ。・・分かりづらい。

 

 ボクも聞いて憤っているけどね。

 ・・・ふと気づく。

 

 フレーザー一族は国外追放。

 それってボクも適用されないか?養子だけどフレーザー家の家族である事は間違いないもの。養子の手続きは済んでいるのだ。次期当主の手続きが済んでいない状態だけだったぞ。


 やっば~い。

 

 今は諸々あってレイ・フォレットと名乗っている。

 名前だけであれば・・ばれない。と、思いたい。

 のだけど・・・。不安になって比較的冷静そうなピーター叔父さんに聞く。ピーター叔父さんはボクが知っているフォレット家の男連中の中で一番話しやすい人だ。

 

「ピーター叔父さん。ボクってここにいると迷惑かけるよね?だってボクはフレーザー家の養子だよ」

「ん?ああ、そうか。そうだったな。でも大丈夫だろ。今はレイ・フォレットだろ?」


 面倒くさい空気から逃れたいのかボクの質問に優しく応えてくれる。でも、いっつもこうだけどね。

 

「フェリックス・フレーザーは捕縛対象として手配されるよね?」

「どうだろうな?そもそもレイは髪と瞳の色を元にもどしたんだろ?それはフェリックス・フレーザーの身体的特徴とは一致しないんじゃないかな?」

「お。ああ~」

 

 ・・成程。こっちに来てから染めるのをやめたんだった。・・忘れてた。ちょっと安心するボクを見てアーサー叔父さんは続けてくれる。


「追放となっても・・例えばセシリア嬢だったかな。彼女はおそらくフレーザー領内にいるんだろ?あそこは今はサンダーランド王国じゃなくなっている。だから国外追放は成立だ。万が一になったらレイもフレーザー領にいけばいいさ。そこで暴れて領地を取り返すのもありだと思うよ」

「ああ~、そういう考えもあるね。確かにフレーザー領は取り戻さないといけないもの。フレーザー侯爵やセシリア様の消息を確認するためにもいかないといけないね」

「兄貴は言ってなかったようだけど。レイはフォレット家の一族にする事で手続きが進んでいるよ。妹の・・ブレンダの子供だしな。どっかの家から離縁されて戻って来たという設定にしている」

「何それ。そんな強引な事認められるの?」

「問題ないんじゃないかな。その手続きは自分が進めているよ。既に内々には承認が取れている。だからから問題なしだよ」


 アーサー叔父さん・・・ドヤ顔しなくていいよ。

 フォレット家の一員として生活できるのなら問題ないのか。

 

 停戦が成立した以上暫く戦争は無いか。

 

 ボクはどう行動しようかな。


 フレーザー領にいって消息を探るか。

 フォレット家で色々学んでいくか。

 

 何かをやろうとしても子供のボクには色々力が足りない。

 


 どの選択肢を選ぶべきなんだろうか。

 

 

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