サンダーランド王国編
やっぱり異世界かも
ちっこい手。
見慣れているような。見慣れていないような。
その、ちっこい手で顔をペタペタと触る。
もちもち、ぷにぷにだ。
鏡がないから顔は分からないけど。僕の顔じゃなさそうだ。
でも、知らない訳でもなさそうだ。
加えて・・部屋の様子。これは記憶にある部屋に全く該当しない。
・・いや。
違うぞ。
違う。
こっちが今の僕じゃない。
いや?
こっちが今のボクなのか。
どうにもむずがゆい。
頭が・・・。上手くはたらかない。
・・・ああ、思い出してきた。
ボクはフェリックス。
今年で8歳になった。
父はスチュアート・トラジェット。
カーライル地方を治める領主だ。爵位は伯爵・・だったかな。
父は領地内の魔物討伐や隣国の侵攻対応で殆ど会う事は無い忙しい人だ。
母は弟を産んだ翌年に亡くなった。5年前になる筈。
そうだ。
そうだった。
長男であるボクはいずれはこの地方の領主になる。
だから領内の勉強や自分の鍛錬の勉強を一杯しているんだ。
昨日だって。
え?
・・・昨日?
何したっけ?
あれ?
おかしいぞ。
さっきの記憶は違う。
この記憶は一体何なんなの?
見知らぬ世界。その記憶。
なんでこんな事を知っているんだ?
そこでボクは病気で苦しんでいたらしい。
どうして?
いいや、違う。
僕は・・・・・。
ボク・・・は。
「・・・坊ちゃま。お気づきになられたのですか?」
う・・。
あれ?
ボクいつの間に。眠ってしまったんだろう。
あれは・・夢だったの?
まだ眠たい。目を擦りながら頑張って目を開ける。
なんでか分からないけどボクはベッドの上でうつぶせになったまま寝ていたみたいだ。
ラベンダーのような色の布団から抜け出し、その上にに顔を突っ込んでいるんだもの。でもいい香りがするなぁ。
でも、なんて寝相なんだろ。ボクこんなに寝相が悪かった事ないぞ。
そんな事を思いながら声のする方向に顔を向けると。
ブルーブラックの髪。それをいつも通り後ろで束ねている。いつもの艶やかさだ。
大きなグリーンアイの瞳は今日も綺麗に澄んでいる。
だけど・・整った眉は心配そうに寄っているね。
ああ・・・クレアだ。
今は御仕着せ服を着ているから、勤務時間だね。
そっか、起こしに来てくれたんだ。
あれ?でも、なぜそんなに心配そうな顔しているの?いつもは元気じゃん。
そういえば昨日は・・・?
あれ?
あれ・・・?
「・・クレア。あのさ、ボク何かあった?」
恐る恐る聞いてみる。どうにも昨日何したか思い出せない。
「ああ、よかったです。何日も目を覚まされないから皆心配していたのですよ?お医者様も原因が分からないとおっしゃいますし」
クレアの安心したような声を聞いたけど、逆に僕はビックリする。
え?ボクずっと寝ていたの?
寝ていた・・・。
・・病院で寝たきり。
・・白い部屋。
あれ?
あれは夢じゃ・・・。
頭が混乱する。
一体何が?
「ボクさ、一体どうなっていたの?今混乱して何がなんだかわかんないや」
「ええ、そうでしょうね。その前にお加減はどうですか?おかしな感じはありませんか?」
クレアに布団を掛けられ再び寝かされる。
なんか記憶が怪しいけど。体調は・・・うん、大丈夫そうだ。
「・・大丈夫だと思うよ。でもさ、なんでこうなっているのか分かってないんだよ。これっておかしな感じかな?」
「まずは良かったです。念のため体調については後程お医者様をお呼びして診て頂きましょう。それと2日前に何があったのか覚えてられませんの?」
「・・・2日。そんなに寝ていたの?」
「そうなんですよ。呼吸も弱く、顔色も凄く悪かったのですよ。本当に心配したのですよ」
そうなんだよね。2日前か・・・。何していたっけ?2日前といってもボクにとっては昨日になるんだろうか。よく分からないや。
「えっとさ・・・お昼からエイブラム爺の講義をクレアと受けていたよね?それが終わってから散歩しようとして・・」
「はい。厩舎に向かう時に突然何も言わずに倒れてしまったのですよ。クレアは本当に焦りましたよ。それにお姿まで変わられるから。本当に心配しました」
ああ・・なんとなくだけど覚えているぞ。そうだった。突然意識が途切れたんだった。
やっと少し繋がって来た。それにしても・・あの夢は。
いや、その前に。
「姿が変わったって?どういう事?」
「ええ、そうでしたね。それは後程ご説明します。まずはお医者様を呼んできますね。そのまま大人しく寝ていてくださいまし」
気になる事を言ってクレアは部屋を出ていく。
もう本当に何がなにやら。
突然意識を無くして・・・変な夢見て・・・2日経過しただって。
一体何が起きたんだろう。
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