これ、どうぞ
お父さんらしき人が、子供達二人に何かを言っている。
「これどうぞ」
女の子は、ニコニコ笑って千秋にハンカチを差し出した。その後ろを、転けながらヨチヨチと男の子が歩いてきてる。
「あ、ありがとう」
「泣かないで、よしよし」
そう言って、女の子は千秋の頭を撫でる。何だろう?凄く懐かしい二人…。それと同時に私は、安心していて泣いた。
「よしよし」
私も女の子に頭を撫でられた。
「雪那、優しいね」
「うん」
お父さんが、近づいてきて千秋を見つめる。
ヨチヨチと歩いてきた子を抱えている。
「大丈夫ですか?」
「はい」
千秋は、涙目を向けている。
「今、幸せですか?」
突然、千秋はその人に言われていた。
「はい、とても」
そう言った千秋の顔を見つめて、「よかった!」と笑っていた。
「そちらは?」
「俺も幸せですよ」
「パパー、せつなママんとこ行く」
ママと呼ばれた女の人が遅れてやってきた。
「行っておいで」
「はーい」
女の子は、走って行ってしまった。
「また、いつか!会えたら」
「はい、さようなら」
「さようなら!恭介、バイバイは?」
「パー、パー」
それを見て、千秋はさらに泣いてる。男の人は、子供を連れて女の人の所に戻っていった。
「素敵な家族だね!知り合いだったの?」
私は、見つめながら千秋に尋ねる。
「俺達じゃ、あんな風にさせれなかった」
千秋は、そうボソっと呟いた。
「どういう意味?」
「何でもないよ!帰ろうか?」
「うん」
そう言って、千秋は立ち上がった。私の手を繋いでくれる。
「知り合いだったの?」
「ああ、昔!ちょっとね」
「素敵なパパとママって感じだったね!私達もああなれたかな?」
「どうだろうね!でも、俺は、今が一番幸せだよ」
「本当に、本当?」
「本当に、本当だよ!」
「私も、少しだけ子供できなくてよかったって思う気持ちがあったりするの」
「それなら、それでいいんじゃないか?」
千秋は、そう言ってニコニコ笑ってくれる。私は、千秋が笑ってる姿を見つめるのが好きだった。
「私は、千秋が幸せならそれでいいよ!」
「俺は、幸せだよ!凄く、幸せ」
「それなら、他に何も望まないよ」
私は、千秋の手をギュッーと握り返した。千秋は、ニコッと笑って助手席を開けてくれる。車に乗ると千秋は、元来た道を戻っていく。私は、その景色を見つめながら幸せって思っていた。ずっと、欲しかった幸せを私は手に入れたんだと思った。望みが叶った気がしていた。
「今日は、外食しないか?」
「いいよ」
「何食べようか?」
「何でもいいよ」
私は、この幸せを手放す事はけしてしないから…。
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