連れてきた場所

「千秋、何でこんな所に来てるの?」


「懐かしいなーって思っただけだよ」


そう言いながら、千秋はボロボロのアパートに来ていた!


「住みたいの?」


「嫌、二度とごめんだわ」


「千秋、住んでた事あるの?」


「えっ!あっ!小さい時に友達がさ」


「あー、そう言うことね」


「うん!行こうか」


「うん」


そう言いながら、千秋はあるマンションの近くに私を連れてきた。


おばさんが現れた。


「何か用?」


「いえ」


「もう、誠!どこに消えたのよ」


千秋が、何故か安堵の表情を浮かべている。


「行こうか」


「うん」


そして、次に連れてこられたのはアパートだった。でも、ボロボロじゃない。

現れたのは、男の人と女の人。何故か、胸がザワザワする。


「葵のやつ!消えやがったな!300万なんてすぐになくなっちまったよ!お前もアパート行くぞ」


「わかってるわよ!でも、何回行ってもいなかったでしょ?」


「絶対、この街にいるんだからよ」


そう言いながら、通りすぎていく。胸が締め付けられる。千秋は、やっぱり安堵の表情を浮かべている。


「千秋、知り合い?」


「知り合いじゃないよ」


「何か、ホッとした顔してるから」


「そうかな?気にしないでよ!じゃあ、最後に行こうか」


そう言って、車に乗り込んだ。車から、流れる景色を見つめながら私は、千秋と生きる幸せを感じていた。

赤ちゃんに縛られて、何も見えなかった日々を私は抜け出していた。


「ついたよ」


そう言われて、車から降りた。随分と遠くにきた。

親子連れが、公園で遊んでいる。


「そこのベンチに座ろうか?」


「うん」


私は、不思議に思いながら千秋を見つめる。千秋は、ニコニコと親子連れを見つめている。


「やっぱり、諦められないんだね」


私は、泣きそうな顔で千秋を見つめて言った。


「違う、違う!あんな風になれるなら、子供がいても幸せだったかな?って」


「千秋ならなれたよ」


「そんな事ないよ」


親子連れは、帰っていく。


「千秋なら、優しいからなれたよ!絶対!ごめんね。パパにさせてあげられなくて」


「嫌、いいんだよ!俺は、充分過ぎる程、経験したから」


「何言ってるの?」


「あっ!違うよ!親戚の子供とかさ」


「あー、七瀬さんの子供ね」


「そう、そう」


千秋は、何故か焦っていて可愛かった。


「何か、千秋面白い」


「ごめん、何か!さっきから、テンパってるよな!俺、こんな幸せな日々送れるなんて夢みたいだったから」


「千秋は、いつも幸せなんだと思ってた」


「そんなわけないよ!でも、今は夢みたいに幸せだよ」


千秋がボロボロ泣き出した時に、新しい親子連れが現れた。


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