慰謝料…
「少しだけ話せますか?」
「あっ、はい」
私は、千秋を自販機近くの椅子に連れてきた。
「珈琲のみますか?」
「紅茶がいいです」
「わかりました」
千秋は、そう言ってミルクティーを買ってくれる。缶でもよかった!久しぶりだから…。
「入院費は、払わせていただきます」
「すみません。貧乏なので」
「いえ、お子さんがいて大変でしょうから!退院は、いつですか?」
「明日のお昼です」
「わかりました。それまでに、来させてもらいます」
「宜しくお願いします」
私は、そう言うと千秋の耳元で話した。
「えっ!何で?それを…」
「何ででしょうか?」
そう言って、もう一度千秋の耳元で話した。
「それって!信じられない。えっ?そんな事あるはずない」
「じゃあ、これは?」
「あ、葵なのか?じゃあ、あっちのは?」
「ねぇー、千秋」
私は、千秋の耳元でもう一度話しかけた。
「わかった!何とかするよ」
「それとね…」
「それは、無理だよ!そんな事出来るわけないだろ?」
「どうして?中身は私よ」
「そんな事、関係ないよ」
「じゃあさ………」
「わかった!それなら、協力するよ」
「本当に?」
「うん」
「約束よ!千秋」
「うん」
「そのかわりね!」
「そ、それは…」
「じゃないと、ねっ?わかるでしょ?」
「わかった!約束する」
そう言って、千秋は私と指切りをしてくれる。田辺葵さん、あなたは
「あのね」
「何?」
「捨ててもいいから、母乳買ってくれない?」
「えっ?」
「私ね、そうやって生計を立ててるのよ!軽蔑した?」
「いや……」
「直接飲みたいって思った?」
「そ、そんなわけないだろ」
「千秋、一袋2500円で買ってくれない?お小遣い5万円はあるでしょ?」
「あ、葵」
「そうじゃなかったら、娘と息子が飢え死にするのよ」
千秋の目が、右に左に動いている。
「わ、わかった!買うよ」
「じゃあ、明日退院してから家の近くの公園まで送ってくれない?」
「わかった」
「ちゃんと、持ってくるから!何袋がいい?」
「あっ、えっと…。それなら、二万円分」
「わかったわ!捨てていいからね!千秋」
私は、そう言って紅茶を開ける。ゴクゴクと飲む私を千秋が見つめていた。
「ぼ、母乳ってお風呂にいれたりしたらいいかな?」
「さあ?好きにしたら」
「す、捨てるのは勿体無いから」
「だったら、牛乳変りに飲んだら?」
「そ、それは違う気がするから…」
千秋は、複雑そうな表情を見せる。
「じゃあ、明日ね」
私は、気にしないフリをして紅茶を飲み干した。
「さよなら」
「気を付けてね」
そう言って、千秋のネクタイを直した。いつもの癖で、耳の後ろを撫でてしまった。
「あ、葵」
「さよなら、磯辺さん」
私は、そう言ってニッコリと微笑んでから離れた。
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