重なりあうBLUE
葵………
「葵、葵、大丈夫なのか?」
う、うん!
何が起きてるのか、私はゆっくり目を開ける。
「千秋……」
やっぱり悪い夢を見ていたのよ!
「千秋、千秋!」
千秋は、私を見つめている。
「包帯でわかりませんか?指輪は、こちらの方が持っていました」
「あっ、間違えてしまいました。すみません」
「千秋?」
「すみません、間違えてしまって」
千秋は、私に深々と頭を下げる。
「行かないで、千秋」
「もうすぐ、ご家族が来られますよ」
来るわけないじゃない!来たとしてもいらないわよ!
「目が覚めましたか?よかったです」
看護士さんが、私の点滴を変えてくれる。
「田辺さんは、まだ軽かったですが…。もう一人の方は、結構出血してましたから!まだ、目が覚めないかもしれないです」
私は、千秋と前の私を見つめていた。
「葵、目を覚ましてよ!お願いだよ!俺を一人にしないでよ」
私は、うっすらとしか開かない目で千秋を見つめいた。
磯部葵は、愛されている。そう、私だった肉体は千秋に愛されている。
【何で?何で?わかってくれないの千秋】
涙が流れてくる。どうすればいいの?そうだ!母乳を売り付けるか?いや、それとも誘惑をするか?
色んな事を考えながら、私は千秋を見つめていた。
「どうなってんだよ」
「ママぁー、大丈夫?」
しばらくして、恭介君を抱えながら夫が現れた。雪那ちゃんも一緒だ!
「何してんだよ、葵」
腕を骨折して、おでこと鼻の骨が折れているらしい私。(先ほど、聞こえていた)
そんな私を全く気にする事もなく恭介君をどかりと置いた。
「痛い」
「うっせーな!一日中泣き続けるから、隣が児相に電話したんだぞ!葵が、二人を起きっぱなしにして出掛けるのがわるいんだろ?俺の方が、何十倍も痛いんだぞ」
お前の何が痛いのだ?
私は、ちらりと千秋を視界にいれる。「何だ、この旦那は?」そう言いたそうな千秋がいる。
「すみません。こちらで、大声は困りますよ」
看護士さんが、止めにやってくる。
「うっせーな!葵、保険入ってないんだから!ちゃんと相手から慰謝料もらえよ!兎に角、今日は母さん所に行くから!わかったな」
「はい」
そう言って、二人を連れて行く。正直、いなくなってくれてホッとしていた。
「大丈夫ですか?田辺さん」
「はい、大丈夫です」
そうか!慰謝料か…。私は、磯部葵から慰謝料をもらえばいいのだ。
「明日、警察が話したいそうですが大丈夫ですか?」
「はい」
「では、明日お話をお願いします」
「あの、一緒に落ちたのですよね?」
「はい」
「そうですか…」
私は、千秋を見つめていた。
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