おかしな家族

家に帰ると、雪那ちゃんはお菓子をまた食べに行った。私は、恭介君をベビーベッドに寝かせた。


タナベアオイを知りたくて、家の中を調べる。小さなフォトブックを発見した。雪那ちゃんを産んですぐは幸せそうな写真で溢れていた!しかし、寝返りをしました。と書かれたページを見るといっきに5歳以上老け込んだのがわかる。

まだ、わからないことだらけだ!他の引き出しを開ける。田辺という漢字だと言うのが請求書の文字でわかった。


田辺誠たなべまこと、誠実の誠で誠!これが、田辺アオイの旦那の名前だ!どこから、どう見ても不誠実な男だった。なのに、誠だなんて笑ってしまう。

別の請求書の紙に、田辺葵と書かれていた。私と全く同じ漢字で名前だ!

もしかして、関係ある?


私が、彼女の人生と変わった理由。何故、私は彼女の人生と変わったの?

嫌、そんなオカルトみたいな話があるはずないわ!

これは、悪い夢なのよ!

目覚める為には、千秋に会わなくちゃいけないのよ!


「ママ、眠たい」


「寝ていいよ」


「うん、おやすみなさい」


「はい」


どう見たって寝心地の悪い煎餅みたいな布団に雪那ちゃんは、寝転がった。


貧乏にもほどがある。こんな生活をしていたら、絶対に駄目!私は、千秋の居場所を頑張って思い出そうと繰り返す。


「ただいまー」


「お帰りなさい」


「今日はな!増えたわ!やったな!葵」


そう言うと、田辺誠は私に5万を渡してきた。


「家賃、明日だから払っとけよ!それで」


と言った!これは、彼女が稼いだお金だ。あんな小さな体で、嫌な思いをして!


「何だ、その目は?」


そう言って、私は顎を掴まれる。


「何もないわ」


「あー、そっか!久しぶりにしたくなったんだな?」


「えっ?しないわよ」


「うっせー!お前は俺の言うこと聞いとけ」


「やめてよ、離して」


「うっせー、黙れ」


千秋とは違って、乱暴だ!気持ち悪い、何なのこの男!全てが、自分勝手っで吐き気がする。


「よかったよ!葵」


終わると髪を撫でられて、私は泣いていた。

何なの、この男……。

女を見下してる。私を性処理の道具にしか見ていない。


千秋に会いたい。千秋との生活に戻りたい。こんな生活は、嫌よ!

千秋……。千秋の声が、仕草が、優しさが思い出される。千秋は、こんな乱暴な事を絶対にしない。帰ってきたら、必ず私の体調を気遣ってくれる。

千秋に会いたい。

千秋に会わせてよ!

どうして?千秋となら子供が居ても幸せだったわよ!こんな場所を私は、望んでなどいなかったわよ!

千秋に会いたいよ!

泣きながら、眠っていた。


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