彼女の話2ー1

不幸の始まり

暫くして、インターホンがなった。


「はい」


「ほら、来たぞ」


さっきの男がおじさんを連れてきていた。


「ちょっと」


「金もらったから行くぞ」


そう言われて、私は引っ張られていく。


「やめて」


「うっせー、口答えすんな」


そう言われて、連れていかれる。


「どこに行くのよ」


「いいから来い」


そう言われる。ボサボサの頭に、ブラジャーもつけていないパジャマ姿だ!赤ちゃんを抱えて、連れてこられたのは一台の車だった。


「なに、ここ」


「さっきのおっさんの車だよ」


「それで?」


「一時間待機するだけ」


「あの子は?」


「雪那は、お前のスマホで見とけよ!挿入されないようにな」


そう言って、男は私にスマホを渡した。


「恨むなら、お前の親父を恨めよ!俺の足をこんな風にしたんだからよ」


私は、その言葉を無視するようにスマホの中のカメラのアプリを押した。


「Wi-Fiつけれんのも、雪那のおかげだぞ!一回10万も稼いでくれるんだからよ」


その言葉を無視して、カメラを凝視していた。


【なんて、酷いことを…】口に出そうとして、やめた。


我が子は、小さな口で一生懸命に奉仕しているではないか!!


酷いなんて事をするの!


「葵もやらされてただろ!18歳になるまで」


私が、こんな酷いことをさせられていたの?!


私は、娘が50を過ぎたおじさんに奉仕している姿を泣きながら見つめていた。


私が切望して欲しかった家族の姿は、ここには存在してなどいなかった。


確かに、赤ちゃんはいる。


恭介君と呼ばれた男の子を今腕にしっかりと抱き締めているし、雪那ちゃんという可愛い女の子もいる。


でも、違うのは…。旦那は働いていないし、ボロアパートに住んでいる、その上、娘に売春をさせて生計をたてているのだ。


「私が、働くからやめさせて」


「はあ?お前がいったんだろ?私じゃ稼げなくなったって!パパ活、無理になったって」


パパ活?私もそんな事をしていたの?


「普通に働くから」


「無理に決まってんだろ?お前の両親に毎月20万渡してるんだぞ!どうやって、普通に働いていけるんだよ」


「に、20万!どうして、そんなに」


「そんなの知るかよ!ただ、渡さなかったらお前の親父が来て、俺を殴るじゃねーかよ!だから、稼ぐなら50万以上稼げよ」


「ご、50万!!そんなの普通に働いて無理に決まってるじゃない」


「だから、言っただろ?普通には、無理だって!ちゃんと見とけよ!カメラで」


「わかった」


私は、カメラを見つめるしかなかった。50万なんて無理よ!千秋のお給料だって、30万だったわ!



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