何でこんなに幸せなの
「紅茶があるじゃない!しかも、アールグレイ!この、ミルクティーが最高に美味しいのよ」
昔、同級生の南川さんちで飲ませてもらったから知っている。私は、ステンレスのお洒落な電気ケトルにお水をいれてスイッチを押した。
食器棚を見つめると葵さんが、大切にしている紅茶を入れるセットを取り出した。
「これ、高級な所の紅茶セットじゃない!」
私は、ニコニコしながら茶葉をいれる。
冷蔵庫を開いて、牛乳を取り出した。ミルクを入れる器をつかんで注いだ。角砂糖が宝石のような小瓶に収まっているのを見つめていた。
カチッ……。
音がして、電気ケトルをとる。コポコポとポットにお湯を注いだ。アップルパイのラップを外して、アイスクリームを添えた。
カチャカチャとカップとソーサの音を聞きながらダイニングテーブルに紅茶セットとケーキを運んだ。
何て素敵な時間なの!
ポットを開けて、茶葉が蒸らされているのを確認して私はカップにトクトクとそれを注いだ。
「綺麗な色」
宝石みたいな小瓶から、角砂糖を2ついれて、ミルクを少しだけいれる。カチャカチャと、混ぜれば…。
美味しそうなミルクティーが出来上がった。
いい感じに、アップルパイに添えられたバニラアイスが溶けたのを確認して…。
「いだきます」
そう言って、口にいれる。
「あー、幸せ」
この家が、物凄く幸せなのがわかる。私は、ここにいたい!磯部葵さんは、どうしてこんな幸せを手放したのかしら?
私は、不思議に思いながらケーキと紅茶を交互に食べた。食べ終わって、テーブルに合った彼女のスマホを取り出した。指紋認証で、スマホを開く。SNSを開くと友人や親戚の子育ての投稿で溢れかえっている。
「あー、これで!赤ちゃんが欲しかったんだ!」
私は、紅茶を飲みながら呟いた。
「千秋さんとの生活を捨ててまで、欲しいものかな?」
ないものねだりを人間は、すると言うけれど彼女はそうだ!普通の暮らしと綺麗な顔!他に何もいらないじゃない。
子供が全員幸せだって、誰が決めたの?
子供がいる人間が全員幸せだって誰が決めたの?
私は、スマホを持ってソファーにゴロンと寝転がる。
こんなにダラダラ出来るなんて、幸せじゃない。あくせく働く事もなく!普通にキラキラしたアクセサリーをはめてる。高い紅茶セットで紅茶を飲んで、ご飯や洗濯までしてくれる旦那さん。
私は、磯部葵さんのblogを見つけた!そこには、彼女が妊娠をどれだけ心待ちにして願っているかが書かれている。
「赤ちゃんなんかに振り回された、あなたの人生は勿体ないね」
私は、テーブルにスマホを置いて目を閉じる。
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