第7話 猫とツンデレ

「おー、よしよし」


 休日。

 学校が休みだったので、図書館で勉強でもしようとでかけたところ。


「にゃー」


 俺は捨て猫に出くわした。

 見て見ぬ振りをするのは簡単だけれど、懐かれてしまっては仕方がない。

 抱きかかえて、どこか引き取り手がいないかどうか、さまよう。


「にゃーにゃーにゃー」


 お、腹でも減ったのだろうか?

 しかし何か適当なものを食わせてしまっても平気かどうか心配だ。

 と、そんなことを考えていたのだが。


「あら、こんな休日にまで平民に会うなんて、ついてないわ!」


 前方に数メートルの位置から、高慢ちきな女が近づいてきた。

 同じ学校、同じクラスの女子高生だ。

 名前は高宮……なんとか。

 クラスメイトだが、接点はない。


「優雅に図書館で読書をしたかったのだけれど、ケチがついてしまったじゃない」


 しらねーよ。

 それは俺のせいか?


「ん? そのみすぼらしい猫はなんなのかしら?」


 おっとそうだ。

 猫だ猫。

 俺は高宮に提案してみることにした。


「なあ、おまえんちって確か金持ちなんだろ? 猫とか犬とか飼ってないか?」


 高宮はくいっと頭を上空に向かって傾けて、上機嫌に。


「猫なら4匹、犬なら3匹飼っているわ。どれも血統書つきのね!」

「血統書?」

「平民にはわからなかったかしら? 混ざり気のない純血種ということよ」

「ふーん」


 ぶっちゃけ、それそんなすごいの? って感じだがちょうどいい。


「この猫、捨てられてたんだよ。お前んとこで飼ってやってくんね?」

「見たところ、雑種みたいね。私は飼いたくないわ」

「広い心を持とうぜ」

「早とちりしないでちょうだい! あんたがうちに来てその子の世話をするというのなら考えてあげてもいいわよ!」


 え、それって……。


「そ、そんな疑惑の眼で見られても変な意味はないのだからね!」

「変な意味って?」

「前から気になっていた男の子といっしょに暮らせるとかって、なに言わせんの!」

「おまえが勝手に言ったんだろ!」


 なに、こいつ。

 俺に惚れてんの?

 え、いつどこでどんなことして、そんな感情を抱かせたわけ?


「こ、こここ、混乱しているようね!」

「させてんのは誰だよ」

「いいわ、思い出せないのなら思い出させてあげましょう……あれは遡ること」

「あ、そういうのいいから」


 抗議の声をあげる高宮を放っておいて、俺は猫の様子を見る。

 にゃーにゃー鳴いている。

 やっぱり何かあるんじゃあ……。


「ほら! ペットショップに寄って食べ物を買ってからうちに行くわよ!」

「へえへえ」

「返事は、はい!」

「はいはい」


 こうして俺は猫の世話をするために、彼女の家でお世話になることになった。

 なお、うちの親も高宮の親も、なにも言ってこなかったのが返って怖かった。


「にゃーにゃー」


 俺の気も知らずに、猫は無邪気に高宮邸で遊んでいる。

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