川の向こうの12たち

ぱっつんぱつお

内側の話

 サニーイエローのファブリックな10羽の兎たちがオフロードバイクで山道を登っていた。

 ゴーグルにヘルメット、ステッチの効いた長い耳をたなびかせ、風を創りながら誰が一番速いか競争している。


 その様子を木の上で眺めるのは2匹の猿だ。一方はキチンとした毛皮を纏っており、もう一方は兎と同じくファブリック。鮮やかなアクアマリンのカラーでお目々はキュートなパールのビジュー。

 よく見れば木にはコットンキャンディーカラーの蛇が巻き付いていて、周りにもファンシーな動物たちが各々好きなことをしながら過ごしていた。

 森の中の其処は、まるで女の子の部屋の中。


 兎たちがレースをしている最中、一方山に流れる豊かな川の上では、アリスブルーの鼠とピンクフラミンゴの龍がホッピングなジャンピングで遊んでいた。

 尻尾をバネのように、水の上を走るように、くるくると右へ左へ、ときに回転しながら実に楽しそうだ。

 2匹の水の波紋は徐々に広がりぶつかると、そこからまた広がっていく。

 川の端や岩にぶつかればキラキラと飛沫が散って、それを起こすのが2匹の楽しみ。



 しかし──、楽しく水の上を跳ねていた2匹の目の前に、人間が居る。

 川の中洲で何をやっているのかゲラゲラと耳に障る声で笑い合いながら騒いでいる。

 中洲の周りにはそれはそれは美しい白い花が咲いているのだが、汚れた手で触れあろうことか千切り、煩いカメラで写して美しい場所を汚している。

 自分達と同じように楽しんでいるのかもしれないが、彼等は契約を破った。

 破ったから、食べた。

 ピンクフラミンゴの龍はガブリと大きな口で、見た目に似つかわしく無い鋭い牙を剥き出して。食べた。

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