第293話 鳴かぬなら鳴くまで待とう時鳥、でも恋はタイミングが大事なんだと云うお話。

【由利凛side】


「なんですとぉぉーー !」


 教室で蛍先生とアザゼル先生が仲良さそうにスーパーで買い物をしていたと、 星華ちゃんと秋穂ちゃんが話しているのを聞いてしまった嵐お兄ちゃんが驚愕していた。


「嘘だよな、ジョークなんだろう、星華、秋穂 !」

 二人は顔を見合せて、


「本当だよ、嵐くん」

「うんうん、わたし達見ちゃったんだよ、この目で !」


 星華ちゃんが証拠とばかりにスマホで撮影した動画を見せてきたのじゃ。

 そこには、しっかりと映っていた……幸せそうな顔をしている蛍先生と面倒そうにしながらも蛍先生を気遣うアザゼル先生の姿が……


「何故、動画なんか撮っているんだよぉ~ 」

 声を震わせながら、無駄な抵抗をする嵐お兄ちゃん。


「写真を撮ると、シャッター音がして先生達に気付かれてしまうからだよぉ~、嵐くん」


 嵐お兄ちゃんに抗議され、半泣きに成る秋穂ちゃんを見て明日菜ちゃんと英里香ちゃんが介入したのじゃ。


「往生際が悪いですよ、嵐お兄さま !」

「明日菜の言うとおり、自ら行動しない嵐お兄さまが悪いのですから、星華や秋穂を責めるのは筋違いですよ、嵐お兄さま !」


「グフッ !」


 妹二人の協力口撃は、クリティカルヒットに成ったようじゃ。

 すごすごと自分の机に向かい席に座り項垂うなだれる嵐お兄ちゃん。

 チャンスとばかりに嵐お兄ちゃんを慰め始める蝶子ちゃん。


 妾は、それを見てアワアワしている姫子ちゃんにアドバイスをすることにしたのじゃ。


「姫子ちゃん、チャンスなのじゃ !

 この温かいマッ缶マックスコ◌ヒ◌をプレゼントするのじゃ。

 今の嵐お兄ちゃんに何を言っても無駄じゃから話しかけないで黙っておくのが吉なのじゃ 」


 姫子ちゃんは、訳も解らずに妾の言われたとおりに黙ってマッ缶を置いて戻って来たのじゃ。

 嵐お兄ちゃんは涙を浮かべながら姫子ちゃんを見ている。

 姫子ちゃんには振り向かないように言ってから、次の指示を出す。

 落ち込んでいる時に蝶子ちゃんみたいにグイグイと自分を売り込みに行くのは悪手なのじゃ。


 クックックッ、この恋愛マスター由利凛。

 姫子ちゃんと嵐お兄ちゃんの仲を取り持って見せるのじゃ !


 星華ちゃんを推す明日菜ちゃん。

 秋穂ちゃんを推す英里香ちゃん。

 姫子ちゃんを推す由利凛こと妾。


 賭けの総取り、限定クリスマスケーキは妾のモノなのじゃ !


 ちなみに、伊緖ちゃんを推す恵利凛と由美子ちゃんを推すパラスちゃんは出遅れているから、早くも妾の勝利は決定したようなものなのじゃ !


 天界に戻ったらと呼ばれるかも知れないのう~ ♪



 ◇◇◇◇


【英里香side】


 あっ あざといわ、ユリリン !

『あざとかわいい』とひそかに男子生徒に人気のある由利凛。


 を可愛いと言う男どもの気持ちが理解出来ないのは、わたしだけ ?


 明日菜も由利凛を見て眉をひそめている。

 わたしと同じ知恵の女神と云っても女神アテナと、わたし達、女神エリスや女神ユリリンの知恵、策略は違う。

 孔明タイプの明日菜女神アテナに対し郭嘉タイプのわたし女神エリス程昱ていいくタイプの由利凛女神ユリリン


 でもそれで良いと思うように成ったのは人間に転生したお陰ね。

 女神時代には、ライバルである女神アテナの考え方を受け入れることは出来なかったけど、人間それも日本人に転生して考え方の多様性を理解出来るように成ったのは収穫ね。

 それは、明日菜女神アテナも同じようで不満はあるけど文句を言わないのが、その証拠ね。


 さて、愛の女神蝶子にだけは負けたく無いから、せいぜい頑張りましょうか。


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