第227話 陰陽師か保育士か ①

【嵐side】


 蛇武とか云う奴が居る所に向かっているが、こけるが何時になく真剣な顔をしている。

 何時ものオチャラケた雰囲気は吹き飛んでいる。


「なあ、海里。 今回の除霊がヤバいのは判ったんだが、そんなに大物の悪霊なのか ? 」


「周りに居る雑魚の悪霊でさえ奈良時代の悪霊なんや。

 そのボスなんだから、只者ではないのは判るでしょう。

 たぶん、嵐くんでも知っている……


「二人とも集中しろ !

 もう、ここは敵地なんだぞ、油断していたら命が幾ら有っても足りないからな !」


 こけるに注意された訳では無いが、確かに嫌な気配がしている。

 ヘパイストスから、いろいろな除霊グッズを借りて来て良かったぜ。

 ……しかし、あの野郎……良く都合の良いアイテムを作っているよな。

 最近は、ジャンヌまでが巧のアイテム作りに協力しているから、ウチの蔵は巧の作ったアイテムで溢れている。


「はぁ~、カッコエエなぁ、こける君」


 海里が、こけるを見惚れているのがわかる。

 俺や海里が学生服やセーラー服なのに、こけるの奴は陰陽師の霊服を着ているのだ。

 それだけでも、こけるが一流の陰陽師だと判る……カッコ良いなんて思わないんだからな、俺は !


 ムッ、俺にも判るぞ、ララァ !


「そこだぁー ! 」


 ビシッ !


 巧から借りた霊銃を取り出して悪霊に撃った。

 鑑定ゴッド・アイは、こける達に神の転生者だとバレ無い為に封印中だから、代わりに腕時計型のスカウター悪霊探知機を付けているので丸わかりだ。


 グギャァァァ !


 悪霊の一体が消えた。

 流石、巧が自慢するだけはあるな。

 霊銃の弾には、明日菜女神アテナ英里香女神エリスパラス女神パラスの神力が込められているから、効果は抜群だろう。


「このバカ野郎 !

 見学する約束をアッサリ破りやがって!

 今ので、周りに居た悪霊達が集まって来たじゃないか ! 」


 グッ、確かにスカウターには周りから俺達に光点悪霊が点滅しながら向かって来ていた。


「海里 、結界を張ってくれ !

 俺は念を集中して、一気に蹴散らすから時間稼ぎを頼む ! 」


 こけるが海里に言うと、海里は懐から御札を取り出し


「 ウチに任せて 、ホの十六式、結界 ! 」


 俺達の周りに薄いガラスの様な壁が現れた。


「なあ、海里。 この光◌力バリアーみたいな奴は、大丈夫なのか ?

 前にも思っていたんだが、あのアニメみたいに簡単に 『パリン !』と割れたりしないよな ? 」


 すると海里が怒りながら、


「簡易式の呪文だけど、大丈夫に決まっているやろ !

 こける君が、スピード重視の為に開発したから威力は正式呪文のモノより劣るけど、充分に役に立つハズや ! 」


 俺達のやり取りを聞いた こけるが、


いつ なな ここ とお

 ふるえ ゆらゆら ゆらゆらと ふるえ 」


 両手を合わせた こけるが呪文を唱えるて、更に結界が頑丈なモノに成ったのが俺にも判った。


「いいか、海里の安全の為に張った結界なんだから、今度こそ余計なことをするなよ、嵐 ! 」


 釘を刺されてしまったが、俺がボス悪霊を倒してしまえば認めざるを得ないだろう。

 クッ クッ クッ、俺に出し抜かれた時に、こけるの奴は どんな顔をするかな。

 俺だって神なんだから、こけるに劣っているワケにはいかないんだ !


 そう言えば、さっき言いかけた言葉が気になるな。


「なあ、こける。 ボス悪霊の目星は付いているのか ?

 頼むから教えてくれよ 」


 こけるは頭をふりながら、


「俺の予測では神護じんご天皇の悪霊だと思っている 」


 ……あのぅ、こける君、俺はマニアックな日本史オタクじゃ無いので、説明プリーズ !

 陰陽師って、頭も使うなんて予想外だせ。



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