第43話嵐のごとくⅢ ⑤

【嵐side】


 クソゥ、 すっかり囲まれてしまったぜ!

 森に警戒しながら入って、動物系モンスターばかりに注意していたら、いつの間にか『トレント木のモンスター』に囲まれていた。

 どれが本物の木で、どれがトレントなんて判るかよ!

 VRMMOだから『ゴッドアイ鑑定』なんて使えないし、このままだとジリ貧だよな。


 火魔法が使えれば森で火魔法なんか簡単に倒せるのに使える訳無いだろう脳筋、俺達のパーティーで魔法を使えるのはアゲハだけだ。

 それも回復魔法だけだから攻撃には向かいんだよな。


水遁すいとんの術、水刃乱れ撃ち!」


 水魔法!

 水の刃が、次々とトレントを切り刻んでいく。


「さあ、ここは私達に任せて、今の内に戦闘から離脱して!」


 忍者! それと騎士や武士が乱入して来てトレント達の相手をしてくれている。


「スマン、恩に着るぞ!」

 俺は礼を言ってから仲間と、一緒に戦線から離脱した。



 ♟♞♝♜♛♚♙♘♗♕♖



 謎の忍者に助けて貰い、なんとか森の魔女から『薬』を受け取り帰り道に向かう処で


「ねえ、ケンシン。

 他のプレイヤーに助けて貰っても『クエスト失敗』には成らないの?」


 アゲハが心配そうに聞いてきた。

 一応は人に気を使えるくらいには、マトモに成っていると云う事からずっーと記憶が封印されている方がコイツ蝶子にも俺達にも幸せだと思う。


「 それなら大丈夫だ。

『お使いクエスト』の目的は、あくまで依頼を達成することで戦闘は、あまり関係が無いんだよ。

 もちろん、あからさまに手伝って貰えば違反に成るのかも知れないが、今回は偶発的に助けて貰った訳だから違反には成らないと思うぞ」

 ………説明ありがとう、サナダよ。


「帰りも気を引き締めていくぞ!

 トレントの存在も忘れるなよ、依頼人に依頼品を渡すまでが『クエスト』だ!

 レェッツラ・ゴオーだ!」

 かけ声をかけた俺を三人が、シラケた目で見ている。


「しょうがないだろう!

 お前達だって『トレント』の存在を忘れていたんだからよ!」



 ♔♟♞♝♜♛♚♙♘♗♕♖



 帰り道は、大したトラブルも無く無事にクエストをこなすことが出来た。

 NPCとは云え感謝されたことに良い気分に成った俺達は、成功を祝って祝勝会をすることにした。



「初クエスト達成を祝って、カンパーイ!」


「「「カンパーイ!」」」


 ゲーム内とは云え未成年だからジュースでの乾杯だ。

 バーチャルリアリティなんだからビールくらい良いと思うんだが運営は認めて無いらしい。

 まあ、いろいろとあるんだろうな、難しい事は判らないが。


「初クエスト達成おめでとう」

 スレンダーなお姉さんが来て俺達のことを祝ってくれた。


 ? 誰だ、このお姉さんは。


 俺が不思議そうな顔をしていたのが、可笑しかったのか笑いながら、


「ほら、『魔の森』で君たちを助けた『忍者』だよ、あたしは」


 忍者の格好をしていなかったお姉さんは、全然 忍んで無かった。


「あたしは『ライジング・サン』の副リーダーのクリス

 良かったら『友達申請』しても良いかな? 」


 ───それが、俺達とクリスの出逢いだった───

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