プロローグ
早朝、部屋の外からガン! と大きな音が
……やる事は山積みだし、朝起きるのが苦手な身としてはこれでいいのかもしれない。決めた時間には起きられるのだが、どうにも毎朝
〝前〟はむしろ朝は大得意で、目覚めもすっきりとしていたのだが。
先ほど聞こえた大きな音とは正反対の
窓を開けると
「……この光景も、もう当たり前のものになったわね」
私がいる二階の部屋の窓の真下には
遠い遠い、この世界に生まれてから触れる事すら出来なくなった、私が心の底から
シレーナと名付けられて生まれ、そして育ってきたこの世界。
日々を送る中で突然思い出した一人の女性の人生の
海に
けれどこの世界での私は、海に潜るどころか海面に触れる事すら出来ない。
窓の外から少し視線を外して部屋の中を見回す。一人で使うには十分すぎるほどの広い部屋には美しい調度品や絵画が
こぢんまりとしたシンプルな部屋、
この世界は中世
クローゼットを開け、中に並ぶドレスの中から装飾が少なめの物を探し出す。前世とは違う、重く動きにくい服にももう慣れた。
そして私は、前世の時からこの世界を知っている。
何もかもが違うこの世界に
私の立場は主人公と敵対する悪役
その結果、血の
実の父とその再婚相手の母、母の連れ子の義妹であるアンジュ。
そして婚約者のラティル
暮らしも
ただ一つの願望が
廊下の窓の外、遥か下の海に視線を移す。
「……泳ぎたい」
毎日のように
この世界は空に
科学ではなく
それでも……常に視界に入る場所、けれど絶対に触れる事が出来ない場所に焦がれ続けるあの水の世界がある。酸素ボンベから聞こえるシューシューという音も、耳元で聞こえる
普通の人間は絶対に潜る事の出来ない海だが、実はこの世界の重要資源の大半はその海の中にある。海の底から採ってきた魔力を
この世界には、自分の家がある島ごと海に潜る事が可能な
彼らは母なる海の
魔法は魔力や努力
碧海、という言葉は私が前世で持っていたもので、今世で失ったものの一つだ。前世の私の
「先生、今日からまた来て下さるし、また海の中のお話を聞かせていただけるかしら」
私の家庭教師であるフォード・ルシェールという少し年上の男性も碧海の魔術師の一人だ。少し前まで海底へ行っていたのだが、数日前に家が
彼に聞く海の中の様子が、今私が知る事の出来る海の世界のすべてだ。この世界の海にもイルカや
今回はどんな話が聞けるだろうか。楽しみだなと笑った
「……
扉の向こうの
「おはよう」
「あ、姉様。おはよう」
「シレーナおはよう。良かった、やっと来てくれたわ!」
散らばるガラスの
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