ロボットになりたい

捩花

早朝

カーテンが揺れている。朝の光がほんのりとカーテンを光らせている。点々と滑る光の粒を眺めながら、そっと手を伸ばすと、カーテンを引いた。

(腹減った…)

寝転がった体を持ち上げて、起き上がると顔を覆う髪を払いのける。ぐしぐしと目を擦り、ベットから裸足で床に降りると、ひんやりとした冷たさが伝わってきた。床に落ちていた砂なのかが、足の裏に食い込む。

 手探りで冷房のリモコンを手に取り、電源を切る。途端に揺れていたカーテンの動きも止まった。パンを一枚でも腹に収めたい。半ば目を閉じた状態で、朝の支度を終える。最後に肩まで届く髪を無造作に後頭部で結ぶと自室から出た。小さい食堂にたどり着くと、すでに朝食を取りに来た人々の喧騒で溢れていた。厨房から聞こえる食器がぶつかり合う音はもちろん、朝からどんな元気があるのか、冗談を言い合う声まで。

「庄内さん!今日の予定伺ってもいいですか?」

「長良、今話しかけても無駄だ」

「俺、今年度配属になりました…」

目の前で何かを話している男に立ち塞がれる。配膳台と手前の二人の男を見比べる。別に話すなとは言わないが、他のどこかで話してほしい。ん?…そういや、名前、呼ばれたっけ?

「ごめん、後でなしてくんない?」

すでに配膳台に釘付けになっている庄内は早口にそう言うと、男を回り込んだ。庄内の背後でしゅんとする長良に「ほらな」と声がかかけられ、慰めるように叩かれた肩が揺れた。


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