第6話 夏の花火大会
学校が夏休みに入り、あの日が近づいてきました。花火大会です。
私達の住む街では大きな花火が上がって毎年盛り上がっています。去年は友達と浴衣を着て一緒に見に行きました。
でも、今年は恋人がいるので友達の誘いはお断りして、貴方と見に行く事にします。
でも、貴方は人混みは苦手なんですよね。あまりあそこに行きたいどこに行きたいと誘いまくるのも迷惑かと思い、私はどう話を切りだしたらいいものか悩んでいました。
すると貴方の方から切りだしてくれました。
「もうすぐ花火大会があるよ」
「はい、あります!」
「うち、来る?」
「はい、来ます!」
「でも、静香さんの家だと門限が厳しいかな?」
「いえ、毎年友達と見に行ってるので大丈夫だと思います」
「そっか、じゃあ花火大会の夜は一緒にここで花火を見よう。ここの窓ってよく見えるんだよね」
「はい! ……ん?」
ここで私は話がどこかおかしい事に気が付きます。
「ここで見るんですか?」
「うん。ここの窓って花火がよく見えるんだ」
「……」
私はよほど悔しい顔をしていたのでしょう。貴方に気を使わせてしまいました。
「もしかして会場に見に行きたかった?」
「はい……」
「じゃあ、行く?」
「いいんですか?」
まさか人混みの嫌いなめんどくさがりの貴方からその話が出るとは思わなくて、私はびっくりして顔を上げてしまいます。
貴方は恥ずかしそうにしながら答えてくれました。
「まあ、俺達付き合ってるし。打ち上げ花火が前から見るか横から見るかで違ってるのかは気になってたから」
私には貴方の気にしている事はよく分かりませんでしたが、とにかく嬉しかったので喜びました。
当日は浴衣を着ておめかしして貴方を驚かせますよ。
楽しみの日はあっという間にやってきました。
私達が住んでいる街では大きな花火が上がります。今日はその当日です。私は浴衣を着てお洒落をして貴方の家にやってきました。
そしてピンポンを一回鳴らしても出てこなかったので合鍵を使って入っていきます。
「こんにちは! もうすぐ花火大会ですね!」
「うわあ、静香さん。今は駄目だ!」
「え……?」
何と貴方は着替え中でした。私は慌てて回れ右してドアを閉めました。
「ごめんなさい! 失礼しました!」
「いや、いいんだよ。俺も今出ようとしてたところだから、タイミングが悪かったね」
「うう……」
ドキドキしてしまいます。花火大会はまだ始まってもいないのに今からこんな事で大丈夫なのでしょうか。
考えてみれば私は友達と花火大会に行った事はあるのですが、男の人と行った事は無いんですよね。
そう思うと毎年行っている場所なのに緊張してしまいます。心の中で友達にエールを送ってもらう事にします。
「(頑張れ)」
「(負けるな、静香)」
「(しっかりするのよ。この日のために色々準備してきたじゃない。自信を持ちなさい)」
「(ありがとう、みんな。頑張ってくるね)」
さて、気持ちが引き締まりました。そこでドアを開けて貴方が出てきました。
「おお、浴衣だ」
「ふふん、頑張って着てきました」
貴方の言葉は少なかったですが、喜んでいたのは明らかだったので今はそれで満足しておきましょう。
お互いに準備が出来たので私達は家を出て、花火の上がる河川敷に向かいます。
会場に着いて出店を適当に回っていると、あっという間に夜になって花火の上がる時間になりました。
「じゃあそろそろ行こっか」
「はい、行きましょう」
私達が来た場所は去年は友達と来た場所でした。ドラマのように特別な場所なんて知りませんし、貴方に聞いても自分の部屋と答えるのは明らかだったので、私がここへ貴方を連れてきました。
来てしまってから友達と会ったらどうしようとびくつきましたが、私達の前にも後ろにも沢山の人が来ていてもう動けません。去年より多いかもしれません。
ここは知り合いと会わない事を祈りましょう。貴方と手を繋いで見上げる夜空。そこに花火が上がります。
「綺麗……」
「君の方が……………………」
「綺麗だよって言ってよ」
「何か恥ずかしくなった」
私達の目の前に広がる大輪の花。それはとても幻想的でした。
隣にいる貴方を見るといつもより大人っぽく見えて、私は思わずドキッとしてしまいました。
「来年もまた来る?」
「来年は貴方のおすすめのスポットから見たいな」
そんな感じで私達の付き合いはまだまだ続いていくのでした。
めんどくさがりの貴方と何かをやりたい私 けろよん @keroyon
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