第11話・ヒントは、アスナが持っていた!

 サイバリアンから逃げるように帰宅して。


 とりあえず人心地つけて サイバリアンから逃げるように帰宅して。


 とりあえず人心地つけてから、急ぎヨルムンガンド・オンラインへリンクを開始、すぐさま領主館の執務室に向かうと、そこから外部リンクで情報を集め始める。


「……【R・I・N・G】クエストを積極的に進めている人物、もしくはそれに付随する事故や事件……」


 可能な限り情報を得るため、SNSなどでの噂程度も見逃さず。

 事細かに情報を精査し、重複する部分をさらにチェック。

 すると、いくつかのサイトなどで、あるユーザーギルドが【R・I・N・G】クエストについての情報を集めているという噂まで辿り着いた。


「やばそうなのは『神聖同盟』、それと、『明けの明星』『黄道十二宮』の三つか……ゲッ、神聖同盟って対人ギルドじゃないかよ、パスパス、絶対に相手したくないわ」


 対人戦をモットーとするギルドで、犯罪者も多数存在するダークなギルドが、神聖同盟。対して黄道十二宮は世界の謎を解き明かすのに必死なギルドで、公式サイトも自作しているんだが。

 そこでは、【R・I・N・G】をギルド単位で攻略し、報酬としてゲーム内に『浮遊大陸』を手に入れようとしているらしい。

 自分達専用の狩場であり、ギルドの庭であり、資源が豊富に取れる浮遊大陸。

 実際に、ハーメルンの港町からも浮遊大陸というか、浮遊島のようなものは見えているし、風魔法を使って空を飛んで、島に降り立ったというユーザーのことも聞いたことがある。


 まあ、その後で島の守護者に殺されてセーブポイントまで強制送還したらしいけど。


「明けの明星は、あ、パリピなギルドか」


 遊ぶこと大好き、楽しいこと大好きギルドで、ここもギルド単位で【R・I・N・G】に参加、賞金をギルドメンバーで山分けして、パーっと遊ぼうっていう、ある意味では健全なギルド。


「うん、ここも触れないでおこう。まあ、注意するに越したことはないけどさ」


──コンコン

 すると、扉がノックされる。

 

「乱丸か?」

『はい。ハルナ様に御面会を希望する方がいらしてますが』

「誰だよ?」

『ユーザーギルド・神聖同盟の外交官だそうですが、どうなされますか?』


 くっそ、ハズレがきたか。

 そしてこのタイミングで接触してきたということは、サイバリアンで話を聞いていた奴の一人かも知れない。


──ゾクッ

 そして、あの、フード男の視線を思い出す。あれは、あいつにだけは近寄ったらダメだ。あれは、笑った人を殺せる目だ。


「ふぅ。応接間に案内しておいて」

『畏まりました』

「覚悟を決めるか。奴でないことだけは、祈りたいところだがな」


 そう思って、応接間へと向かう。

 はてさて、どんな話が飛んでくることやら。


………

……


「はじめまして。神聖同盟の外交官を務めています、トリビアと申します」


 目の前に座っているのは、黒髪和装の女性。

 名前が漢字でないのは勿体無い気がするのだが。


「はじめまして。ルーゼンベルグ領の領主を務めています、ハルナです。本日は、どのようなお話でいらしたのですか?」

「はい。我が神聖同盟は、このヨルムンガンド・オンライン中での拠点を求めています。それで、もし宜しければ、このルーゼンベルグ領を我が党首に譲渡していただきたく、お願いにあがりました」


 うん、こいつは何を言っているんだ?

 拠点が欲しいから、領地を明け渡せ?

 頭は大丈夫か?


「お断りします。そう、党首にお伝えください」

「畏まりました。では、ここからはオフレコでお願いします」

「え。あ、はい……」


 そう告げると、先ほどまでの清楚なイメージだったのが、懐からタバコを取り出して火をつけて咥えているよ。 


「このルーゼンベルグ領で、執務官か外交官の募集はありませんか?」

「咥え煙草でリクルートを始める人間に、私は初めて会ったよ。現実世界ならありえないよなぁ……」

「まあ、ゲーム世界でぐらいは楽にさせてくださいよ。ぶっちゃけますと、神聖同盟のやり方がもう、限界でして。私だって、こんな無茶な外交が曲がり通るとは思っていませんよ? でも、党首がリアル知り合いどころか上司で、挙句にゲームの中でも媚び諂わされらし、我儘ざんまいな挙句に深夜でもゲーム内に呼び出して、何かと思ったら囮をやれとか、もう散々なんですよ」


 いきなりリアルの愚痴が来たぁぁぁ。

 まあ、そういうのもあるよなぁと思うけど。


「それでですね、ヘッドハンティングという形で引き抜いてもらえたら、ある程度の面目は立つのですよ。私から辞めるだなんて話してギルドを脱退したら、それこそリアルの方でなんだかんだと理由をつけて査定が落とされるのはわかっていますから……でも、知人とか親戚に誘わらて仕方なくとか、それっぽい理由をつけたら、抜かれそうなんですよ」

「そんな面倒なことしないで、嘘でも理由をつけて抜ければ良いのに」

「検索されて無所属ならバレますって。捨て垢にアイテムを移して逃げようとも考えましたけど、捨て垢も作れませんし、どうしたものかと……」


 はあ。

 なんでそんな事を私に相談するのやら。

 そう考えたら、トリビアがアイテムボックスから一冊の本を取り出した。


「これは、北方の古代遺跡で発掘された、古い歴史書です。これを差し上げますので、私をこの領地に雇ってもらえますか?」

「うわぁ、そりゃまた面倒臭くなりそうだなぁ」

「ほら、ここはうまく口裏を合わせて、私が外交でやってきたら、実は親戚の人の領地だった、経営のために手伝ったと頼まれたので、仕方なくとか、ね?」

「意外と穴だらけな策だけど。それが通用する上司なの?」

「外面は良いので。どうですか?」


 はぁ。


「ちょっと待ってて。乱丸、ちょっと来てくれる?」

「はい、お呼びでしょうか?」

「今のうちの領地の中で、ユーザーポジションの空きってあるの?」


 NPCの店を管理しているのは乱丸。

 その中でも、ユーザーに任せても良いところは権利の貸与が可能。

 実際にオワリの鍛冶屋は三軒あって、その一つを大和伝に貸与しているから。

 

「そうですね。では、図書館の司書官統括を任せては?」

「了解。では、それで良ければうちで貴方を引き取るけど。でも、裏切ったらどうなるか、わかるよね?」

「御安心を。その時は、通報してイエローネームにでもなんでもしてください」


 これで話は成立。

 すぐに乱丸に話して司書官統括のポストを開けてもらうと、そこに測る代わりに所属をルーゼンベルグ領に移るようにメールで改めて打診。

 そこでイエスを押すと、神聖同盟を脱退しますか? のコマンドが出るので脱退でOK。

 この一連の手続きがあれば、正式な脱退として認められる。

 なんと言っても、領地経営の関係者には特定ギルドのメンバーは参加できないっていう縛りがあるからね。


 これがないと、領主がギルドマスターになって、領地を好き勝手にできるんだよ。まあ、名目上はアウトなだけで、裏で手を繋いでどうこうしてあるところはあるらしいけどさ。


「これで、ようやくあの殺人ギルドから脱退できました。では、こちらの本はお渡しします」

「ありがとう。そんじゃ、この地区のこの建物、この二階のここがあなたの部屋だから。貸与するので好きにカスタマイズして」

「ありがとうございます」


 そのままトリビアは部屋から出る。

 そして、玄関まで見送った時。


「そうそう、神聖同盟は、今回の大規模討伐クエストの後に発生する、ダンジョン攻略にも選抜メンバーを派遣するそうです。その際にですが、PKが送られてきますので、ご注意を」

「来たところで、対人フラグを切ったら問題ないでしょうが」

「……あの、大規模クエストは自動的に対人フラグが外れるのをご存知ではないのですか?」

「……はぁ?」


 待て待て、あと一日だよな?

 すぐさまクエスト画面を開いで、大規模討伐を確認。

 その注意事項には、しっかりと書いてあったよ。


『大規模討伐系クエストでのダンジョン侵入時には、対人フラグがオンになります。望まない方は、【平和の象徴】をお買い求めください』


 平和の象徴って課金アイテムかよ!!

 いきなり商売っ気が出てきたな、おい。


「は、はあ、なるほと、ありがとう」

「では、失礼します」


 トリビアさんは、笑顔を振り撒いて帰りました。

 そして入れ替わりにアスナも領主館にインしたらしいです。


………

……


「カクカクシカジカでね、統轄司書官に任命したんだよ」

「へえ、良かったね。それで、その時の交換条件が、この本なの?」


 何があったかを説明して、手渡された書物を取り出して見せる。

 でも、古代魔法語か何かで記されているらしくて、何も読めないのよ。


「へぇ、見てもいい?」

「いいけど、多分【古代魔法語】のスキルが必要だよ。もしくは解析の上位。私なんて、とてもとても……」


 アイテムボックスからパイプを取り出し、火をつけて吹かす。

 その間も、アスナは真剣な顔で本を読んでいた。


「ハルナちゃん、でかしたよ!! これ、私たちに必要な本だよ」

「へ、は、はぁ? 読めるの?」

「だって、この文字、古代エルフ語だもの。読み取り条件が【古代エルフ語スキル】もしくは【種族:ハイエルフ】のみって説明に書いてあるよ?」

「その説明が古代エルフ語で書かれているから、私には珍紛漢紛だったのよ。それで、何が書いてあるの?」


 そう問いかけると、アスナは真剣な顔で一言。


「メイルシュトロームの短剣の生産方法と、その素材。メイルシュトロームの短剣はダマスカス鋼で作るらしく、五つの希少素材が必要なんだって」

「へぇ……って、それってつまり!!」

「そう、【R・I・N・G】の詩篇の二つ目、それがこれなのよ!!」


 うわ、鳥肌が立ってくる。

 まさかまさかの、【R・I・N・G】クエストのヒントだとは、私も予想していなかったよ。

 これは、この本を持ってきたトリビアにも感謝だよなぁ。


「それで、その素材って?」

「ちょっと待っててね、言い回しが古いのと、あちこちが虫食いで解析に時間が掛かりそうなのよ」

「それじゃあ、それは預けるから解析しておいて。素材がわかったら、すぐに私が手配してみるから」

「あいあいさ!!」


 さあ、段々とテンションが高くなってきましたよ。

 これは、【R・I・N・G】クエスト第一号突破者になれるかもね。

から、急ぎヨルムンガンド・オンラインへリンクを開始、すぐさま領主館の執務室に向かうと、そこで外部リンクをして情報を集め始める。


「……【R・I・N・G】クエストを積極的に進めている人物、もしくはそれに付随する事故や事件……」


 可能な限り情報を得るため、SNSなどでの噂程度も見逃さず。

 事細かに情報を精査し、重複する部分をさらにチェック。

 すると、いくつかのサイトなどで、あるユーザーギルドが【R・I・N・G】クエストについての情報を集めているという噂まで辿り着いた。


「やばそうなのは『神聖同盟』、それと、『明けの明星』『黄道十二宮』の三つか……ゲッ、神聖同盟って対人ギルドじゃないかよ、パスパス、絶対に相手したくないわ」


 対人戦をモットーとするギルドで、犯罪者も多数存在するダークなギルドが、神聖同盟。対して黄道十二宮は世界の謎を解き明かすのに必死なギルドで、公式サイトも自作しているんだが。

 そこでは、【R・I・N・G】をギルド単位で攻略し、報酬としてゲーム内に『浮遊大陸』を手に入れようとしているらしい。

 自分達専用の狩場であり、ギルドの庭であり、資源が豊富に取れる浮遊大陸。

 実際に、ハーメルンの港町からも浮遊大陸というか、浮遊島のようなものは見えているし、風魔法を使って空を飛んで、島に降り立ったというユーザーのことも聞いたことがある。


 まあ、その後で島の守護者に殺されてセーブポイントまで強制送還したらしいけど。


「明けの明星は、あ、パリピなギルドか」


 遊ぶこと大好き、楽しいこと大好きギルドで、ここもギルド単位で【R・I・N・G】に参加、賞金をギルドメンバーで山分けして、パーっと遊ぼうっていう、ある意味では健全なギルド。


「うん、ここも触れないでおこう。まあ、注意するに越したことはないけどさ」


──コンコン

 すると、扉がノックされる。

 

「乱丸か?」

『はい。ハルナ様に御面会を希望する方がいらしてますが』

「誰だよ?」

『ユーザーギルド・神聖同盟の外交官だそうですが、どうなされますか?』


 くっそ、ハズレがきたか。

 そしてこのタイミングで接触してきたということは、サイバリアンで話を聞いていた奴の一人かも知れない。


──ゾクッ

 そして、あの、フード男の視線を思い出す。あれは、あいつにだけは近寄ったらダメだ。あれは、笑った人を殺せる目だ。


「ふぅ。応接間に案内しておいて」

『畏まりました』

「覚悟を決めるか。奴でないことだけは、祈りたいところだがな」


 そう思って、応接間へと向かう。

 はてさて、どんな話が飛んでくることやら。


………

……


「はじめまして。神聖同盟の外交官を務めています、トリビアと申します」


 目の前に座っているのは、黒髪和装の女性。

 名前が漢字でないのは勿体無い気がするのだが。


「はじめまして。ルーゼンベルグ領の領主を務めています、ハルナです。本日は、どのようなお話でいらしたのですか?」

「はい。我が神聖同盟は、このヨルムンガンド・オンライン中での拠点を求めています。それで、もし宜しければ、このルーゼンベルグ領を我が党首に譲渡していただきたく、お願いにあがりました」


 うん、こいつは何を言っているんだ?

 拠点が欲しいから、領地を明け渡せ?

 頭は大丈夫か?


「お断りします。そう、党首にお伝えください」

「畏まりました。では、ここからはオフレコでお願いします」

「え。あ、はい……」


 そう告げると、先ほどまでの清楚なイメージだったのが、懐からタバコを取り出して火をつけて咥えているよ。 


「このルーゼンベルグ領で、執務官か外交官の募集はありませんか?」

「咥え煙草でリクルートを始める人間に、私は初めて会ったよ。現実世界ならありえないよなぁ……」

「まあ、ゲーム世界でぐらいは楽にさせてくださいよ。ぶっちゃけますと、神聖同盟のやり方がもう、限界でして。私だって、こんな無茶な外交が曲がり通るとは思っていませんよ? でも、党首がリアル知り合いどころか上司で、挙句にゲームの中でも媚び諂わされらし、我儘ざんまいな挙句に深夜でもゲーム内に呼び出して、何かと思ったら囮をやれとか、もう散々なんですよ」


 いきなりリアルの愚痴が来たぁぁぁ。

 まあ、そういうのもあるよなぁと思うけど。


「それでですね、ヘッドハンティングという形で引き抜いてもらえたら、ある程度の面目は立つのですよ。私から辞めるだなんて話してギルドを脱退したら、それこそリアルの方でなんだかんだと理由をつけて査定が落とされるのはわかっていますから……でも、知人とか親戚に誘わらて仕方なくとか、それっぽい理由をつけたら、抜かれそうなんですよ」

「そんな面倒なことしないで、嘘でも理由をつけて抜ければ良いのに」

「検索されて無所属ならバレますって。捨て垢にアイテムを移して逃げようとも考えましたけど、捨て垢も作れませんし、どうしたものかと……」


 はあ。

 なんでそんな事を私に相談するのやら。

 そう考えたら、トリビアがアイテムボックスから一冊の本を取り出した。


「これは、北方の古代遺跡で発掘された、古い歴史書です。これを差し上げますので、私をこの領地に雇ってもらえますか?」

「うわぁ、そりゃまた面倒臭くなりそうだなぁ」

「ほら、ここはうまく口裏を合わせて、私が外交でやってきたら、実は親戚の人の領地だった、経営のために手伝ったと頼まれたので、仕方なくとか、ね?」

「意外と穴だらけな策だけど。それが通用する上司なの?」

「外面は良いので。どうですか?」


 はぁ。


「ちょっと待ってて。乱丸、ちょっと来てくれる?」

「はい、お呼びでしょうか?」

「今のうちの領地の中で、ユーザーポジションの空きってあるの?」


 NPCの店を管理しているのは乱丸。

 その中でも、ユーザーに任せても良いところは権利の貸与が可能。

 実際にオワリの鍛冶屋は三軒あって、その一つを大和伝に貸与しているから。

 

「そうですね。では、図書館の司書官統括を任せては?」

「了解。では、それで良ければうちで貴方を引き取るけど。でも、裏切ったらどうなるか、わかるよね?」

「御安心を。その時は、通報してイエローネームにでもなんでもしてください」


 これで話は成立。

 すぐに乱丸に話して司書官統括のポストを開けてもらうと、そこに測る代わりに所属をルーゼンベルグ領に移るようにメールで改めて打診。

 そこでイエスを押すと、神聖同盟を脱退しますか? のコマンドが出るので脱退でOK。

 この一連の手続きがあれば、正式な脱退として認められる。

 なんと言っても、領地経営の関係者には特定ギルドのメンバーは参加できないっていう縛りがあるからね。


 これがないと、領主がギルドマスターになって、領地を好き勝手にできるんだよ。まあ、名目上はアウトなだけで、裏で手を繋いでどうこうしてあるところはあるらしいけどさ。


「これで、ようやくあの殺人ギルドから脱退できました。では、こちらの本はお渡しします」

「ありがとう。そんじゃ、この地区のこの建物、この二階のここがあなたの部屋だから。貸与するので好きにカスタマイズして」

「ありがとうございます」


 そのままトリビアは部屋から出る。

 そして、玄関まで見送った時。


「そうそう、神聖同盟は、今回の大規模討伐クエストの後に発生する、ダンジョン攻略にも選抜メンバーを派遣するそうです。その際にですが、PKが送られてきますので、ご注意を」

「来たところで、対人フラグを切ったら問題ないでしょうが」

「……あの、大規模クエストは自動的に対人フラグが外れるのをご存知ではないのですか?」

「……はぁ?」


 待て待て、あと一日だよな?

 すぐさまクエスト画面を開いで、大規模討伐を確認。

 その注意事項には、しっかりと書いてあったよ。


『大規模討伐系クエストでのダンジョン侵入時には、対人フラグがオンになります。望まない方は、【平和の象徴】をお買い求めください』


 平和の象徴って課金アイテムかよ!!

 いきなり商売っ気が出てきたな、おい。


「は、はあ、なるほと、ありがとう」

「では、失礼します」


 トリビアさんは、笑顔を振り撒いて帰りました。

 そして入れ替わりにアスナも領主館にインしたらしいです。


………

……


「カクカクシカジカでね、統轄司書官に任命したんだよ」

「へえ、良かったね。それで、その時の交換条件が、この本なの?」


 何があったかを説明して、手渡された書物を取り出して見せる。

 でも、古代魔法語か何かで記されているらしくて、何も読めないのよ。


「へぇ、見てもいい?」

「いいけど、多分【古代魔法語】のスキルが必要だよ。もしくは解析の上位。私なんて、とてもとても……」


 アイテムボックスからパイプを取り出し、火をつけて吹かす。

 その間も、アスナは真剣な顔で本を読んでいた。


「ハルナちゃん、でかしたよ!! これ、私たちに必要な本だよ」

「へ、は、はぁ? 読めるの?」

「だって、この文字、古代エルフ語だもの。読み取り条件が【古代エルフ語スキル】もしくは【種族:ハイエルフ】のみって説明に書いてあるよ?」

「その説明が古代エルフ語で書かれているから、私には珍紛漢紛だったのよ。それで、何が書いてあるの?」


 そう問いかけると、アスナは真剣な顔で一言。


「メイルシュトロームの短剣の生産方法と、その素材。メイルシュトロームの短剣はダマスカス鋼で作るらしく、五つの希少素材が必要なんだって」

「へぇ……って、それってつまり!!」

「そう、【R・I・N・G】の詩篇の二つ目、それがこれなのよ!!」


 うわ、鳥肌が立ってくる。

 まさかまさかの、【R・I・N・G】クエストのヒントだとは、私も予想していなかったよ。

 これは、この本を持ってきたトリビアにも感謝だよなぁ。


「それで、その素材って?」

「ちょっと待っててね、言い回しが古いのと、あちこちが虫食いで解析に時間が掛かりそうなのよ」

「それじゃあ、それは預けるから解析しておいて。素材がわかったら、すぐに私が手配してみるから」

「あいあいさ!!」


 さあ、段々とテンションが高くなってきましたよ。

 これは、【R・I・N・G】クエスト第一号突破者になれるかもね。

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