第3話――始めての挨拶

 ――次の日。



「ようこそー! 陸上部へ!! 」

 ミーティング室に行くと、案内してくれた先輩が40人以上の部員を連れて歓迎してくれた。



「なぁ雨季、あれって新入生か……?」

「恐らく。」

 俺と晴矢以外にも、新入生らしき人達が囲まれている。


 ザッと15人はいるように見えるし……女子の姿もあったので晴矢は嬉しそうに見とれていた。



「僕は部長の河田かわたね。皆からは、部長って言われてるけど、好きにしてくれたらいいよ。」


 部長は、ははっと笑いながら挨拶を改めてしてくれた。暫く挨拶や話をしていると、もう1人の先輩が走ってくる。



「……部長、呼んできました!」

「ありがとう。じゃあ、新入生の皆さんは先輩が並んでいるから隣に行って待機してね。」


「「はい!」」

 部長の言われた通り、円状を作るように並んでいた。

 その後、サングラスをかけた男の先生が2人。女の先生が1人やってきた。



「「こんにちは!!」」

 先輩達の顔は、穏やかな顔から急に真剣な顔つきになった。

 まるで軍隊のように息を合わせて挨拶をする。



「こっにちは!」

 俺達も慌てながらに続いていく。



(ちょっとこわいな……)

 何もしていないのに威圧が凄い。身震いを感じながらも背筋に力をいれた。




 先輩達が何かの報告をし終わると、1人の男の先生がサングラスを外した。


「はい、こんにちは。えっ……と、じゃあ。まずは新入生の皆さん。まずは来てくれてありがとう」

 この先生が代表だろう。2人の先生は後ろに下がっているし。



「じゃあ、新入生も挨拶をしてもらおうかな。名前と希望種目。まだ決めてなくてもいいから。……じゃあ君から。」



 スっと、晴矢の方に手を向ける。

「っはい! 杉縁 晴矢、希望はハードルです!!」


「おー!」

「悪いな。1人貰ったわ」

「はいはい。まけんなよ?」

 晴矢は目を輝かせながら話し、先輩達はワイワイと所属争いに盛り上がっていた。


 さっきまでの空気が嘘のようだな。



「……はい、宜しくね。拍手。」

 晴矢が挨拶を終えると、次は俺の番らしい。一斉に俺に向かって視線を向けた。



「三須輝 雨季です。希望は……」

 ゴクッと唾を飲み込み、



「マネージャーをしたいと思っています。」

「――っ!?」


 一瞬、意外だという空気が流れた。部長達も目を丸くしているし……気まずい。



 どうしようと考えていると、女の先生の笑い声が聞こえてきた。

「いいねぇ、面白いじゃん!……ね、先生。」

「そうですね。君、力仕事は任せたぞ?」



 後ろの先生達が笑いながらヤジをとばすと、それに吊られるように、皆の口角が緩くなった。



「……は、っはい!」


 先輩達からの暖かい拍手も巻き起こり、落ち着きを取り戻しながら礼をする。


 ……俺がここに居てもいいと、皆が認めてくれたように感じた。



「よし、期待してるからな。…はい次。」

 1番前の先生も、笑いながらに次の番に振る。




「これで終わります。ありがとうございました。」

「「ありがとうございました!」」


 そのまま、ミーティングは和やかな雰囲気で終わりになった。



 後ろにいた背の高い男の人が徳永先生。女の人が石井先生。

 そして、真ん中に居たのが藤田先生だと挨拶してくれた。


 マネージャーとして、覚えないといけないのは分かっているが……



 すぐに忘れそうだ。

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