第145話 ブラッドリー追放の陰に……
4人でのランチが終わると、セドリックが不意にエディットに声を掛けてきた。
「エディット、クラス委員長としてちょっと個人的に相談したいことがあるから自習室に一緒に来て貰えるかな?」
「え?私にですか?で、でも……」
エディットは驚いた様子で僕をチラリと見た。するとすかさずセドリックが僕に尋ねてきた。
「アドルフ、エディットを借りてもいいかな?」
言いながらセドリックは素早く目配せをする。
あぁ……ひょっとしてこれは……。
「エディットさえ良ければ僕は構わないよ?どうする?」
僕はエディットに尋ねた。すると少し考える素振りを見せた後、頷いた。
「分かりました。自習室に行けばいいのですね?」
「ありがとう、助かるよ」
笑顔を向けるセドリック。恐らくエディットはブラッドリーの件で彼に恩義を感じているので、OKしたのかもしれない。
「なら早速行こう、エディット」
「はい」
立ち上がったセドリックに引き続き、エディットも返事をしながら席を立つ。
「それじゃ、僕とエディットは先に行くから」
「はい」
「うん」
サチと交互に返事をすると、エディットが声を掛けてきた。
「あの、アドルフ様……帰りは……」
「うん。一緒に帰ろう」
「はい」
エディットは嬉しそうに返事をするとセドリックと一緒に学食を出て行った。
「ふふん。お兄ちゃん、エディットさんとラブラブじゃない」
2人がいなくなるとすぐにサチが砕けた様子で話しかけてきた。
「え?ラ、ラブラブ……?そ、そうかなぁ……」
「まったまた〜。照れちゃってさ。誰がどう見ても2人は恋人同士にしか見えないって」
「ええ?!こ、恋人同士?!だって、まだエディットに告白だってしていないのに?!」
するとサチが目を見開いた。
「え?!嘘でしょう?まだ告白していなかったの?!何でよ!」
「それは……色々タイミングの問題があったからだよ……何しろ、ブラッドリーの件で色々あったし、それに元々記念式典パーティーのときに、告白しようとおもっていたから」
「何で?!今すぐ告白するべきでしょう?!」
サチは興奮が止まらず、しまいにテーブルをバシバシと叩き始めた。
「だ、だけどやっぱり僕としては、エディットへの告白はうんとロマンチックな状況で思いを伝えたいなって思って……」
たじろぎながら返事をする。
「はぁ〜……ほんっと、相変わらずお兄ちゃんは駄目だなぁ〜……」
思い切りため息をつかれてしまった。
「それより、サチだってどうなんだい?セドリック王子と」
「え?何で私がセドリック王子と?」
ぽかんとした目でサチが僕を見る。
「何でって……セドリックはサチのことが好きじゃないか」
「ええ〜!!無い無いって!だってセドリック王子はこの世界のヒーローだし、私なんか原作に登場すらしないただのモブだよ?ありえないよ。そんなこと言ったらセドリック王子に悪いじゃない」
う〜ん……どうやら、僕達は兄妹揃って恋愛というものに関して鈍いのかもしれない……。
「ところでサチ。セドリックはわざと僕とサチを2人きりにさせたんだよね?」
「うん、まぁね。何も知らないエディットさんの前では話が出来ないし」
サチは紅茶を一口飲んだ。
そこで僕はピンときた。
「サチ……もしかして、ブラッドリーを国外追放って……」
「うん、そうだよ。私からセドリック王子に頼んだんだよ。だって許せないじゃない!私の大切なお兄ちゃんに……下手すれば死んでしまうかもしれないような酷いことを沢山してきたんだから許せないよ!だから原作のアドルフの代わりに追放してやることに決めたんだよ」
サチは今にも泣きそうな顔になっていた。やはり今回の顛末にはサチが絡んでいたのか。
「ありがとう、僕にとってもサチは大切な妹だよ」
笑みを浮かべてサチと話をしながら、僕の胸はチクリと傷んだ。
僕はまだエディットに嘘をついている。
エディットのことが大切なのに……僕達3人の秘密を彼女に内緒にしていることが心苦しかった――。
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