少年篇
少年篇(1)中1『洋楽聴き』 NHK-FM「リクエストコーナー」
それにしても、今日の練習試合はひどいものだった。コジタケが怒り狂ったからだ。しかも、試合中にだ。
俺たちのチームが2点差で勝っていて、残り6回と7回を残すのみになった。練習試合とはいえ、ここのところずっと負け続けていたから、今日こそは、と試合に出ている先輩たちも、応援している俺たち1年生も、言い方はテレビ掛かっているけれど、希望に燃えていた。
しかし、コジタケは怒った。相手チームのピッチャーが交代したのに、その投球練習を試合メンバーが見ずに談笑していたからだ。コジタケは、試合メンバーのみならず、応援の俺たちまで全員にベンチ前での正座を命じた。
40人もの白いユニフォームの選手が敵のチームを前に一列になって正座とは、なんたる屈辱。敵チームからすればすごい風景だっただろう。
それもあってか、俺たちはその後に逆転されて負け試合になった。
コジタケが教えたいことはわかるが、教え方ってこういうのしかないものだろうか。俺たち1年生が3年生になって主力になった時に、俺たちはちゃんとできるのだろうか。それとも、今まで通り、コジタケの顔色を伺いながらビクビクして野球をやるんだろうか。
俺は大いなる不安を感じながらも、今日も、ラジオのチューニングをNHK-FM放送に合わせた。
今までの俺なら、日曜日の夕方のこの時間は「レッツゴーヤング」を見て、それから「サザエさん」の3話目だけを見ていたけれど、最近はその時間はラジオになった。聴くのは「リクエストコーナー」だ。
6時の時報の後に、いつものビリー・ボーン楽団の「真珠貝の歌」が流れて、石田豊アナウンサーがしゃべり始める。石田豊なりの簡単な時候のあいさつが終わると、早速、ビルボードのヒットチャートが掛かり始める。カウントダウン番組ではなく、あくまで、リクエストによるものなので、好みの当たり外れはあるけれど、なにせ、曲の終わりまでフェードアウトなしで流してくれるから、エアチェック命の俺にとっては貴重な番組だ。
先週は、とうとう1位に昇りつめたザ・ナックの「マイ・シャローナ」を録音した。あの曲で、どうして“第二のビートルズ”と呼ばれるのか俺にはわからないが、あの曲の間奏はなかなか良いと思う。ただ、ロッド・スチュアートの「アイム・セクシー」の破壊力には及んでいないと思う。
さて、今週は、どんな良曲を録音できるか… あ、のっぽのサリーさん、また、読まれているな。常連中の常連とはいえ、いいなあ。
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