第7話 新メンバー登場!(3)

 そうやってグリーンを守っていると、今度は背中を足でドスドス蹴られ始める。どうやら、上に居るのが子供たちから戦闘員に変わったようだ。


「円ちゃん、起きろ! 今、ピンチだぞ!」

「うう……」


 グリーンがようやく目覚める。


「きゃあ、大地先輩に襲われる!」

「違う、お前今ステルススーツで素っ裸なんだよ! 姿を消すか、戦闘スーツに変えろ!」

「ええっ!」


 事態が飲み込めたのか、グリーンはリングのボタンを押して戦闘スーツ姿に変わった。


「これでやっと体が動かせるぜ。散々好き放題に蹴りまくりやがって!」


 ブルーは立ち上がって戦闘員を睨みつけた。


「勘が良いだけの男じゃねえぞ!」


 ブルーはそう叫びながら、大暴れする。他のメンバーたちも駆け付けてくれて、ようやく事態を収拾出来た。



「短い研修期間でしたが、本当にお世話になりました」


 戦闘員達を退治して作戦室に戻ると、グリーンはメンバーたちにお礼を言った。


「もう君はサイコレンジャーの一員だ。また戻って来いよ」


 レッドがそう言うと、他のメンバーもグリーンの健闘を称えて拍手した。


 ブルーは妹が去ってしまうような悲しさで、言葉が出なかった。


「大地先輩には、本当にお世話になりました。最後はカッコ良かったですよ」

「そう思うんなら、もっと良い決め台詞を考えてくれよな」


 ブルーは照れ隠しにそう言った。


「はい! もちろんです!」


 グリーンは笑顔でそう言うと、後はメンバー全員と握手をして、作戦室を後にした。


 ブルーは寂しさを感じたが、でもなんだか自分も成長できた気がした。


「それは勘違いですわ」


 横に居たピンクが速攻で否定したが、それでも良いさとブルーは思った。



 ホワイト将軍が死神執事を従えて、ワルダーアジトの廊下を歩いていると、前方から紫色の髪に、同じ色のマスクとマントと戦闘スーツを着た若い女が歩いてくる。女も背後に赤茶色の執事姿の屈強な大男を従えていた。


 このままお互いが歩き続ければ衝突してしまう。だが、両者とも譲る気は全く無いようだ。表情一つ変えずに、真っ直ぐ歩き続けている。


 あと二、三歩歩けばぶつかるところで、両者の足が止まる。従者の二人も同じく足を止めた。


「ほう、私に道を譲らないとか、度胸あるね。喧嘩売る気なの、パープル」


 ホワイト将軍は楽しそうに、そう言い放つ。


「面白いこと言うね、ホワイト。喧嘩を売るのは格下がすることだよ。私はただ従わせようとしているだけ」


 パープルと呼ばれた女も笑顔で応酬する。


 二人の間に、見えない緊張の糸が張りつめる。


 パープル将軍の後ろに控えていた大男が庇うように、彼女の前に出る。と、その時、どう動いたのかも分からない程の一瞬で、死神執事が大男の喉元に日本刀を突きつけていた。


「そこから一ミリでも動けば、お前の首は胴体から転げ落ちる」


 死神執事は気負うでもなく、淡々と大男に告げた。だが、大男はその言葉がハッタリではないと感じて動けない。


「赤鬼、下がってろ」


 赤鬼と呼ばれた大男は小さく頭を下げて、パープル将軍の後ろに下がる。赤鬼執事が後ろに下がるのと同時に、また一瞬で死神執事もホワイト将軍の後ろに下がっていた。すでにその手から刀は消えている。どこから取り出し、どこへ仕舞ったのかは常人には分からない。


「あなた、サイコレンジャーとやらに、随分苦労しているみたいね」

「なに?!」


 パープル将軍に痛いところを突かれて、表情が険しくなるホワイト将軍。


「あの程度のやつらに良いようにやられて、よくも平気な顔をしているね。その所為か、最近は動画再生数も落ちてるじゃない。貴重な収入減がダウンしているのよ。あなたどうやって責任を取るつもり?」


 パープルはホワイトが怯んだと見ると、小姑のようにネチネチと突いてくる。


「ホント、私が出れば人気も出るし、あんなやつらは一発で片付くのに」


 パープルがぼそりと言った呟きを聞き、死神執事の表情が一瞬でにこやかになる。


「それは良いアイデアです、パープル将軍。ぜひ、あなた様のお力を披露していただきたいです。私どもはしばらく様子を見ますので、ご活躍を期待しております」

「ちょ、死神……」


 死神執事はホワイト将軍の体を動かし、パープル将軍に道を譲らせる。


「分かれば良いんだ! 私達に任せておけ。行くぞ! 赤鬼」

「はい、パープル将軍」


 パープル将軍と赤鬼執事は、ホワイト将軍達を一瞥してさっさと通り過ぎて行く。


「どういうつもりよ、死神!」


 ホワイト将軍は自分の両肩に手を置く、死神執事を睨みつける。


「今はあの人達に任せましょう。真打は最後に出るものですよ」


 死神が余りにもにこやかにそう言うので、総軍は毒気を抜かれた。


「もしやつらに先を越されたら責任取ってよね」

「それはもちろんです」


 不満げな将軍の言葉に、死神は笑顔で応えた。

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