第1話 サイコレンジャー出撃!(2)
「それただの勘の良い奴ってだけじゃ無いの?」
「超能力とは言えないと思いますわ」
「それで戦えるのか?」
みんな口々にブルーを責め立てる。
「まあまあ、みんな。第六感って言っても未来予知的なものじゃないのか。それなら十分戦力として使えると思うぞ」
レッドがリーダーらしくフォローする。
「あっ、いや、なんか今日は嫌な予感がするなと思ったら、電車が遅れて遅刻したり、天気予報が晴れでも雨が降るのが分かったり……」
「やっぱりただ勘が良いだけじゃない」
ブラックの言葉にみんな頷いて同意している。
「馬鹿にするな! 母ちゃんは『大地の天気予報は良く当たるね』って言ってくれるんだぞ」
「だから名前を言うなって!」
レッドに怒られたその時、天井に設置されたパトランプが回りだし、ブザー音が響き渡る。
「早速怪人が出現したようだ。みんな出撃するぞ」
「はい!」
「サイコチェンジ!」
レッドは大げさな掛け声と同時に、腕のリングのスイッチを押した。瞬間的に赤の戦闘スーツが体に転送され、サイコレンジャーレッドに変身する。
「サ、サイコチェンジ……」
他のメンバーは恥ずかしくて小声で呟きながら腕のリングのボタンを押す。それぞれのカラーの戦闘スーツが出現し、ブルー達は戦隊ヒーローに変身した。
「みんな! 恥ずかしがらずに、大きな声で叫ぼうぜ!」
(いや、これ言う必要あるのかよ……)
戦闘スーツは能力サポート機能が内蔵されている。各人の攻撃、防御、両方の機能を飛躍的にアップさせるのだ。
ブルー達は階段を駆け上がって屋上に出る。
怪人の出現場所には、屋上からヘリで向かうようだ。屋上に「サイコレンジャー5」と大きく書かれたヘリがスタンバイされていた。
(ええっ! こんな派手なヘリで出撃したら、地味な雑居ビルを本拠地にする意味無いんじゃないの?)
ブルーは疑問に感じたが、また怒られるのが嫌で黙っていた。
怪人は銀行を襲撃しているとの情報だ。ブルー達が駆け付けた時にはちょうど銀行から出てきたところだった。戦闘員達と札束が詰まったジェラルミンケースを、「悪の秘密結社ワルダ―」と側面に大きく書かれた車に積み込んでいる。
(自ら、悪と名乗ちゃうんだ……)
「待て! 怪人カメザメオン! 貴様の好きにはさせんぞ!」
(凄いなレッド。初見の怪人の名前まで知ってるんだ。確かにカメの甲羅にサメの顔をしている怪人ではあるが)
「来たな、サイコレンジャー5! お前達はここで死ぬのだ!」
(いや、カメザメオンも凄いな。俺達今日初めて招集されたって言うのに)
「黙れ! 超絶スピード! うわあ!」
レッドはそう叫んだかと思うと、次の瞬間にはカメザメオンの前で倒れていた。
(レッドの展開早っ! あっと言う間にやられるのね)
「大丈夫かレッド!」
「あいつ、動きは鈍いが凄く硬いんだ」
「よし、俺に任せろ! 限界硬化!」
レッドを助けたイエローが今度はカメザメオンに襲い掛かる。だが、ガチン! と派手な音が鳴ってもカメザメオンは平気な顔だ。
「確かにお前は硬そうだが、パワーはどうかな?」
「うわー!」
カメザメオンの一撃でイエローが吹っ飛ばされる。
(ガチムチなのにパワー無いんだ)
「ピンク! あいつの考えを探ってくれ!」
「はい! いやああー、あの人もエッチなこと考えてる」
(いや、あんたはもっと男慣れした方が良いよ)
「仕方ない、ブラック、あいつの体に弱点が無いか透視してくれ」
「分かった!」
レッドの指示で、ブラックが前に出てカメザメオンを見つめる。
「おえっ、内臓までみちゃった」
(おい、ホントに調整できないのかよ……)
結局、メンバーの超能力もカメザメオンには通じなかった。メンバー達はカメザメオンと戦闘員相手に肉弾戦で戦うがジリジリ押されていく。
ブルーは第六感以外取柄が無いので、少し離れたところでみんなが怪人や戦闘員と戦う様子を窺っていた。
「ブルー! お前も戦えよ!」
「いや、俺はただの勘が良いだけの男ですから……」
レッドの言葉にもブルーは動く気になれなかった。
(だってカメザメオン強そうなんだもん)
「頼む、ブルーも戦ってくれ!」
「お願いブルー。第六感を使って!」
「あんた男でしょ! 勘でなんとかしてみなさいよ!」
(みんなが俺に頼ってきた。こんな美味しい場面はなかなか無い。ここで立たなきゃ男が廃る)
ブルーは俄然やる気が出てきた!
「よしみんな、俺に任せろ!」
ブルーはカメザメオンの前に進み出る。
「ほう、今度はお前が相手か。ヒョロガキは怪我するからすっこんでろよ」
「俺もそうしたいがな、みんなの希望をしょってるんだよ! 引くことは出来ねえのさ」
ブルーは強く願った。何か有効な予感が出て来るようにと。
(閃け閃け……)
ブルーの瞳が鋭く輝く。
「もうすぐ、雨が降る! 大雨だ!」
「なに!?」
ブルーの言葉にカメザメオンは驚いた。
「こんな時に何を言ってるんだ!」
レッドが駆け寄って来てブルーを責める。
「いや、母ちゃんも俺の天気予報は良く当たるって……」
「あんたホントに馬鹿?」
ブラックの容赦ない言葉が飛ぶ。散々な言われようだ。
と、その瞬間、空から滝のような大雨が降って来た。傘が有っても意味が無いくらいの大雨だ。
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