世界を守れ!(笑)サイコレンジャー5
滝田タイシン
第1話 サイコレンジャー出撃!(1)
近未来の世界は、特殊能力を持つ改造人間を戦力化した悪の秘密結社「ワルダ―」が跋扈し、混迷を極めていた。各国は「ワルダ―」を撲滅する為に、様々な対策を取っている。我が国日本でも、対特殊犯罪組織防衛機構が創設されることとなった。
組織の要となるのは正義の超能力者を集めた五人の戦隊だ。チーム名は「サイコレンジャー5(ファイブ)」。メンバーはAIが日本国中の超能力者から選びだした精鋭部隊だ。
メンバーの一人に見た目ごく普通の男、青井大地(あおいだいち)が抜擢された。彼のコードネームは「ブルー」。本作は彼の活躍と成長を描く物語である。
サイコレンジャー創設後、初めてメンバーが招集された。ブルーは招集場所に指定された、都心のビルに向かった。
ビルは六階建て。外装は修繕工事もされていないのか、古びた雑居ビルにしか見えない。
入り口すぐの場所にゲートが設置されていて、事前に送られていたIDカードを通す。ゲートのドアが開き、その中に入ると様子が一変した。大企業のオフィスのような洗練された設備。高速で上昇するエレベーター。ボロい外見は、敵の目を欺くカモフラージュだったようだ。
ブルーは美人の職員から最上階の六階にある、メンバーの作戦室に案内された。六階はサイコレンジャーのメンバー専用のフロアで、作戦室の他にトレーニングルームや畳敷きの武道室、資料室や売店まである。
作戦室に入ると、壁面に大型のディスプレイが埋め込まれていて、中央には楕円形の大テーブルが置かれていた。すでにブルー以外のメンバー四人は揃っていて、テーブルに着いている。ブルーは一つ空いた席に座った。
「みんな揃ったようだな」
高級そうな仕立ての良いスーツを着たイケメン青年がメンバー達を見回す。
「メンバーのみんな、機構の本部に来て頂いてありがとう。初めまして、私がサイコレンジャーリーダーのレッド、二十五歳だ。今日は我がチームの指導者である緑川本部長が不在の為、私が結成式を進行する」
お誕生日席に座る、レッドと名乗るイケメンが挨拶をする。
「今からは私のことをレッドと呼んで欲しい。みんなも家族が居るだろう。個人情報が漏れると力の無い家族が狙われる。だからここでは、それぞれのカラーで呼び合うようにしてくれ」
(なるほど。俺の座っている椅子はブルーだ。レッドは赤い椅子に座っているので、それが与えられたカラーなんだろう。しかしブルーと言えばサブリーダーの色じゃ無いの? マジかよ。クールな二枚目ポジションじゃないか。やっと俺にも活躍の場が与えられるのか)
ブルーはテレビで観た、ヒーロ戦隊のクールキャラに自分の姿を当てはめてほくそ笑む。
「じゃあ、自己紹介として、みんなの超能力を教えてもらおう。
まずは私から。私の能力は超絶スピード。私は光の九十パーセントのスピードで動けるんだ」
「超絶スピード?!」
他のメンバーが同時に驚きの声を上げる。驚いたのも束の間、ふと気づくとレッド以外のメンバーの目の前に、それぞれ一枚ずつの名刺が置かれていた。
「フッフッフ……それは私の名刺なのだよ」
「マルバツ商事の赤松ハヤテ……これ、まさか本名じゃ……」
ピンクが困惑して呟く。
「あっ、いつもの調子で名刺を渡してしまった!」
とレッドが叫んだ瞬間には、みんなの手から名刺が消えていた。
「まあ、私の超能力は分かって貰えたと思うので、左回りに自己紹介をお願いします」
焦りながらも誤魔化すレッドを見て、コイツがリーダーで大丈夫なの? とブルーは不安になってきた。
次はブルーの目の前に座る白いワンピース姿の美女が立ち上がる。
(ええっ! 次はサブリーダーの俺じゃないの? この順番だと最後だよ。これじゃあグリーンポジションじゃないか)
「みなさん初めまして。私はピンク、二十二歳です」
ピンクと名乗った女性は、良家のお嬢様と言った雰囲気。見た目は清楚だが、スタイルが良さそうでワンピースを脱いだら凄そうだ。
「私の超能力は読心術です」
「読心術! 凄いじゃないか。その超能力があれば、敵の考えも見通せるね!」
レッドが興奮して褒め称える。
「そうです。みなさんの心の中も全て……いやああーあの人、いやらしいこと考えてる」
みんなの顔を見回していたピンクがブルーを指差し叫ぶ。
「お前、失礼じゃないか! こんな場所で何を考えてるんだ!」
レッドがブルーを責める。
「いや、違うんだ。あんな美人を目の前にしたら、あんなことやこんなことを考えてしまうじゃないか!」
「いやああーもっとエッチなことを!」
場が益々混乱してしまったが、そのまま自己紹介は続く。
「俺はイエロー二十七歳。一番年上かな。みんなよろしく!」
ピンクの横に座る無骨でガチムチなTシャツ男が立ち上がる。今は春だが、真冬でもTシャツだけで過ごしてそうで、見るからに暑苦しい。
「俺の能力は限界硬化。体を極限まで硬化させられるんだ。この手刀でなんでも貫けるぜ」
イエローは誇らしげに右手を差し出したが、暑苦しい男なんてみんな興味が無く、反応は無かった。
「私はブラック十九歳。よろしく」
次はブルーの横に座る白ギャル系の女性が立ち上がる。両耳に二つずつピアスが並び、少々露出が多めのスポーティな今風の服装。街中でも目立つ存在感だが、それは雰囲気だけが理由じゃない。彼女自身が凄く美形なのだ。
透き通るような肌に、大きな瞳とスッキリ通った鼻筋。スッピンでも確実に美人だろう。
「私は透視能力を持っているの」
「ええっ! 透視能力!」
驚いて思わず立ち上がってしまったブルーを、ブラックは上から下まで眺める。
「あっ、お前見たな!」
ブルーは思わず下半身を押さえた。
「見るほどの価値は無かったけどね」
「なにを! 平均ぐらいはあるだろ! 平均ぐらいは!」
「見栄でも大きいって言えないのが悲しいねえ」
(くっそ、ああ言えばこう言う、憎たらしい奴め)
「そんな服の下を見れるだけで、戦闘に活かせるのかよ!」
「服の下だけじゃないよ。なんでも透視できる……おえっ」
「大丈夫か、ブラック」
急にえづいたブラックにレッドが声を掛ける。
「内臓まで見ちゃった……」
(大丈夫なのかな? このメンバーで)
「さあ、最後に君の紹介を頼む」
「あっ、ああ……」
(いよいよ俺の番か。自己紹介なんて高校の入学式以来だから緊張するなあ)
「お、俺は青井大地、二十歳。兵庫県出身で……」
「だから個人情報を言うなって!」
(レッドに怒られたよ。自分だって名刺配ったくせに)
「俺はブルー。超能力は第六感です」
「第六感!」
(フッフッフ。みんな驚いてるな。それほど素晴らしい能力なのか)
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