祓い屋、廃校へ行く

アイアンたらばがに

大掃除

 昔、神社を取り潰し、製薬会社の極秘実験施設が地下に建設されたと言われている土地に建てられ、生徒が突然発狂してガソリンをばらまいて火をつけた挙句にそこかしこで刃物を振り回し、首つり死体が果実のようにぶら下がった事件が起きたと言われている禍苦世無高校。

 それ以来怪奇現象が馬鹿みたいに山ほど起きることが有名になってしまい、肝試しをする若者がテーマパークのように列を作り、その誰もが死体となって帰ってきたせいで廃墟となってしまった。

 困り果てた市は一縷の望みをかけて祓い屋へと相談した。


「ふぅむ……」


 腕を組んでソファにどかりと座った彼は阿野世 送琉あのよ おくる

 数々の事故物件や心霊スポットを除霊し、人々が集まる観光地へと仕立て上げた凄腕の祓い屋だ。


「それで、どうでしょうか」


 市の職員が冷や汗をかきながら、送琉の返事を待っていた。

 如何せん今まで送琉が取り扱ってきたどの案件よりも規模が大きいものであるため、臆していると思われたのだろう。


「その程度、造作もありません、私が除霊しましょう」


 送琉はこの程度の案件では臆さない。

 胸をドンと叩いて、快く依頼を引き受けた。

 早速、市の職員とともに現場へと向かう。


「これはひどいな」


 現場を見た送琉の口から思わずそんな言葉が漏れる。

 無理もない。

 その外観は地獄もかくやと言わんばかりに禍々しく、血濡れの壁は焦げ跡が所々について酷いアクセントになっている。

 地面などは血に塗れたせいでさながらレッドカーペットのようだ。

 しかし、それ以上に送琉が感じたのは種々雑多な怨嗟の声。

 とんでもない数の怨霊がこの場に留まっている証拠であった。

 市の職員は外観を見ただけで失神してしまっている。

 送琉は落ち着いて特殊清掃の業者を呼んだ。

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