神様対神様
九々理錬途
神様対神様
お客様が神様だとしてだ、
ならばこの店に客として存在している者は全員が神様と言うことになろう。
この僕も客なので神様なわけだ。
同じ神様としてお前に問いたい。
そのレジの人が会計をしてくれないでお前がカゴに入れたものを外へ持ち出した時点で、お前は神様から泥棒に堕ちるのだ。
ものすごい降格だとは思わんか?
神様は皆に平等なのだ。
つまり神としての正しい務めは一生懸命な人を見守ることにあるのでは無いのか?理不尽な要求を飲ませることでは無いはずだ。
確かに急いでいたのかもしれない、暑さでイライラしていたのかもしれない、本日、嫌なことが重なったのかもしれない、便所へ行きたくて我慢をしていたのかもしれない、観たいテレビ番組が始まってしまうので帰宅を急ぎたかったのかもしれない。
会計が遅いとお前は怒りを露わにしたが、新人の研修中の名札が目に入らんのか。レジの脇にも札が下がっていたのだ、それなのにわざわざそのレジを選んだだろう?
この神様である僕は見ていたぞ。
そして自分を神様だと大声で名乗ったな?
客は神様だと言ったな?
入りきれない程のアルコールの入った缶を、たった一枚の小さな袋に入れろと言う方が間違ってやしないか?それを入れることができるとしたら異世界から転生してきた魔法使いか錬金術師だけだぞ。多分。
神様のくせに僕を含む他の神様からの言葉も暴言で蹴散らすとは何事だ。
聞く耳も持てないで神様と言えるのか。
出入口で手に持ったその缶を一本、開けて飲み干したな?
貴様が車に乗り込んで二本目のアルコール飲料に再び口を付けないかを、この神である僕が店内から見張っていよう。
さあ、車に乗るが良い。
短気な神よ。
僕以外の神様も見ているぞ、店内から。
さあ。
エンジンをかけろ。
ハンドルに手をかけろ。
そして、手にしたその口の開いた缶に再び口を付けろ。
一ミリでも貴様の車のタイヤが前進したら。
即、通報してやる。
神様として。
この世界の法を守る機関に。
さあ、ほら思った通りだ。
お客様は神様だ、逆らうことは許されないと、そうだ。
自分で言っていたな?
神様と神様と神様と神様と神様と神様と神様が、
先ほどよりも随分と増えた神様の集団が、
今、お前のことを、
見ているぞ。
少し離れて並んで携帯電話を片手に外を見ているいる神様と神様と神様と神様と神様と神様と神様、……何人いるのか正確には不明だが。
子供の神様もおられるぞ「あのようなことをしてはいけない」そう溢している。
研修中の店員さん、酷い目に遭ってしまったが、それは神様のすることではない。泣かずとも良い。悪い神が来ただけのことだ。
さあ、逃げられると思うなよ。
悪者の神め。
◇終
神様対神様 九々理錬途 @lenz
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます