第6話【Side】予想外の苦戦
「はぁ……はぁ……おい! ポーションをよこせ! 毒まで喰らってしまった!」
ハルトは助けを求めていた。キングモンキーが振り下ろした拳を間一髪で避けたものの、拳の爆風で吹っ飛んだ上、唾液に含まれている毒まで浴びた。拳が直撃した地面には、大きな穴が開いている。
「あのキングモンキー、なんて強さなの……ポーションはこれが最後の一本よ!」
レオンが抜けた代わりに女魔術師のミネスが後方支援に回っていたのだが、キングモンキー相手では役に立つわけがなかったのだ。
「なんだと!? くそう! 今回のポーションはやけに効きが悪いな……」
「ハルト! 俺も毒を喰らっちまった……半分で良いから分けてくれ……」
「なんだって!? い……一旦撤退だ! 逃げろ!!」
攻撃力が高いグルドまでもが毒を負ってしまったら、キングモンキーを倒す手段など彼らにはない。
なんとか振り切って逃げたものの、三人とも既にグロッキー状態だった。
「うぅ……あの道具屋め……まさかこのポーションただの水じゃないだろうな……全然回復した気分になれないぞ」
ハルトは悔しそうにしていた。
「ハルト……毒が完治した気分がしねぇんだが……」
「グルドもそうなのか! 実は俺もだ。くそう偽ポーションを売るとは何と卑怯な……。とにかく直ぐに治療しに行く必要がありそうだ。このままでは俺たち死ぬぞ!」
普段からレオンの錬金したポーションしか飲んでいなかったため、本来のポーションの効果を忘れていたのだった。
フラフラ状態ではあるが、なんとか街まで戻り公式ギルドの治療専門所へ向かう。
「くそう……ここで治すことになるとは……ポーションよりも高額になったのが気に食わん!」
「しかも今回の任務が失敗しちまったから次回はBランクの依頼しか受けられない。下位のジャイアントモンキーくらいしか……」
「あんなの今まで一瞬で倒してきたじゃないの!」
ギルド依頼で失敗したペナルティは大きい。一度でも失敗すればしばらくの間冒険者レベルのワンランク下の依頼しか受けることができなくなる。
しかも五回連続で失敗してしまうと二度と依頼を受けることができなくなってしまうのだ。
「報酬も激減か……」
「気にすんなよハルト! そもそもあんなキングモンキー見たことねぇくらい強かったぞ。ありゃランクSの依頼に匹敵するんじゃねぇのか?」
グルドは体を張って戦うので、相手の強さについては理解ができる男である。
「むしろしばらく放っておけ。他の冒険者も同じ目にあってギルドが慌てるだろう。そうすれば俺たちの罰も取り消しされるだろう。おまけに慰謝料も払ってくれるはずだ」
「さすがハルト!」
ハルトたちは勘違いをしていた。
今まではレオンの作ったエリクサーを飲んでいたから、キングモンキー相当のモンスターを討伐できていただけなのである。
今回の任務失敗になった依頼を引き継いだのがレオンとソフィアだということを知るのは、まだ先のことであった。
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