元カノと『七日間だけ』のマッチングをした。

人間 越

プロローグ

『もしもし?』


 もう聞けないと思っていたその声を、再び聞けたとき。

 それだけで俺は泣きそうになっていた。


「も、もしもし!」


 返す声は緊張で上擦る。

 それは人生で初めてマッチングアプリで知り合った異性との電話だから――ではない。

 その証拠に、次の言葉を発せずにいた。俺だけでなく、互いに。

 その理由はきっと、それ以上何かを喋ろうとすれば溢れてしまいそうだったから。


『……久しぶり、だね?』


 互いに何も言えない沈黙を破ってくれたのは、彼女の方だった。

 その声はやはり、湿っていた。


 年々暑くなる夏真っ盛りの、ある夜。

 俺、藤ヶ谷智也ふじがやともやは、学生時代に死別した彼女、友利涼花ともりすずかと十年ぶりの再会をした。

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