第3話 義弟は義姉が大好き


「あーもう! 姉上との勉強を僕がどんなに楽しみにしていたか知らないの? 

家庭教師が帰った後での二人きりの勉強会なんて うふふふふ 天国でしたよ。 あの頃は僕の方が小さかったから 姉上のツムジを見られる唯一のチャンスでしたからね 

わからないってふてくされる姿も 分かったと喜ぶ姿もどちらも大好きでした。

領地経営だって 僕たちの幸せの為には必要な事ですからね

だから 大丈夫です。

8年で随分大きくなったでしょ? ほら … 隣に座っても 姉上よりも大きいから ツムジをなぜてあげられる ヨシヨシって ね?

あ…もう こんな可愛い 素直な姉上の隣に居られるなんて むしろ 俺王子に感謝すべきか?」


身もだえしながら 力説するヒビキの 最後の一言は 幸い ビクトリアの耳には届かなかったようだ


「ありがとう ヒビキ 貴方に慰められる日が来るなんてね 

ヒビキが義弟おとうとで本当に良かったわ

ねえ ヒビキ 甘えついでに お願いがあるんだけど?」


ピシ!っとヒビキが”聞く体制”になる


「なんでもどうぞ!」


「お父様とお母さまに今日のご報告をするときは一緒に行ってくれる?

こういうことは早い方がいいんでしょ?

ホレンソウ?って 貴方とお父様 よく言っているでしょ」


ヒビキが決まり悪そうな顔をする


「父上はとっくの昔に知ってるんじゃないかなと…」


「え?なぜ?」


不思議そうなトリアに肩を竦めるヒビキ


「単なる直感です」


「お父様 ガッカリなさるわよね せめて 王子に申し開きだけでもしておくべきだったわ」


「大丈夫だってば!

 もう辛い気持ちなんた忘れちゃってください。

姉上が冤罪だってことはすぐに知れ渡るようにしていますからね」


トリアを安心させるようににっこりと笑うヒビキ


「え?まあ そんなに上手く行くモノかしら?

 免罪だと分かってもらえるなら それはとても嬉しいけれど」



ヒビキがトリアの側の窓のカーテンを少し開ける


「それより ほら 街を抜けましたよ」


二人の身体が密着するが トリアは気にしない


「え? 屋敷に戻るのではなくて?

どこへ向かっているの?」


ヒビキは悪戯が成功した子供のように笑う。


「このまま ちょっと家族旅行に行こうかなあって 父上と計画していて、

僕は 成績優秀だから少しくらい学校を休んでも問題ないですし

姉上はどうせ 同じでしょ?」


「むう…失礼ね」


「うーーーん 姉上が可愛らしすぎる」


ヒビキはトリアに抱き着く


「でも」


さすがに トリアがヒビキを押し戻し ヒビキがつまらなそうな顔になる


「王子に糾弾されて学校を休むなんて、私が悪いことをしたと思われないかしら?」


「姉上、僕がなぜ ネイビー伯爵家の養子に選ばれたか理解していますか?」


ヒビキは トリアが食いつく話題を思いついたようだ。


「え?

それは ヒビキに 夢見の才能があるから でしょ?」


「正解!

では なぜ ネイビー家が伯爵位なのに王家の相談役まで賜っているのかもご存知ですよね?」


「それは、わがネイビー家が”夢見の一族”だからよ」


得意げに応えるトリア


「ふふふ どや顔ですね。 では ”夢見の一族”とは?」


「予知夢を見る一族!よ 

残念ながら わたくしにはその才能がまだ無いようですけれど」








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