第2話 義姉は義弟を心配する
「そう、父上の…… ねえ ヒビキ お父様は今日の事を知ったら なんておっしゃるかしら?」
心配そうなビクトリアだが 隣のヒビキには深刻さはなく、いつの間にか手にした姉の扇を
「ああ 大丈夫ですよ 父上は母上の次に姉上を愛していますからね」
答えになっていない気がするが ビクトリアは頷く
「そうね ヒビキも お父様にとってのお母さまの様な方を見つけて欲しいわ…
今日 こんなことがあって、王子様に嫌われるような姉がいる家に来てくれる子なんているかしら?」
「え?僕の伴侶の心配ですか?」
「ほら! だからいつも言っていたでしょ?お茶会で女の子に冷たくしちゃだめよ 女の子には優しくしなさいって!!
もう! ちっともいう事聞いてくれないから こんなことに…」
今日のビクトリアは若干情緒不安定なのか 突然涙ぐんだ。
ヒビキは刺繍の入ったハンカチをビクトリアに渡す。
「はい ハンカチどうぞ、姉上にいただいたものですけど 姉上になら貸して差し上げます。
姉上、 僕って一途なんで、好きな子には優しくできているはずです」
「あら? ヒビキに好きな子が? わたくし気が付かなかったわ」
「いいんですよ 気が付かなくて」
「姉として応援したいもの でも こんな姉が居たら… 邪魔よね
はあ 学校行きたくないわ」
ビクトリアの視線が下がり そんなビクトリアの手をヒビキが握る
「一緒に学校へ行くの 止めますか?」
「は?
ちょっと待ってよ ダメよ 学校は行かなくっちゃ
わたくし ちょっとお勉強出来ないけど 出席だけはしているのよ 授業だって 寝たこと無いのよ!」
「姉上は 寝ないようにノートに落書きいっぱい書いてるタイプですからね」
「え? ヒビキ!! わたくしのノートいつ見たの?」
「あ やっぱり そうなんですね」
「何 その 可哀そうな子を見る目やめて頂戴! わたくしは姉なのよ 数か月先に生まれたのよ 敬いなさい!!!」
「くす 元気になりましたね 姉上」
くすくすと笑って見せる。
「おかげ様で…
なによ クスクス笑いなんてして
あら?いいわね 悪の華!って感じよ ヒビキとわたくし 釣り目が似てるって母上が言ってらしたものね」
じゃれあう姉弟に 暗かった空気が明るくなる
「今日 王子に意見するときには 僕が扇で顏を隠して姉上を守れば良かったかな?」
「あ あれは わたくしだって 少し慌ててしまったのよ。 弟に守られるなんて 不名誉な事はもう二度としないわ。
だいたい あの時だって ヒビキが 無理やりに連れ出したりするのが悪いのよ わたくしだって少し驚いただけで対応できたのよ」
「はいはい でも あの姉上の顔可愛らしかったなあ」
「んもう!扇 返しなさい!」
「姉上 ちょっと反応が子供っぽ――」
「それにね ヒビキ 王子に反抗してネイビー家に影響が及べばあなたも困るのよ。 わたくし一人ならどうとでもできても 跡取りのあなたは違うのよ 自覚がたりないのではないかしら?」
ビクトリアはヒビキから取り返した扇で口元を隠しながらヒビキに説教する
「ねえ姉上 僕は姉上とネイビー伯爵家だったら姉上を取りますよ」
「ダメよ ネイビー家を取りなさい。
貴方は次期当主 夢見の力があることも分っているのです
虹の色を名乗る貴族を貴方の代で途絶えさせるなんて許しません。
国と民草の為にその力を使うのは義務ですよ」
「はいはい では 僕は姉上とネイビー伯爵家のどちらも捨てる事はイタシマセン これでいいですか?」
「よろしくてよ」
扇の影から優しく微笑んだビクトリアだが ふと また視線が下がる
「あれ? 姉上 また俯いて どうしたんです? いつも僕には 顏をお上げなさいって言ってるくせに…
え? 泣いてます? そういえば姉上も あの王子に憧れてましたもんね 泣くほど好きでしたか?」
「ふふっ王子サマは好きだったわ。
キラッキラの王子様ですもの誰もが憧れる王子様だと思うわ。
だた 殆ど 面識が無いような、面識がなかったからこそかもしれないけれど あのような場で女性を罵倒するような方だとは思いもしなかったわ。100年の恋も冷める、とはこの事ね ふふ」
「では?」
「ただ あなたに申し訳ないと思って…。
8年前に 可愛らしい わたくしよりも小さいヒビキがわが家に来てくれた。
わたくしと一緒に 家庭教師について学んで 一緒に学んでいるのにあなたの方がよく理解していてちょっと悔しかったけれど 家庭教師が帰った後でもう一ど教えてくれたわね
それから わたくしがマナーの復習と称してお茶を楽しんでいる間に お父様に付いて貴族令息としての勉強をして
最近では 領地経営についても学んでいるのでしょう?
お父様は ヒビキは天才だって喜んでいらっしゃるけれど ヒビキが優秀なのは 学校でも家でも寝る時間を惜しんでまで頑張っているからだわ
そんな 貴方の努力や未来に わたくしは傷をつけてしまったのではないかしら?」
ヒビキは軽く目を見張ってから 呆れたような顔になり 小さく溜息をつく
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