第21話 評価
国仲さんとのランチの後、私は『相手のことを考える』がどういうことかを、ずっと考えていた。
要さんのことを考えてるかって言えば、私は自分中心にしか考えられていない気がしている。
私の中ではまだ要さんと付き合うことと、それ以前の関係を行ったり来たりしていて、付き合うことがどういうことかを計りかねている。
要さんが抱きついてくるのは嫌じゃないし、キスも嫌じゃない。
でも、それは全部要さんからもたらされるものだ。
多分、要さんは私に対して精一杯のことをしてくれている。
じゃあ、私は何をすればいいんだろう。
よく分からなくなったので、スマホで検索をしてみる。
恋人 求めるもの
検索ボックスにそう入力して引っかかってきたのは、
顔が好み:?
うーん、どうなんだろう。
私は人並みだって思ってるけど、要さんにとっての好みかどうかはわからない。
優しい:△
優しいのはむしろ要さんの方だろう。
もうちょっと優しくするのは、頑張れるかもしれない。
誠実:×
これは全然できている気がしない。
私は自分勝手で要さんを引っ張りまわしてる気がする。
どうしよう。
経済力がある:○
要さんより入社が後なので、仕事ぶりから見ても給料は私より要さんの方が上だ。
とはいえ、一人で暮らして行くくらいはできているから及第点だとは思いたい。
趣味が合う:○
最近要さんにオンラインゲームを教わっているから、まだ頑張れている方かな。
金銭感覚が合う:?
大抵一緒に出かけた時は自分の分は自分で出すし、
特に要さんのお金の使い方に気になったこともない。
要さんにとってはどうなんだろう。
結果は精々50点に届くかどうかという厳しいものだった。
駄目なのは『優しさ』と『誠実さ』
でも、これって付き合う上で一番大事なやつじゃないだろうか。
要さんにいつ愛想を尽かされても仕方がないって言えるくらい、私は足りてない。
要さんと付き合うことを選択したのは私なのに、私は恋人らしいことを全然できていない。
いきなり要さんにキスを強請ったりするような存在にはなれるわけではないけど、私の中で要さんの存在を変えないといけないのは見えて来た。
すぐに大きな変化を出せるわけじゃないけど、少しずつでも行動を変えて行く努力はすべきだろう。
だって、要さんといること自体は私は好きなのだ。
平日はそれぞれの仕事とプライベート優先にはしているけど、つい、見えない壁の向こうの要さんを想像してしまう。
もう仕事から帰ってきたのかな、とか。
今日は何を夕ご飯に食べたのかな、とか。
まだ寝る時間には少し早いから、ゲームをしてるいるんだろうか、とか。
私のことを少しでも考えてくれているのかな、とか。
要さんに会い辛さはあるのに、会いたい。
土曜日にいつものように要さんと会って、開口一番に私は謝りを出す。
「この前は誘って頂いたのに、断ってしまってすみません」
少しでも誠実になるために、引っかかったままのことはうやむやにしないようにしようと決意して、今日は謝ろうと決めてきたのだ。
「紗来ちゃんは気にしなくていいのに。残業で疲れているのに、誘っちゃったわたしの方が悪いんだから」
これは要さんの優しさだ。
要さんって本当に私に優しくて、私が優しさを示せるような隙はなかなかない。
「じゃあ今度残業のない平日に行きませんか?」
「そうしようか。あと、クリスマスイブは仕事が終わった後に会いたいな」
恋人ができる日なんて来ないと思っていた私は、恋人と過ごすクリスマスなんて他人事だと思って生きてきた。
「何か買ってきてどっちかの家でパーティするでもいいし、どこかに出かけるでもいいけど、どっちがいい?」
「でも、今からだとお店の予約も難しいんじゃないでしょうか?」
もう既に12月に入っていて、めぼしい店の予約なんて埋まっているだろう。
「じゃあ家でゆっくり過ごそうか。定時後に1階で待ち合わせして、一緒に買い出しに行こう」
笑顔の要さんの提案を断ることなんて、勿論できなかった。
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