君はみんなのマドンナ(仮)〜君の魅力に惹きつけられて〜

ハル

第1話 君はみんなのマドンナ①〜君の魅力に惹きつけられて〜前編〜

♪♫♬~…


私の聴いているヘッドフォンから音楽が流れる。




「♪♫♬〜……」



鼻歌交じりで歌う私。



バッ


ヘッドフォンが外された。




「あっ!!」



振り返る視線の先には、私の兄・ユウヒこと、ユウ兄の姿。



「ユウ兄っ!!」


「お前、それだけ歌も上手なのに何故、業界入りしないんだ?」


「無理っ!!」


「前みたいにスタジオとかに見学行こうぜ?絶対、声がかかるから」


「ヤダっ!絶対に行かない!第一、業界入りなんて誰がするかっつーの!そりゃ、好きな俳優さんとか女優さんとか、いたりして会えるんだけど絶対に嫌っ!」






―――― そう


私の兄・立花ユウヒ。25歳。


一応、業界の人間ではあるが、俳優さんではなく裏方の仕事をしている人間である。


色々な幅広い年齢層の業界の友達がいるんだけど――





申し遅れました。


私の名前は、立花ハルカ。15歳。現役高校1年生。



小学生の時は、兄につれられ一緒に職場に足を運んでいたんだけど、中学生になり、ピタリと行くのを辞めた。


友達と遊ぶ方が優先で、行く事がなくなってしまったからだ。





「そう言えば、今度、お前の大好きな、SAKURAI さんが、CDを出すらしい」


「ヤッタ!待ちにまったCD!買わなきゃ!」




気付けば、FANになり、どれ位の年月が経つだろうか?


音楽のダウンロードに何故か、同じ人ばかりをしていた事に気付いた。


そして、SAKURAI さんというアーティストをファンとして、今を至っている。




――― 数日後 ―――




早速、CD を買いに、CDショプに出掛けた。



「あった!!」



スッと別の手が背後から伸びてくる。



ビクッ


驚いたのと同時に肩が強張り、伸ばした手を引っ込めた。



「あっ!すみません……」

「いいえ…」



相手は去る。




再び手を伸ばす―――が……




「えっ…?」


「……」


「…………」


「………………」




―――在庫切れだ―――




「…嘘…」



「…………」



「…ついてない…」



私は諦めるしかなく、CD ショップを後に出る。




帰ろうとした、その時――――




「ねえ!」




グイッと私の手を掴み引き止めた。




「何?」



振り返る視線の先には、私と、そう変わらない同じ位の男の子。




「はい!」

「えっ…?」

「これが最後の一枚だったんでしょう?」

「あ、…うん…まあ…でも、また来るし」


「すぐには来ないよ!当分は厳しいみたいだけど?だから、君にあげる!もちろん、現金と引き換えで」


「えっ?」


「それは、そうでしょう?」


「第一、君も買う予定だったなら、お金を持って来て買いに来てたんだろうし。それとも何?万引きするの?実は常習犯とか?」


「失礼なっ!違います!誤解を招くような人聞きの悪い事、言わないで下さい!」


「だったら、ほら!」


「でも、申し訳ないし」


「良いから!早く受け取って!俺、忙しいんだけど!時間厳守なんだ!」




私の手を取り、押し付けるように今、買ったと思われる CDを渡された。




「…………………」



「ほら!早く!」



私は現金を渡す。




「確かに受け取りました。それじゃ!」




彼は足早に去って行く。



私は、お礼を言いそびれた事に気付く。




「あっ!お礼…」



そう思い、彼をすぐ追うも彼の姿はなかった。




「早っ!」


私は、渋々、帰る事にした。






ある日の事。


「♪♪♬♫〜……」




スッと誰かがヘッドフォンを取り上げた。




「あっ!」



そして、私の隣で、そのヘッドフォンをはめる。




「ちょ…」




ドキン…




《あれ…?この人……》



記憶が蘇る。


凄く鮮明に覚えている。




―――― そう最近の出来事だ。






【君にあげる。現金と引き換え……万引き常習犯?】





初対面で、ありながら失礼極まりない発言された。




「………………」





「やっぱり良いよね? SAKURAIさんの曲」




私の方を見て問いかけた。




「う、うん…」

「はい!」

「あっ…どうも…」

「いいえ」





《結構イケてる……でも…何処かで……》



「あっ!ありがとうございました!」

「えっ?」


「現金引き換えとはいえ、CD譲って下さってありがとうございます。お礼、言いそびれたから」


「あー、別に気にしないで。ところで、いくつ?高校生?見た所によると…俺と、そう変わらないよね?」


「えっ?あっ、うん…一応…高1…」


「一応って…何?えっ!?もしかして、年誤魔化しの高校生!?実は、コスプレ好き?」


「ち、違いますっ!!」


「ハハハ…嘘、嘘。マジに取らないの!」





ドキン…


胸が大きく高鳴る。





《ヤバイ…!ヤバ過ぎる…!》



無邪気な笑顔を見せる男の子。


仔犬のような無邪気さを思わせる雰囲気。


可愛い感じで、叱ったら、シュンとなってしまうような……許したら、パアッと笑顔になって、また走り回るような…


そんな情景が思い浮かぶ。



「ねえ、名前は、何?」

「えっ?ハルカ…」

「ハルカちゃん。俺、ユヅキ!」

「ユヅキ君…」




その時だ。




「あの…すみません…」

「はい?」




3人の女子高生が彼に声を掛けてきた。



「橘ユヅキさんですよね?」

「はい」




《たちばな……?この人も、たちばな…?親戚?》

《いやいや…こんなイケメンで可愛い男の子の親戚はいないし…》




「握手してください!」

「はい」



握手をすると凄く嬉しそうな女子高生。

涙ぐむ姿も見受けられる。



《…そんなに…!?》




「ありがとうございます!」

「いいえ」

「お仕事頑張って下さい!」

「ありがとう」




《お仕事……?えっ!?》




彼女達は去って行く。





「…あの…あなたは…何者なのでしょうか?ていうか……たちばなって…何、たちばな違い?」


「えっ!?」


「私、立花ハルカって言うんだけど…漢字違いかな?」


「俺、木へんのつく、一文字のたちばな」


「じゃあ、漢字違いなんだね。私、立つと花の漢字を使った二文字だから」


「漢字違いとはいえ、目で見なきゃ分からない名前もややこしいね」


「そうだね」




私達は笑い合う。




「あっ!それじゃ、俺、仕事だから」




そう言うと去って行った。




「仕事…?さっき、女子高生の子も言ってたっけ…?バイトじゃないんだ」





私は、疑問の中、帰ることにした。





その日の夜――――




「ねえ、ユウ兄。ちょっと聞き…」

「おっ!要約、業界に入る気なったか?」




私の言葉を遮(さえぎ)るように、ユウ兄は言ってくる。




「違うし!それに関しては一切、NOー!!一生かけても業界入りはしないので!」


「何故!?音感完璧で歌が上手い。容姿など全てにおいて問題ないお前なんだ。業界入りは夢じゃないぞ!」


「嫌ですっ!そんな事よりも、ユウ兄、橘ユヅキって知ってる?」


「橘…ユヅキ…?あー、脇役で人気が出始めてる俳優さんだな」


「そうなんだ…だからか…」 


「彼が、どうかしたのか?」




私は、ユウ兄に話をした。





「あー、そういう事か!彼なら、お前と同級生(タメ)じゃないか?」


「そうか」


「サインなら貰って…」


「大丈夫!ちょっと気になっただけだから」


「冷たいな!そこはお願いと言っておけよ!橘ユヅキ君が可哀想じゃないか?」


「それは…そうだけど…お互い良く知らないし。偶々、会っただけだから」


「偶々?」


「そう!ありがとう!」




私は、自分の部屋に戻った。







ある日の事。




「あっ!!立花ハルカちゃん!」



誰かが私の名前をフルネームで言った。




ビクッ



「えっ!?」




振り返る視線の先には―――――




「あっ!」




橘ユヅキ君だ。




「どーも」

「どうも」


「ねえ、SAKURAIさんのアルバム出るの知ってる?」


「えっ?マジ?知らない!」

「予約したら先着順限定のプレミア付きなんだけど」

「ええーーっ!!橘君、まさか予約済み?」

「もちろん!」




「ええーーっ!マジで!?…ユウ兄から何も情報入ってない…!」


「お兄さん業界の人?」


「裏方だけど、一応、業界に関しては色々と情報は早いんだけど…有名人と関わらないわけじゃないんだ」


「そうなんだ。それで、ハルカちゃんは業界入りしないの?」


「えっ?しないよ。だって大変そうだし。大変じゃなくても業界入りは、しようと思わないな〜」




「もったいない!」

「えっ?どうして?」


「容姿も悪くないし、ハルカちゃん、音感凄く良かったから」


「あー…それ…ユウ兄も言ってたな~」

「だったら」

「良い。辞めとく」




そこへ―――――




「すみませーん、握手して下さい」

「はいはい」




快く対応する橘君。




《そうかー…そうだった》

《業界の人間だった》




普通に話し掛けてきた彼に対して全くといって良い程、業界の人間とは思わせない位、存在を意識してなかった



きっと彼は、そういうオーラを醸し出しているのか?

それとも対等だから?





「どうしたの?」

「えっ?あ、ううん」

「そう?あっ!携帯番号教えて!」

「えっ!?」


「なんかハルカちゃんとは、これからも付き合っていく事になりそうだから」


「えっ?ええっ!?いやいや…それは、きっと思い過ごしだと思う」


「ええ〜っ?そうかな〜?」


「そうだよ!」




「そこをなんとか」

「無理!」

「ええーーっ!?」


「だって、芸能人と、こうして話せているのが不思議な位なんだけど……」




「それは、きっと君が、そういう人間だから」

「えっ?」

「人を惹きつける何かあるんだと思う」



「………………」



「芸能人だからとか、そういうの意識しなくて対等に話してくれてると思うから」



「橘…君…」

「はい」

「えっ?」

「俺のプライベート番号」

「えっ!?」

「連絡する、しないは君次第!」

「そんなのズルい!」



「大丈夫!しなくても嫌いになったりしないから」

「分かった。じゃあ取り敢えずもらっておくね」

「OK!じゃあ!」



そう言って橘君は帰って行き私達は別れた。 





「ハルカ」

「何?ユウ兄」

「お前の事、噂になってる」

「噂?何の?」

「橘ユヅキ君との事」


「えっ?どうして?」

「一緒にいた女の子誰ですか?って」

「えっ?」


「なんか一緒にいる所、目撃されてたみたいで、スタッフとか彼に聞いてた」


「迷惑かけてるじゃん!」


「いや…それが悪い評判なくてさ好評なんだよな~。まあ、彼がうまく言ってんのだろうと思うけど」


「…そうなんだ…」



「後、プライベートの番号知ってるらしいな」


「えっ?あ、うん…まあ…つーか、なんで、ユウ兄知ってんの?」


「彼が話してくれた」


「ええーーっ!」


「この際、仲良くしたらどうだ?同じアーティスト好きだし話が合うんじゃないか?」


「まあ…考えとく」


「いやいや、そこは、そうする!って遠慮しなくても良いんじゃないか?彼から番号教えてくれたんだから」


「良いでしょう?私なりの考えあるから口出ししないでよ!」


「はいはい」




そして、私は考えるも勇気を出して連絡する事にした。


しかし、橘君は出る事はなく、一応、ショートメールを送って一言添えていた。


そして、夜も更けた頃、連絡とショートメールが入っていた。





そんなある日の事。



♪♪〜


『ハルカちゃん聞いてー。主演ドラマゲットー!』




そういうメールが届いた。




♪〜


『ヤッタじゃん!おめでとう!』


♪♪〜


『サンキュー!』




絵文字交えた文章。


普通の友達の会話だ。



連絡先を交換して以来、私達は本当の友達のように接するようになった。




――― ある日の事 ―――――





「向こうでドラマ撮影だってー」

「嘘!?」




そういう女子高生の会話が聞こえてきた。



「行ってみよう!」

「うん!」




彼女達は足早に向かったようだ。


そして、偶然通りかかった場所でドラマの撮影に遭遇さした。




《うわっ!マジだ!》

《しかも、ユヅキ君じゃん!》




まさか、こんな所で遭遇するとは―――――




「ハイカットーーっ!」




そして――――




「あっ!!」



私に気付くユヅキ君。



「ヤバっ!」




人混みを掻き分け、歩み寄るユヅキ君。




《ヤバイ、ヤバイ…駄目駄目!》




周囲の視線がチクチク刺さる中、関係なく声を掛けてくるユヅキ君。




「ハルカちゃん発見!!」




背を向けている私の背後に歩み寄ると振り返らせた。



キャーキャー騷がれる中、私達に視線が集中した。






「おいっ!」 

「はい?」

「あの子は?」

「えっ?」


「ユヅキ君と一緒にいる女子高生だよ」

「いや~…そう言われましても、沢山いるので…」

「今、向き合っている彼女だよ」


「あー…同級生じゃないんですか?彼、現役高校生ですし。彼女がどうかしたんですか?」


「いや…後で彼女の事を聞いておいてくれないか?」

「えっ?はい…分かりました」

「あの子には…何か…特別な力を感じる」






――――― そう、これが、      

          私の人生を左右するのだった――









ある日の休日――――




「ハルカ、せっかくのお休みの所悪いけど、ユウヒの職場に、これ渡してきてほしいの」


「えっ!?」


「大事な書類らしくて、午後からある今日の会議で使うからって連絡あって。お願い出来る?」


「ええーーっ!!面倒。忘れた本人に取りに戻らせれば良いじゃん!」


「仕方ないでしょう?」


「全く!」




私は、ユウ兄の職場に行く事にした。

受け付けに行き、事情を説明。

入場許可証を下げ、案内員さんと一緒に向かう。



色々な芸能人、有名人とすれ違う中、平静なフリで過ごす。


小学校までスタジオとか来ていた私は、久しぶりの感覚と懐かしさの中、見学感覚でスタジオ内を回る。





「ユウ兄っ!」

「おっ!ハルカ!」


「大事な書類!しっかりしてよね!せっかくの休日潰された!」


「いや、ごめん、ごめん。助かった」




そこへ―――――




「あーーっ!ハルカちゃんだっ!!」

「えっ?あっ!ユヅキ君!?」



ユヅキ君は、抱きついた。



ドキッ




「うわっ!」

「こらこら、ここはスタジオだぞ」


「あっ!ユウヒさん、お疲れ様です!いや…久しぶりに再会した感じで、つい…」


「そうだね!ユヅキ君、多忙で、お互い連絡しあってなかったもんね」


「そう!」



私達は、連絡を抑えていた。


ユヅキ君が、忙しくなるからしばらく連絡出来ないからって前もって話していて、


メールも入れた所で返信はないと思うからって…


だけど、私はそれを踏まえた上で少しの励みになるようにと思い、時々、入れていたのだ。


でも、そんな中、夜遅くだったり、朝早く返信くれていて、その状況が、ずっと続いている。




「どう?最近、かなり忙しくて大変そうだけど大丈夫?」


「大丈夫!時々、入っているメール見て励みになってるから。でも、今日は、ハルカちゃんに会えたから特別に更に元気になった」


「そう?それなら良かった」


「じゃあ、ハルカ、俺は大事な会議あるから行くよ。一人で大丈夫か?」


「うん…多分、大丈夫。でも、一応、案内人の連絡先は聞いてあるから」


「そうか?分かった。それじゃ、ユヅキ君、また。無理しないようにな」


「はい!ありがとうございます!お疲れ様です!」


「ああ。お疲れ様」


「ユウ兄!頑張ってね!それと、今度、何かおごってねーー」



「えっ?分かったよ。リクエスト何か考えておけ!」

「ヤッタ!」



ユウ兄は去った。




そこへ――――



「あっ!いた、いた。おいっ!ユヅキっ!勝手な行動するな!」


「あっ!」と、ユヅキ君。




私達の前に、一人の男の人。


ユウ兄と、そう変わらない年齢だろうか?




「君は!?」



厳しい顔をしたのを伺えた。




「あっ!彼女が前に話していた、ハルカちゃん」



ユヅキ君が言った。




「あー、君が」



少し安心した様子が伺えた。



「はい。すみません。怪しい人物ではないです。とは言っても初対面ですから怪しいも何も信用ないですよね?

初めまして。立花ハルカと言います」



「初めまして。橘ハルキです。ユヅキの兄で、マネージャーしてます」



少し笑顔を見せ挨拶をしてくれた。



「マネージャーさん?ご苦労さまです」

「ありがとうございます。ユヅキから話は聞いてます」

「そうなんですね」


「ハルカさんは、お兄さんもいらっしゃるとか?」

「はい。います」


「ユウヒさん、忘れ物したみたいで、ハルカちゃんが渡しにきたんだって!」


「そうでしたか」


「はい。ところで、ユヅキ君、仕事なんでしょう?行かなきゃ!」


「ええーーっ!ハルカちゃんと、もう少しトークしたい!」


「こらっ!ユヅキっ!」



お兄さんであり、マネージャーの、ハルキさんが軽く叱る。





「はいはい。じゃあ、また連絡する!」

「OKーー!お仕事頑張ってね!」

「サンキュー!それじゃあ!」

「うん」




私達は別れた。




「どうしようかな〜?見学しようとしたけど…帰ろうかな…?でも、せっかく久しぶりに来たからな〜…」




私は、案内人の人に一先ず連絡をし、案内人を待っている時の事だった。




「あっ!いたいた。駄目だよーー。勝手にスタジオ出たら」



そう言って私に歩み寄る中年のおじさんは、私の手をつかみ取り、強制的に半ば強引と思われる態度で連れて行き始める。





「えっ!?あ、あの!ま、待って下さいっ!私!一般人です!」


「えっ?」


「すみません!大山監督、彼女は違います!お兄さんの、お忘れ物を届けに、お見えになられたんです」



ギリギリセーフと言うべきか


案内人の人が来て何とか逃れる。




《良かった〜…助かった》



「そうだったのか!?」

「はい…そうなんです。すみません…」



案内人の方が謝る中、私も頭を軽く下げる。




「いや…こちらこそすまないね。しかし、君、もったいないね」


「えっ?」


「君には何か不思議な力(パワー)がある気がしてならない。…君、少し時間をくれないかい?」


「えっ?時間ですか?」


「良ければでいいんだが…」





帰ろうと思っていたものの、どうすべきなのだろうか?


久しぶりに来て、案内人の人にお願いして、スタジオ内を見学しようと思っていた時の事だった。




「時間は大丈夫なんですけど……すみません、この後のお時間は大丈夫ですか?」




私は案内人の人に尋ねた。




「ええ」


「本来は帰るようにしていたんですけど、久しぶりにスタジオ見学しようかな?って…」


「そうだったんですね。こちらは問題ありません」


「ありがとうございます。お忙しいのにすみません。一人で不安だったので…」


「大丈夫ですよ」



笑顔で答えてくれた。




大山監督は、写真集を手掛けている人らしいのだ。


ちょうど写真集の撮影の最中、監督が用事で席を外し、その間モデルさんも別の用事で席を外し別のスタッフに伝えていたらしいんだけど……


どうやら勘違いというか、人違いされたのだ。


明らかにモデルさんと私じゃ月とスッポンのはずなのに間違えるなんて、モデルさんに失礼に当たるはずなのに……




私はスタジオに行く。




「ちょっと!監督!その子は誰なんですか?」



スタッフと思われる人が尋ねてきた。




「彼女をちょっと写真に納めたい!」

「えっ!?」


「ちょっと目に止まってな。メイクしてもらえないか?」



そして、写真を撮って貰ったてたんだけど……




「ねえ、あの子…誰…?」



ご本人の登場だ。



「偶々、スタジオ見学しようと来ていた女の子らしいですよ。まあ、お兄さんに忘れ物届けに来たという他の理由もあるみたいですけど…」


「へえー…良いじゃん!!あの子!」


「えっ?」



「可愛いし、業界イケると思うけど。もったいない!」


「監督!」


「あっ!ミユキさん!すみません!すぐに準備……」



別のアシスタントスタッフ。



「平気!私、あの子と撮りたい!」

「えっ!?」




そして―――――



「あなた名前は?」


モデルさんが、気さくに声を掛けてきた。




「えっ?ハルカです。すみません!なんか勝手な事…」


「大丈夫!ハルカちゃんって名前なんだ。可愛い名前」


「いえ、そんな…」


「あなた、不思議な子ね。あなたと撮りたいと思わせるんだもの。なにか惹かれるものがある!」


「えっ!?いやいや…そんな事…」




彼女は私をぎゅうと抱きしめた。




《うわっ…抱きしめられてるーーっ!》

《どういうリアクションすればいいのーー?》



「可愛い〜〜〜♪」



その後、モデルの彼女・ミユキちゃんと、色々なパターンを撮った。




ある日の学校帰りの事だった。


私は、本屋さんに立ち寄った。




《あっ!モデルのミユキちゃんだ》




ファッション雑誌の表紙に彼女が飾られている。


初対面で一般人である私が化粧して、一緒に写真撮影を撮った貴重な体験。


鮮明だ。



年が近いのもあってか仲良くなって、お互いの携帯番号を交換したばかりだ。


ある意味トントン拍子に良いことが続き過ぎて逆に怖いけど――――




本屋さんに寄ったのも本が発売されるから是非見てーと、ミユキちゃんからのメールで報告され足を運んだ


元々、ファッション誌は良く見てるんだけど……




パラパラとページをめくる。



《凄い可愛いな〜。ミユキちゃん》

《あれ?袋綴じって珍しい》




その時だ。




「ハーールーーカーーちゃん」




ビクーーッ


突然、声掛けられ驚く中、名前を呼ばれると同時に抱きしめられた。



「きゃ……」



口を塞がれた。




「……っ!!」


「しっ!ここは、お店の中」




私の視界に入ってきたのは―――――




ドキーーッ

更に胸が大きく跳ねた。




私の顔の真横には、ユヅキ君の姿があった。


変装してるも、私は、すぐに分かった。


しかし、私以外は誰も気付いている様子がない。




「雑誌、買うの?」



小声で言うユヅキ君。



片手で私の肩を抱き寄せた状態で、きっと周囲にバレないようにする為か、かなりの密着と至近距離で話をしてくる。



「えっ?あ、うん…」

「じゃあ、外で待ってるから買っておいで」

「うん」



私達は小声で話し、一旦離れた。




雑誌を購入し、店を出ると―――――



「握手して下さい!」

「はいはい」



心よく対応するユヅキ君。


相変わらずだ。


私は、笑みがこぼれる。




「あっ!ハルカちゃん!」




駆け寄る、ユヅキ君。




「雑誌、買った?」

「うん」

「じゃあ、行こうか?」

「うん」



私達は帰り始める。




「やっぱり女の子だからファッション誌、読むよね?」

「もちろん!でも、今回は特に」

「えっ?そうなんだ」

「ミユキちゃんに見てねーって」

「ミユキ…ちゃん?…って…もしかしてモデルの?」



「うん」

「えっ?友達なの?」

「ちょっと顔見知りになっちゃって」


「顔見知り?いや…それ絶対、顔見知りのレベルじゃないでしょう?」


「えっ?」


「やっぱりハルカちゃんは不思議な子なんだろうな〜。俺といい、ミユキちゃんといい。この間ドラマで一緒になった監督さんもハルカちゃんの事を尋ねられたんだよね」



「そうなんだ」

「やっぱり何か惹かれるものがあるんだよ」

「だとしたら凄いね」




私達は他愛もない話をしながら帰って行く。





その途中―――――





「あっ!SAKURAIさんのポスターだ」

「あっ!本当だ!」




CDショップ屋さんに貼ってあるポスターに目が止まり、私達は足を止めた。


その近くに CDが置いてある。


試聴も可能だ。


私達は手に取りヘッドフォンをつける。


肩を寄せ合い密着。






私達は微笑み合い


まるで


恋人同士のように―――――




友達だけど


相手は芸能人だけど


そうは思わせない 彼


自然な感じに過ごす


私達の放課後デート





そして後に


これが噂になってしまい―――――









































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