バックグラウンド

僕は周囲の人を不幸にする。そういう認識になったのはいつからか。

覚えていないということは言えず、はっきりと覚えている。

あれは僕がまだ小学生のときのお話。

小学校4年生の夏休みのことだった。

僕は公園で友人と遊んでいた。まだその頃はその自覚がなかったから、友人を作っていた。

しかし、僕と遊ぶたびに誰かが大けがをするようになった。その夏休みから。

そんなバカなことあるかって思うかもしれないけど、本当なのだ。

木から落ちたり、ずっこけて骨折したり、野球ボールが顔に当たってたんこぶができたり、それはもうみんな散々だった。でも、でも、僕だけは怪我しなかった。

その後も両親が立て続けに大けがをしたり、しまいには僕の幼馴染で、当時好きだった子さえもあんなことになってしまった。

僕は自分で自分を疫病神だと認識した。

他人はどう思おうと、何回「大丈夫だよ」と言われても、僕は自分から避けていった。

そんなことがあったからこそ、僕の周りには人はいない。

なのに、なのに…。


「あのー、ゆーくん、いますか?」


唐突のクラスへの来訪者に、クラスがざわめきだす。

まあ、ゆーくんって呼ばれる人、このクラスでは多いし、対応されるだろうと思い、ゲームにまた集中し始める。


「あの、ゆーくんって誰ですか?」


と同じクラスの女子生徒が対応してるっぽい。あー、なんで練習失敗率3%なのに、失敗してんの?ガチャじゃ3%引けないのに、ここで引くのおかしいよ。絶対育成の練習失敗率のパーセンテージって+30ぐらいで表示されてるって。


「あー、えーっと、ゆーくんは確か、優喜くん、村川優喜くんです」


は?


名前が呼ばれた気がして、すぐドアの方を見ると。

そこには先日久々に遭遇した幼馴染がこちらに手を振っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る