絶対に真似してはいけない読書感想文

アカニシンノカイ

すごいトリック

                       3年4組 神野 真


 夏休みにぼくはすごいミステリを読みました。これまでに読んだミステリにはないオドロキがありました。どれくらいすごいかというと「世界がひっくり返るとはこのことか」とさけびたくなったほどです。

 すごいけっさくです。先生や友だちにもおしえてあげたいです。でも、その本のだいめいもあらすじも書くわけにはいかないのです。作しゃの名前も書けません。

 いえ先生、ぼくは本を読んでいないのではないのです。ちゃんとりゆうがあります。

 なぜかというと、そのミステリでつかわれているのは、じょじゅつトリックだからです。

 ミステリにはいろんなトリックがあります。じけんのとき、犯人が犯こうげんばとはとおいべつのところにいたというアリバイトリック、カギのかかったへやで死たいが見つかる密室トリック。この二つがゆうめいです。でも、ぼくが読んだ本はこの二つとはぜんぜんちがう新しいトリックだったのです。

 こうふんさめやらぬままミステリにくわしいおじさんに電話したら「それはじょじゅつトリックというんだよ」とおしえてくれました。ふつうは犯にんがつかまらないようにけいさつをだまそうとトリックを考えます。でも、じょじゅつトリックは作しゃが読しゃをだますためにしかけるのです。

 ぼくは作しゃの……あぶない、うっかり名前を書いてヒントをあげてしまうところでした。先生、どうか消したあとを6Bのえんぴつでこするなんて名たんていみたいなことはやめてください。とにかくぼくは作しゃのわなにまんまとひっかかりました。だまされることはミステリのだいごみです。

 ほかに同じような本はないかときくと、おじさんの声はきゅうに悲しそうになりました。このミステリではじょじゅつトリックがつかわれているぞとわかったら、トリックのしょうげきは大きくへってしまうのだそうです。だからじょじゅつトリックのおもしろい本はいっぱい知っているけれどもおしえるわけにはいかないんだ、とおじさんはいいます。

 ぼくはなっとくできませんでした。だから、じゃあどうしたらいいのかとしつもんしました。たくさん本を読んでぐうぜんこうふくな出会いをするしかないのだそうです。そしてうっかりネットけんさくしたり、だれかに「これはじょじゅつトリックだ」と言ったりしてはいけないらしいです。ぜったいにです。

 もしそんなことをしたら一生うらまれて、さいあく足をVの字にひらかれたままみずうみに頭からつっこまれかねないそうです。ぼくにはなぜそんなことをするのか、りゆうがわかりません。

 ぼくは本を読んでいないのではありません。かんそう文の宿だいがめんどうなのでもありません。ただじょじゅつミステリとはこうふくな出会いをしてほしいだけなのです。

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