第26話 自己暗示はメンタルのドーピング剤(vsがしゃどくろ)

原作で、亮が殺すことになる真の敵それが魔族だ。まあありきたりだな。彼ら魔族は、人間とは違い体の中心部に魔素の結晶を抱えているのだが…まあ詳しい話は後々話すとして…


とりあえずこいつは殺さないといけない。それが先決。こいつは、桜 彩さくら さやでも殺しきることができなかった化け物、魔族だ


魔族と言えダンジョンから生まれてくる生命体。中心の結晶を破壊すれば殺せる。しかし、それ以外はいくら消し飛ばしても切り刻んでも、さっきみたいに魔晶体として復活する。


亮たちが棒立ちで佇んでずんいるとそいつは、カチカチと不気味に音を鳴らしながら、ゆらりゆらりと歩き始めた。


そして、フッと沈み込んだと思った瞬間、地面スレスレを飛びながら間合いを詰めてくる。


亮は、正気に戻り、ふと百合草の様子を確認すると明らかに、がしゃどくろの動きを追うことができていないようで、その視線が宙を彷徨っている。


焦っているのか、体に余計な力が入っていることが見受けられる。


それもそのはず、一歩目から最高速度に達するような縮地と呼ばれる技では、緩急も相まって、視線から外れやすい。戦闘中に敵を見失うほど恐ろしいものはない。


そしてついに間合いに入り込んだがしゃどくろがその鋭利に尖った指先で百合草の首を目掛けて引き裂こうと手を振るわんとす。


亮は、ため息を短く吐く。それは、戦いの前に緊張をほぐして、リラックスするためなのか、強敵に遭遇したことに対するめんどくささか、はたまた全てに対して諦めたために出てきた無意識のものだったのかは分からなかった。


そして亮はその軌道上に身体を滑り込ませ、そして振るわれている骸骨の腕の下から思いっきり持ち上げる要領で、スイングの方向を上方へとずらす。


空振りしたがしゃどくろは勢いのまま腕が体に巻きつく


亮は攻撃が続かないと判断して、追撃を行う。骨の心臓の部分に膝を食い込ませて吹き飛ばす。


しかし、支点としている足でうまく踏ん張ることができず、作用 反作用の法則で亮自身も後ろへと少しよろめいていまい、ダメージを与えることが出来なかった。


「おい、百合草!邪魔だ!早くここから離れろ!」

「うあ、あn、はい…」


百合草がまるで寝言のような言葉を吐きながら、戦いの間合いから離れていく。


そして、また接近してきたがしゃどくろは亮が防御の構えをとる間も無く、裏拳を振るう。


裏拳を右の腕で受け止めて、素早くがしゃどくろの右手を両手で掴み、右足を踏み出し剣を振り上げるように両手を振り上げ、そして手を振り下ろし四方投げをする。


しかし、相手は肉のないただの骨、腕がありえない向きに回転しようがお構いなし


人間相手ではありない向きに腕が曲がってもなを、体勢を崩すことはなかった。


加えてお返しと言わんばかりに、腕を振り下ろしている亮に向かって踵を落としてくる。


亮は掴んでいた手を離して後ろへと飛び退くが、そこに間髪入れずに手刀を撃ち込まれる。


息をつく時間もなく、絶えず攻撃が繰り出される。


亮は、身体を半身にして避け、腕の骨を左手で掴み、右腕をがしゃどくろの顔面へと打ち込む。


がしゃどくろの顔の骨にヒビが入り、吹き飛んだ。


そして、そんながしゃどくろに煽りかける。


「おいおい、そんなにがっつくなよ~そんなんじゃ落とせるものも落とせないぜ。先生」

「随分と口は回るようだな!強がりめ!」



せいぜい、軽口をたたかないと気が狂いそうだった。


ここで、殺り損ねたら、次に犠牲になるのが、百合草かもしれないと思えば思うほど、恐怖が湧き出てくる。


恐怖に対して見ないふりをする。ふたをする。そしてそれは少しずつ確実に亮自身を狂わせていった。


1つ1つが致命的な攻撃を繰り出すがしゃどくろに対して、さばくことや受け流すことしかしていない亮は圧倒的に劣勢である。


圧倒的な力vs技。このような対比は、世の中にたくさんあるとは言え、亮はそこまで武術に対して精通していない。ギリギリの攻撃にどんどん神経がすり減らされる。


そして段々と狂い始めた、いや本性を隠す余裕がなくなってきたというべきか、亮は段々と狂気的なことをし始める。


亮の、自分勝手で、自己中心的で、独りよがりな本性が顔を覗かせる。


「亮くん! は、早く逃げましょう!!」


亮の異変に気付いたのか、やっと我に返ったのか、百合草の叫んでいる声が耳の鼓膜を震わせる。声色から随分と焦っていることがわかる。


しかし、その空気の振動は亮に届けることは能わなかった。


亮が今考えているのは、次の一手のこと。


自分が思うがままに、相手から与えられた課題攻撃なんてものも頭になんかなく。自分がやりたいことを、やりたいように決めていく。


自分勝手で自己満足なな芸術を、書き上げていくのに没頭していく。


武術における戦いとはしばしば会話のコミュニケーションに例えられることが多い。


しかし、亮が始めたことといえば、人を外見で決めつけて、いきなり宇宙言語で話し始めるようなもはや常軌を逸しているキチガ◯である。


数学のテスト問題で与えられた問題を解くのではなく、いきなりボイニッチ手稿を写経し始めるくらいの異端児である。


日本語で話しかけたのにもかかわらず、いきなり笑い始めて石を振り回し始めるような奴と会話にすらならない。


そんな、問いに対する答えではなく、だからと言って天才的とは言い難い、ただただ理解できないことをしている。


そんな、どんどん正気ではなくなっていく亮に対して、がしゃどくろは、あいも変わらず、鋭い指先がまるで操られている人形のように、攻撃を繰り出している。


このような、応酬が続くと思われた矢先、しゃどくろが、攻撃を止めて亮から距離を置いた。


「?どうした?もう体力切れか?」


そんなわけあるはずがないことは100も承知。


「違えよ小鳥遊!お前を殺しきるには俺はあまりにもダメージを受けすぎた。小鳥遊に近づきすぎてもまた、地上のように殺されかねない」


やはり警戒はされているか…最初の一撃で仕留めれなかったのが痛いな…

それでも表面上は、ペースを崩さないように、せめて百合草という観測者がいるうちは、普通の人として振舞わなければいけない。もう手遅れかもしれないが


そう自分に暗示を何十にも掛ける。決してへまをしないように‥‥………

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