第25話 2つ目の条件
百合草を付け回して追っていくと、どんどんと森の奥へと入り込んでいく。
そして。15分くらい歩いていくと、そこには人影が。
「やっと来たか…
「こんな、森の奥に呼び出してきたのはあなたの方でしょう?先生」
俺は、木の幹に姿を隠して、のぞき見と聞き耳を立てる。
「じゃあ、要件は分かっているな?なぜ、皐月に対していじめをやめた?俺は中止の命令を出していないはずだ?」
「そうですか?別に先生の言いなりになるなんて一度も言っていないはずですが?」
「やはりあのガキの影響か…まあいい、最後通達だ俺の言いなりになれ」
「断れば?」
「次はお前がターゲットだ。ゆりぐさ」
「……」
百合草は、大層めんどくさいと言わんばかりにため息を吐き、こちら側を向きながら言葉を投げかける。
「もういい加減出てきてくれませんか?」
「何?」
気付いていたのかよ…
そう言われた俺は、渋々ながら2人の間に姿を現す。一人は、おなじみの
そう、百合草に課した2つ目の条件は近藤先生と関係を断ち切らないこと。こいつが予想外の動きをされたらさすがに困るからな…どうやらうまくいったようだ。
「やっぱりついてきていたのですか?変態からストーカーにランクアップですか?キモイですね」
「は~、いつもの切れがないぞ、怖いなら素直に言えつうの」
とりあえず、震えている百合草を胸に抱きしめて安心させようと試みる。いい匂いが鼻孔をくすぐる。シャンプーとあせのにおいが相まって頭をくらくらさせるような、猛毒へと変化している。
「何んだ?小鳥遊?かっこつけてんじゃねえぞ!それよりいつから気づいていやがった」
百合草の頭をぽんぽんとたたき、あやしながら先生の問いかけに答える。
「あ~それは、夏休みの最終日からだよ…あの日、皐月に頼まれて体育館倉庫にビブスを返しに行ったとき、俺はトラップで攻撃を受けた」
「なるほど…どおりで皐月がそれほどケガを負っていなかったと思ったら、お前が邪魔をしていたのか」
「ああ、あれは明らかに生徒の技量レベルを超えていた。その後のクラスのいじめに対する反応を見れば明らかだ」
言外にお前が黒幕だと述べる。まあ先生が黒幕で百合草を利用していることは、原作で彩が語っていたことだが
「一応聞くがなぜこんなことを?」
「ふん!ほんと忌々しい。ほんと、教師という職業は俺にとっての天職だったからさ。少し生徒同士の関係に手を出せば、拗れるんだからなあ。俺はそれが楽しくてしょうがない!」
クソみたいなことをしやがって…先生失格だろ…まあお前は先生じゃないか
「小鳥遊、お前が邪魔をしなければもう少しで
「それで百合草を利用したと?残念だったなこと裏工作に関しては俺の方が上手だったという訳だ。」
「ああ、そうらしいな。で?どうするんだ?警察にでも突き出すんか?いいぜ、今度は小鳥遊お前が標的だ。10年後でも20年後でも、必ずお前に絶望を与えてやる!」
「いや、殺すよ」
そんな奴は生かしておけないし…
「え?」「は?」
二人とも俺の言葉にぽかんと口を開けている
いやお前が、驚くのかよ…いや、そうかまだ百合草には教えていなかったか。
「はっは!随分と物騒なことを言い出すじゃねえか」
「本気ですか?」
胸の中にいる百合草が動揺のあまりおろおろしている。こいつ動けるなら解放しようかな…邪魔なんだけど…
「だって……お前人間じゃないじゃん」
衝撃の事実に腕の中の住人は茫然としているようだ。今までつるんでいた奴が人間ですらないのだからな。当たり前だ
「くっくっく!そこまで知ってやがったか!いいだろう、気が変わった。お前をここで殺してやる」
そう言うな否やいきなり踏み込んで殴り殺そうとしてくる。俺は間髪入れずに、突き出したこぶしを手で受け止めて、術式を施行する。
術式を施行した影響か?爆発が起きて地面が割れてしまい僕たちは空気中へと投げ出されてしまう。
「ふえ?」
巻き込まれている百合草が反射的に声をあげてた。
どうやらいきなり地面が割れたようで体が浮遊感に包まれ、お腹がこちょがしく感じる。
百合草はもはや状況についていけてないようで、ただ虚な目で空を見上げながら落ち始めている。
そしてゆっくりと体の重い部位であろう頭の位置が下にくるように、ゆっくりと回転し始めながら落ち始めた。
それに伴い髪の毛が回転方向と垂直に浮き上がっている。
このままでは、亮と2人とも、地面の裂け目に落ちてしまうだろう。
皐月をいじめていたとはいえ、まだ中学生2年生ここで死んでしまうにはあまりにも若い。
これから、きっと輝かしいとは言わなくても、未来が残っている。たぶん…
そんな、共に死にゆく場面を見ている亮は.....
ざああまあああ!いつも俺に暴言を吐いているからだ!!人をいじめる悪役にざまー執行!!ざーこ!ざーこ!せいぜいこれから頭を下にして眠れなくなるんだな!
しかし、百合草に日常的になじられて、暴言をはかれているとは言え、守るという約束は守らなければならない。空中で百合草を抱きしめたまま、俺が下敷きになるように向きを調整する。
そのまま。俺たちは穴の底へと吸い込まれていった。
§
「起きろ〜〜おーい起きろ〜ゆりぐさ~」
亮は、落下のショックで気を失っている百合草に起床を促していた。
そしてそのままゆっくりと瞼を開くと…
百合草はいきなり身体を捻りその勢いで亮の右頬に深く拳を挿入した。
「………」
「ぶへら!!」
そのまま、慣性の法則に従って錐揉み回転して吹っ飛ぶ。まじで何?せっかく人が守ってあげたというのに!
「いっってええお前なにするの?」
いきなり殴られたため言葉が乱暴になる。
「なんで…私をかばおうとしたんですか?私のせいであなたに何かあったら…」
「いや、質問に答えてくれよ…まあ守るって約束したからな」
目覚めた直後から、機嫌が悪いことに対して不思議に思う亮。こいつなりの心配だったのだと怒りを抑える。
「いや、してませんけど…」
「…」
「誰と勘違いしたんですか?」
浮気を疑うよな目つきで俺を見てくる。やめて!もう俺のライフはもうゼロよ!
してなかったんかい。いやマジか…それっぽいこと言えば騙されると思ってたんだけどな…
「私、不愉快なものを聞いて、今とても気分が悪いです…」
ホントにすみませんでしたあああ!!!そうして土下座を披露していると
「はああーーーーー」
いきなりため息を吐く百合草を、眉を顰めて見上げる。
「なんだよ」
「これからは、自分のことも考えて行動してください。さっきもそうですが、あのまま、あなたが死んだ場合を考えてみてください」
「はい、ごめんなさい…」
「あなたは、地面に頭を打ち付けたため、脳みそはぐちゃぐちゃに潰れますよね。眼球は飛び出て、見るも無残な姿になります。」
「……」
「そんな姿を見た私はトラウマになってしまうのです。あなたごときが一生私のあたまからついて離れないなんて、どんな拷問よりもひどいと思いませんか?」
「思いませんか?じゃねねよ!なんか思ってたのと違う!!」
こいつに付き合ってたら、時間がいくらあっても足りねえ…
しかもまだ近藤先生は生きているだろうし、さっさと殺すために準備をしたいんだけどなあ。
今までずっと連取していた切り札を切ってしまった以上ここからの戦いは苦しいかもしれない。
「……ここは広いホールになってる感じだな、声がエコーする感じからそんなに広くはないな。」
「へー、そうなんですか」
百合草は、周りをキョロキョロと見渡しながら、興味なさそうに返事をする
「まあ、壁沿いにつたれば出口くらい見つかるだr…」
亮が具体的な行動案を出そうとしたその瞬間、広いホールの中にあった魔素が光を放ち始める。
はあ、やっぱりあの一撃で屠り去るのは出来なかったか…
周囲にあった魔素が収束して、結晶化が始まり出した。
そしてその結晶はどんどんと人型の外見を形作り始める。
ある条件下のもとで生じる
世界の意思や、残留思念などが、魔素に干渉するなどと諸説が存在する。まだよく分かっていない未判明生命体が誕生する予兆にとても酷似していた。
「まさか! 魔晶体ですか?!」
百合草が悲鳴に近い声をあげて、数歩あとずさる。亮はその怯えてる様子を横目で見て
こいつはあてにならないな…
さっさと状況で使える駒を計算して、勝率を計算する。
魔晶体は通常は深い深度で魔素が濃くないと発現しない現象。
多分ここに溜まった魔素が飽和を迎えてしまったのだろう。
飽和を迎えた魔素は空気中に触れてしまうと濃度がいきなり低下して魔結晶を作ってしまう、しかし今回は偶然生命体が誕生したわけか…。
きっと生命体の種になったのがあの先生だろう。
百合草は、体が固まって動けないでいるようだ。
「いや、確かに魔晶体だが、コイツ、いやこれこそが、あの先生の正体だろうな」
魔結晶が綺麗に周りを照らしながら、その形を作り上げていく。生命が誕生する神秘的な光景がそこには広がっていた。
結晶が、人間の骨格を作り上げていく。
「す、スケルトンで、すか?」
百合草が呟いた。
そう、結晶が作り上げたのは、スケルトン。日本で言うところの、がしゃどくろであった。
「随分、みすぼらしい格好になったじゃないか!?まさか骨しか残らないなんてな」
「小鳥遊!!お前何をしたああ!!!」
おお、こわっ
こうして俺と先生…がしゃどくろとの2回目の戦いが始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます