第19話 作戦会議、されど進まず
「久しぶりだな霧島」
「ああ、そうだな……亮。悪いな最近立て込んでてあまり絡めなかった」
「いや~お前は人気者だからな。忙しいというのは想像がつくぜ」
霧島クンはこちら3人を訝しげに見てくる。そんなにこの3人で絡むのは不自然だろうか?
「そういえば、皐月と霧島は組み合わせとしては珍しいな?」
まあ、どういった経緯でつるんでるのかについては知っているが、
「ああそれなんだが、じつh」
「英梨!!亮に話しても無駄なだけだと思うよ!実際、亮は何も知らないだろうし、彼は記憶を無くしているんだ。これ以上負担になるのはやめた方がいい!」
随分と言ってくれるじゃないか…と思っていると、今まで隣でニヤニヤしていた彩がいきなり真顔になった。
え!?こわ!?? いきなりスンッってするのやめて欲しいんだけど…
「え~と…皐月に何かあったのか?」
あくまでなにも知らない風を装って尋ねる。俺は、無能な役に立たない主人公ポジ。鈍感でなければならない。
そしたらまた桜がニヤニヤし始めた。こいつの表情忙しすぎない!?
「亮…本当に何も知らないのか!? 今のクラスを見て何も思わないのか?」
いきなり、霧島クンは不機嫌になり責め立ててくる。
「?別に普通だと思うけど……?」
そう答えると、霧島クンは心底見下した感じで、
「そっか、亮…お前は能天気でほんとうらやましいよ。英梨、行こう!」
そう言って吐き捨てるや否や、去っていく。皐月の手をつかみながら…
いいねえ、これだよ。これ!!! 俺が欲しかったのは!!!!
主人公の無能さに呆れて見限る。第一ミッションは無事達成することができた。
だから…桜さん?その得体のしれないナニカを溢れさせるのを止めましょ?
ね?そうそう体から漏れ出ている奴!
「これだから、彼は嫌なんだよ…自己中心で。なんて浅ましい。」
隣りで彩がなにかをブツブツ呟いている。せめて呪いの呪文でなことを祈ろう。
霧島クンに祈りを捧げていると、彩にいきなり話し掛けられる。
「君はさ、彼にそんな態度をとられてもなんも思わないのかい?」
「いや、別に…?」
いや、無能な主人公に愛想をつかすのはテンプレの流れだと思うが…どうやら彩にとっては納得のいく態度ではなかったらしい。まあこの計画を知らない彩から見れば、納得のいかないものであるのは想像できる。
「君がなぜ英梨の件について関わっていることを隠そうとするのかは分からないけど、霧島君にあれだけ言われたら悔しくならないのかい?」
「ん~…彩はともかく霧島や皐月については俺がいろいろやっていることは知らないだろ?」
「いや、それもあるけど…そもそも彼が英梨に関わり始めてから君と話しているところを見たことがないように思うけどね。彼は露骨なんだよ」
まあ、それは俺も感じていることだ。友人キャラが俺個人だけにあたりが強くなるということは全然構わない。しかし、それは周りに好意を持たれるような性格であるから、主人公キャラへのヘイトが正当化されている節がある。
しかし、一歩間違えてしまえば性格の悪い悪役だな
まあ、少し性格が悪くても物語が進んでいくうちにヒロインと関わっていき、成長するものだ。
今後に期待だな
「まあ、少しばかり性格が愉快であることは認めるけどさあ。彩はなんでそこまで霧島を敵視しているんだ?」
「それは!それは……その…」
いきなり、しどろもどろになりもじもじし始めた。いや、そんな反応されるとこっちも困るんだが…
§
放課後、俺と彩は某ファミレスに来ていた。
「それで君はこれからどうするんだい?」
「そうだな〜、とりあえず皐月の精神的には安定しているんだよな。こちらから攻撃に移って変わってもいいかもな~」
椅子にグデーと座り、ジュースを飲む。最近は霧島君たちの進展がなく、実に退屈な日々が続いている。きっと俺の顔はどこぞの株で有り金すべて溶かした顔をしているだろう。
「そうだね、おかげさまで、先週より随分と良くなった。改めて、感謝するよ」
「んー」
ストローを加えながら彩の感謝を受け取る。こうも何度も感謝されると、少しばかりむず痒い。
それにしてもこれから本当にどうしようかな〜悩むところだ
「それで、ボクも少し動いてね。百合草が告った先輩とコンタクトを取ることができた。それを利用するつもりさ」
「あーなるほどね」
一番やっちゃいけないことをやるつもりですね。わかります。
そんなことを考えているのが伝わったのだろうか?頬を膨らまして攻めてくる。
「何だい、何か言いたいことがあるなら言ってもらえないかな?」
「あー…どうしよう、彩がそう動くなら、それはそれでいいんだけど…」
うーん、いいや。あんまりいい案浮かばないしこれで推し進めていこうかな。最悪完封してしまえばいいし
そんな風にグダグダ考えていると、いきなり天啓が舞い降りる。
いいじゃないか!いいじゃないか!よしよし!!これを利用しない手はない。
「ど、どうしたんだい?」
「あ、ああ、ごめん、ごめん、その案でいいんじゃないか」
いきなり、きらきらと生気を取り戻した俺を見て彩は若干引いているが、構わず続ける。
彩には悪いが利用させてもらおうとしよう。
俺はなんて、さえ渡ってるんだろうか。自分が恐ろしいわ!
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