第5話 瓦解(元史)

原作の中での小鳥遊 亮たかなし りょうの両親は探検者であった。

「花は咲かず砕け散る」では魔法もので、魔法も存在するし、魔物もいる世界である。


しかし、当初ノベルゲームのプロットとして書かれたため、分岐点や物語の結末は色々と考えられていた。そのため、小説というよりは、ゲーム色が強い感じの小説だ。


この世界で蔓延はびこっている魔物は、空気中に漂っている魔素を体内に取り込んだとき、呼吸器官になんらかの不具合が発生することで生じる。


魔素をうまく体外に吐き出すことができず、脳内に魔素がたまった動物がいわゆる魔物の正体である。


では、普通の動物と何が違うのか?それが攻撃性である。脳内にたまった魔素が脳の興奮させる部分を刺激させることによって、どんどん狂暴化していくのである。


だったら、魔素を脳みそから取り出せば、いいじゃないかと考える人もいるかもしれない。でもよく考えてほしい、ここがどういう世界であるかということを。そんな簡単な方法ではもちろん解決することができない。


魔素とは、酸素や二酸化炭素と同じ分子のようなものである。

その魔素が持ち合わせている性質が厄介極まりなかった。それが、高濃度の魔素が大気に触れると、その魔素の空気の塊の外側の魔素が急激に硬化してしまう性質だ。


これ以上魔素が発散しないように外側に薄い壁を生成するのである。


この現象のことは魔硬化と言われていて、脳みそから魔素を取り出すのに大きな問題となる。何しろ手術しようと脳みそを開いてしまうと、瞬時に硬化し、脳みそをズタズタにしてしまう。この病気は脳魔硬化病のうまこうかびょうと呼ばれ動物だけにかかる病とされていた。何しろ政府が大々的に脳魔硬化病は人間にはかかりませんと公表したのだらから皆、対岸の火事とばかりに呑気に過ごしていた。


ここまで読めば、薄々感じ取る人もいるかもしれない。そう、狂犬病の再来である。知らない人のために説明すると、クレイピー病などとも同じ原因とされている、異常プリオンの発生が主な発症理由である。もっと要約するならば、人間を形作るたんぱく質が異常をおこし、その異常たんぱく質が、増殖していくという感じ、はい説明終了!


そんなわけで、呑気に構えていた人類にも激震が走る出来事がおこったのだ。それが人間初の脳魔硬化病のうこうかびょう感染者の誕生である。そして、その感染者が小鳥遊 亮の両親であった。


事の発端は些細なことであった。普段からあまり喧嘩してなかった両親が喧嘩をしたことだった。その時亮は珍しいなあと感じただけで特段気にしなかった。


しかし事態は急激に進行していく。

ただの口喧嘩だったのが、喧嘩に暴力が伴い、一日中イライラしているような状況が増えてきたのである。


ある日、主人公の亮が学校から帰ってきたときにもまた家の中から悲鳴などが聞こえていた。

亮はまたいつものことかと、リビングのドアを開け、その情景に絶句した。


いつも優しく、笑った時に目の下にできる皺がすきであった父が、白目をむきながらテレビを何度もたたきつけていた。手はテレビの破片が刺さり血まみれになり、中指が本来とは逆の向きに折れていた。左手はボロボロであることは勿論手首の半ばまで切れ、プランプランとしていた。


母は、笑うときにできるえくぼが可愛く、いつも父にべったりであった姿は見る影もなかった。

床に仰向けに倒れ、口からは泡を吐き、体はビクンビクンと痙攣している。呼吸も浅く、すでに死戦期呼吸であった。


主人公は茫然としていたが、近所に住んでいる桜 彩が駆けつけ救急車を呼び、病院に搬送されたが、すぐに死亡が確認された。


医者からは死因は不明と聞かされ、葬式を執り行い埋葬を行っていた時に最悪の事態が起こってしまった。

人間は持ち合わせているはずではないものがが出てきたのだ。そう魔素が硬化することによって生じる魔石である。


そこからは予定調和である。主人公は魔物の子ともであるという噂が広まっていった。学校ではいじめられ、家は荒らされる。幼馴染の彩は家では励ましてくれるのが心の支えだった。


そんな時、見ていたテレビで脳魔硬化病はダンジョンが持っている呪いではないかという番組を偶然目に入ったのである。


それからは早かった。亮はダンジョンに潜る冒険者になったのである。 


まあ以上が、主人公が戦う理由となる雑な動機づけだ。

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