第3話 夕焼小焼の○トンボ
保健室の先生が父に連絡を取ることができ、校門まで迎えに来てくれることになった。しかし、俺は学校の内部構造を知らないため、校門まで皐月に案内されながら一緒に歩いていく。
何処からともなく聞こえてくる蝉が、今日一日のフィナーレだと言わんばかりの盛り上がりを見せている。
また、夕日に照らされた木が、亮たちを飲みこまんとばかりに影を伸ばし、正面から照らす夕日が、異世界からやっていた亮も無条件にオレンジ一色に染め上げていた。
古から、人の姿を見分けることが難しくなる時間帯、「
「きっしょ」
そんな感慨深く、センチな気分に浸っていた亮に容赦ない言葉のナイフがが振り下ろされる。本日二度目の殺〇未遂。
…やはり、一人で帰るべきであったか。このアマ俺の心を確実に破壊しにかかってきやがる。
「そんな、不満そうな顔をするのはやめてくれないか?隣でいかにも黄昏ている奴を見ていると鳥肌がたってしょうがない。此方の気持ちも考えてくれ」
「じゃあ、俺のことを置いて家に帰ってくれよ」
「それはできない相談だ。先生に頼まれているからな。それに、お前にビンタしてしまった罪悪感もある、案内くらいはするさ」
意外と、責任を感じてるのか? なんともまあ責任感がお強いことで…
皐月と話しているとすぐに校門へと到着し、そこで別れることになった。
「わざわざ送ってくれてありがとうな」
「何度も言わせるな、気にするなと言っているだろ。まあ…これからは気を付けて生活するんだな」
送ってくれた皐月に何回目か分からないお礼を言う。そのまま解散かと思われたが、ずっとこちらを見つめていて、帰るそぶりがない。
そんな不可解な素振りに電撃が走る。
まさか、これが噂の「私帰りたくない」なのか!!!??
こんなところでお目にかかるなんて……
くそ!!こんな状況でなんて言えばいいんだ??!亮は、軽石のようにスカスカで軽い頭を必死に回転させ言葉を絞り出す。
「皐月、家まで送っていこうか?」
「お前は言っているいるんだ?」
ま、間違えた、だと!?。こういえば好感度が上がるもんじゃないのか!?
瞬時に返ってきた皐月の返答に衝撃を受けてしまう。
「また記憶喪失になったのか?それとも頭が弱いのか?大丈夫か?」
くそう、これだからネットは!誰だよ。嘘を嘘と見抜けないやつは使う資格ないって言ったやつ!! その通りだよ!
皐月は心底信じられないという感じで、そしてあきれたように亮に聞き返した。
「じゃあな、また明日!」
いたたまれなくなった亮は何もなかったことにして、皐月をさっさと返すことにした。
「すまない、少し考え込んでしまってな。それじゃあ私は帰るよ。」
そう言って、背を向けて歩いていく。亮の失言はなかったことにしてくれたらしい。
「ああそうだ」
「?」
何かに気付いたらしく立ち止まって、こちらをふりむいて、その赤い目で亮を見る。
目を細めて、いじわるそうに口の端をつり上げた。
「明日から夏休みだぞ。そんなに私に会いたいのか?意外と積極的なんだな。」
笑いが抑えきれなかったのか、肩をふるわせ、走り去る。
亮はその姿に見とれ、茫然と取り残されてしまった。
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